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本土以外のフランス語

井元 秀剛

 フランス語が公用語として使われている地域として、フランス本国以外にカナダ、ベルギー、スイスといったおなじみの国々や、フランスの旧植民地が広がっていたアフリカ西北部の国々があることは比較的よく知られています。これらはフランスの主権がおよばない別の国ですが、実はフランスの領土は西ヨーロッパの本土以外に植民地時代に獲得した海外領土があって、そこでも正式にフランス語が話されています。カリブ海とインド洋に4つの海外県があり、北大西洋やインド洋オセアニアに5つの海外準県・海外領土がありますが、今回は筆者が実際に訪れたことのある海外県のレユニオンを紹介しましょう。

地図はWikipediaより

 :フランス語を母語とする話者が多数を占める国や地方自治体
 :公用語となっている国
 :第二言語として用いられている国や地方自治体
 :フランス語のコミュニティが存在する地域

 レユニオン県はインド洋のマダガスカルの東にある小さな島です。面積は2512 km2で沖縄本島(1201km2)の約二倍くらいしかなく、A4に世界地図を表示させたらただの点にしかなりません。2006年蚊を媒介とする伝染病がこの島で流行したので、日本でもとりあげられましたが、それまではおそらくこの島の名前を知っている日本人はほとんどいなかったのではないでしょうか。

 フランス人にとっては重要な観光地ですが、フランス人以外でこの地を訪れる人はほとんどなく、日本で手に入る観光ガイドなどはまったくありません。しかし、それだけにフランス語をマスターして訪れてみると、通常の海外旅行などでは決して得ることのできない新鮮な感動を覚えることができるでしょう。まず、雄大な自然が手つかずのまま残っていて全く俗化されていないということがあげられます。火山島ですが、内陸はシルクと呼ばれる渓谷になっていて、写真のような滝が至る所にあり、マイナスイオンとはこれだったのか、ということが実によくわかりました。シルクを上から見下ろした様子は絶景であり、アメリカのグランドキャニヨンの上に立ったときと同じような感覚がありますが、下は砂漠ではなくて緑に囲まれ集落もあるので、私個人はグランドキャニヨン以上に好きです。

 海岸線は見渡す限りの海で、日本のように船が浮かんでいることはなく、全く雄大で美しいです。夜海岸線に立つと真っ正面に星が見えました。上を見上げることなく満天の星を見つめたのはプラネタリウム以外ではこの時以外にありません。私が訪れたのは日本の秋で現地の春だったのですが、海岸では海水浴ができますが、火山に登る時は冬の装備をしました。要するに高度により四季のすべてが一遍に味わえるのです。海外領土といってもフランスの県ですから、生活はフランスの地方と何ら変わりはなく、生活の格差を感じることはありません。果物が豊富にとれるため、毎朝山のようなフルーツを食べていた記憶があります。

 水族館や植物園も見事で、海外から訪れる価値は十分にあるでしょう。そこに住んでいる友人の招待で10日ほどの滞在でしたが、私にとってその思い出はどんな海外旅行にも劣りません。人々の生活ものんびりしていて朝の空気は最高であり、そこにいると日常の煩わしさを忘れ、これが人間本来のリズムなのではないか、と言う感じがしました。またもう一度そこを訪れたいというより、「帰りたい」という感じがその時以来ずっとしています。

 ここは残念ながらフランス語以外は英語もほとんど通じません。レユニヨン島を訪れるにはフランス語を学んでいなければどうしようもないと思います。しかし、フランス語を学んでいたらこの地を訪れることもでき、普通の人にできない体験をすることができます。フランス語を学んでいてよかった。私はこの旅行の時つくづく思ったものでした。このようなこともフランス語を学ぶ効用の一つです。

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