XiāngtǔWénxué 乡土文学

郷土文学

きょうどぶんがく


 二十世紀はじめに起こった文学創作流派のひとつ。「郷土文学」に対する総括的な記述は、魯迅の「中国新文学大系・小説二集 序」に見える。魯迅は言う。「すべての北京にいてペンでその胸のうちを書いた人々は、主観ないし客観を用いていると自称していようがいまいが、実際には往々にして郷土文学なのである」と。

 現代文学における「郷土文学」作品の特徴は、作者がその郷土を熱愛していること、作品が一般に暗い日常と様々な怪現象を暴露し、労働人民に同情的で、反動的な統治階級や搾取者を攻撃したり嘲ったりし、あわせて各地の習俗・風光を描き出して、読者に一種どろくさい息吹を感じさせること、人物や言語は濃厚な地方的色彩を帯び、描写は往々にして白描(スケッチ)の手法を用い、素朴で簡潔な風格を具えていることである。

 総じて「郷土文学」は広い概念であり、風俗人情の描写のほかに、時代の特徴を反映しなければならず、普遍的意義をもった人生の問題、社会の問題を表現しなければならない。

(『中国現代文学簡明詞典』 山東教育出版社1987.4)


 1920年代中期前後に出現した小説流派のひとつ。主な作家には、文学研究会の王魯彦、彭家煌、許杰、蹇先艾、許欽文、徐玉諾、王任叔、潘君、未名社の台静農、魏金枝、語絲社の馮文炳(廃名)などがいる。

 彼らはほとんど北京で学んだか、生活のために北京へと追われてやってきた人々で、魯迅の援助と育成によって成長した若い作家たちであった。その作品は多く記憶の中の故郷から題材をとり、郷村社会の没落と、農民の苦しい闘い及び精神上の麻痺、特に農村女性が蒙る深刻な抑圧と悲惨な運命、さらに農村において小資産を有する階級の破産を描いている。また閉塞的で立ち遅れた郷村社会の地方的風習、風土人情を描き、比較的真に迫って中国農村の「五四」運動前後の姿を反映した。

 彼らの作品は、自分の郷土の生活を題材とすることで著しい特色を現している。題材の選択と芸術作風の面では、魯迅が農村題材を描いた小説の影響を深く受けているとともに、ロシアおよび東欧、北欧のリアリズム文学も手本としている。彼らの所属した文学団体は異なり、共通の刊行物があったわけでもなく、共通の理論や主張があったわけでもないが、彼らのほとんどは文学研究会の「人生のための文学」の主張を旨としている。彼らの作品が描き出した共通の傾向や特徴から、「郷土文学」は「人生のための文学」の流れから出てきた小説流派と言えるであろう。それは現代文学の題材の面で、新しい分野を切り開いたのであり、三十年代の農村を題材とする革命文学のために、経験と教訓を提供したのである。

(『中国現当代文学辞典』遼寧教育出版社 1989.12)


作成:青野繁治