Wénxuéyánjiūhuì

文学研究会

ぶんがくけんきゅうかい



 北京大学教授であった周作人を中心として、鄭振鐸、王統照、葉紹鈞など北京在住の文学青年たちが集まり、1921年1月4日、北京の「来今雨軒」で結成大会を開いた。結成大会には参加していないが、当時上海の商務印書館に勤務し『小説月報』の主編を引き継いだ沈雁冰が会に参加して、文学研究会同人に発表の場を提供したことは重要な意味を持つ。これによって、それまで鴛鴦蝴蝶派の牙城であった『小説月報』が新文学の砦となったからである。周作人の影響の下、同人の多くは「人生のための文学」を主張した。
 文学研究会結成の経過と活動状況を知る最も基本的な資料は、1921年1月10日発行の『小説月報』第12巻第1号に「附録」として、掲載された「文学研究会宣言」および「文学研究会簡章」(規約)、と同誌第12巻2号に「附録」として掲載された「文学研究会読書会簡章」「文学研究会会務報告 第一次」である。

文学研究会宣言

 われわれが本会を発起するには、三つの意図があった。どうか留意願いたい。
 一、感情を疎通する。 もともとどのような規約類にも大抵このような項目がある。しかし今の文学界においては、特に重視する必要がある。中国には昔から「文人相軽んずる」気風がある。したがって新旧両派が仲良く出来ず、新文学にたずさわる人間同士でさえ、国や流派によって主張が異なり、溝を生ずることになりがちである。よって、われわれは本会を発起し、みなが頻繁に集まって、意見を交わし、互いに理解しあえるよう、一つの文学センター的団体を結成したいと希望するものである。
 二、知識を増進する。 一つの学問を研究するのに、一人で門を閉ざしていては上手く行くものではない。中国の文学研究は、今このときが始まりなので、互いに助け合わねば、ますます発展が難しい。旧文学を整理する人も、新しい方法を応用しなければならないし、新文学を研究するなら、もっぱら外国の資料に頼らねばならない。しかし個人の見聞や経済力にはどうしても限界があり、しかも今中国で外国の書籍を収集しようとすることはなおさら容易なことではない。よって、われわれは本会を発起し、次第に公共の図書館・研究室および出版部をつくり、個人および国民の進歩を助けることを希望するものである。
 三、著作組合の基礎を打ち建てる。 文芸をうれしい時の遊戯、或いは失意の時の慰み物とする時代は、もはや過ぎ去った。われわれは文学が一つの仕事である、しかも人生において大切な一つの仕事である、と信ずる。文学にたずさわるものは、労働者や農民と同じようにこれを生涯の事業とみなすべきである。よってわれわれは本会を発起し、普通の文学団体とするのみならず、さらに著作組合の基礎として、文学工作の発展と強化を図るものである。これは将来のこととはいえ、われわれの希望としてもっとも大事なものである。
 以上の三つの理由により、われわれは本会を発起する。同志諸氏がわれわれの意図に賛同し、本会に加入されることを希望する。われわれに教示を賜り、ともに進み行ことができれば幸甚である。
  

文学研究会簡章

第一条 本会の名称を「文学研究会」と定める。
第二条 本会は、世界文学を紹介し、中国の旧文学を整理し、新文学を創造することを趣旨とする。
第三条 本会の趣旨に賛成し、会員二名以上の紹介があって、多数会員の承認を得たものを本会の会員とする。
第四条 本会の事業を次の二種類に分ける。
 (甲)研究 (1)読書会を組織する (2)通信図書館を設立する
 (乙)出版 (1)会報を刊行する (2)叢書を編集する
 その他の事業は、その都度相談して実行する。
第五条 本会は毎月一度例会を開き、会務の執行方法について討論する。特別のことがあるときは、臨時に特別会を召集することができる。
 読書会の集会方法は別に定める。
第六条 本会は書記幹事、会計幹事各一名を設ける。任期は一年とし、毎年12月前後にこれを選挙する。
 会の所在地以外の地方の会員は、通信により幹事を選挙することが出来る。ただし事務上の便宜のため被選挙人は会と同一地域に居住するものに限る。
第七条 本会の費用は会員全員で負担する。徴収方法は次の二種類に分ける。
 (甲)年会費 金額は2元とする。
 (乙)臨時費 金額を定めず、臨時に集める。
第八条 本会は基礎を固め、図書館を設立するため、若干の募金を徴収する。その徴収方法は次の二種類。
 (甲)会員或いは非会員から特別の募金を募る。
 (乙)本会の出版する書籍・新聞から得られる印税の10パーセントを差し引く。
 この基金は指定した銀行に預け、図書を購買する以外には、用いてはならない。
第九条 本会の本部は北京に置き、それ以外の各地で会員が5名以上のところには、分会を設置することができる。
 分会の運営規定細目は分会の会員が自ら定める。
第十条 本簡章は不適当なときには随時修正することが出来る。

発起人 周作人 朱希祖 耿済之
    鄭振鐸 瞿世英 王統照
    沈雁冰 蒋百里 葉紹鈞
    郭紹虞 孫伏園 許地山
(附告)本会の趣旨に賛同し入会を希望される方は、簡章に基づき以下のものと相談のうえ、成立大会開催の後、規約が話しあわれ、再び布告がなされるまでお待ち下さい。
 周作人 北京西直門内八道湾十一号
 孫伏園 北京大学新潮社
 鄭振鐸 北京東城西石槽六号
 瞿世英 北京[灰/皿]甲廠燕京大学
 沈雁冰 上海宝山路商務印書館
 

参考資料

『現実主義的初潮――文学研究会作品選』(上)華東師範大学出版社 1986.6/2.50元
『文学研究会評論資料選』(上)華東師範大学出版社 1986.12/1.70元
『文学研究会小説選』上・下 人民文学出版社 1991.5/10.40元


  作成:青野繁治