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フランスの食文化

岩根 久

はじめに

 「日本の主食は米」、「フランスの主食はパン」「ワインといえばフランス」などというのは一種のステレオタイプ(固定観念・紋切型)です。日本には様々な地方があり、それぞれの食文化があるように、フランスも同じように地方によってそれぞれの食文化があります。以下の記事にはステレオタイプや筆者の趣味が入っていますが、そのことに注意して批判的に、また楽しみながら読んでください。記事は今後増やしていくつもりです。

パン:フランスの主食?

 日本の田舎に行くとよく目にする風景は水田ですが、フランスの田舎では麦畑です。田舎でなくても、パリをちょっと出ると麦畑が広がっています。初夏に黄色く色づいた麦畑はまるで金色の野です。「その者青き衣をまといて金色の野に降りたつべし...」は『風の谷のナウシカ』中の台詞ですが、王蟲の触手ならぬ黄色い麦畑は本当に青とマッチする景色です。下の絵はゴッホ晩年の作品で、これはオヴェール=シュル=オワーズ(Auvers-sur-Oise)で描かれたものです(この村にゴッホのお墓があって、パリの北駅から北へ向かって列車で1時間余りの場所にあります)。

Champ de blé aux corbeaux(1890)「カラスのいる麦畑」
(アムステルダム:ゴッホ美術館)画像はWikimedia Commonsより

 麦(小麦)からパンが作られます。かつては水車や風車(フランス語でmoulinムーランといいます)で小麦を挽いて小麦粉にし、それからパンが作られていました。パンの値段の高騰がフランス革命の引き金のひとつになったというのは有名な話です。フランスの主食とはいうものの、統計によるとパンの個人消費は1900年と2000年を比べると6分の1に落ちています。そもそも「主食」という概念そのもの見直す必要があるようです。

 夕食前の買い物時間になると美味しいパン屋さんには行列ができます。パリでは同じquartier(地区)に数件のパン屋があって、夏の休暇の時期はパン屋さんもきっちり何週間かの休暇を取るのですが、近所の人たちが困らないように、交代で休暇をとるうようにしています。

パリの町中のパン屋
(ただし、この店のパンの味はいまひとつ)

 パンの種類はたくさんあります。その中で最も一般的なのがbaguette(バゲット:フランスパンといわれる長いパン)でこのパンについては以前は価格統制がされていてどのパン屋でも同じ値段でした(1978年8月12日以降は完全自由価格)。価格統制が解除された後もバゲットはその他のパンに比べて最も安い値段で売られています。

朝食

 朝食のパンは前の日のバゲットにバターやジャムを塗って食べます。これがtartine(タルティーヌ)と呼ばれているものです。それとホットミルクとコーヒーを等分に混ぜたcafé au lait(カフェオレ:ミルクコーヒー)。また、お休みの日の朝食には朝にパン屋に出かけてクロワサン類の菓子パンを買ってきて食べます。これは、ちょっと贅沢です。

Pain au chocolat(チョコレートパン) Chausson aux pommes(リンゴジャムパン)
Croissant au beurre(バタークロワサン)

究極の食材:カエル料理

 フランス人はカエルを食べます。といっても、いつも食べている訳ではなく、カエルを調理した料理がメニューにあるレストランもあるということです。ちなみに、英語にFrog eaterというフランス人を馬鹿にした呼び方があって、悪い言葉ですので、覚えなくていいですし、覚えても決して使ってはいけません。

 下の写真は南仏の山間部の田舎のレストランにあったメニューです。エスカルゴ(カタツムリの一種)とニンニクのソースが、食材の持つ独特の臭みをバランスのある風味に変化させて、なかなかいける味でした。

蛙の脚、川鱒のベーコン巻き、豚の内臓ソーセージ
エスカルゴソース仕立て

 それぞれの地方ではその地の食材を生かして料理をつくります。地方を旅行する楽しみのひとつはこのような食文化に出会うことです。

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