Shānghén Wénxué

傷痕文学

しょうこんぶんがく


解説

 1978年から1980年にかけて中国の文壇で主導的地位を占めた文学思潮である。その名は盧新華の「文革」中の知識青年の生活を題材にした短篇小説「傷痕」に由来する。

 傷痕文学の登場は、新時期文学の始まりを示している。覚醒した世代による、過ぎ去ったばかりの悪夢のような異常な苦難の年代に対する強烈な告発であった。

 「四人組」失脚後、思想解放の叫びの高まりに伴って、文学創作において、真実性の地位が次第に回復されていった。そういった歴史的背景のもとで、傷痕文学の作者たちは、醒めた、誠実な態度で、生活の真実に関心を寄せ、思考し、痛みをともなう悲惨な歴史を直視し、作品のなかに十年の災害における生活の光景を体現した。「文化大革命」を徹底的に否定すること、それが傷痕文学の精神的精髄であった。

 傷痕文学の最大の特徴は真実性にある。その価値、影響力はいずれもその真実性によって決まるのである。傷痕文学の興隆によって、真実を回避し、真実を粉飾し、真実を歪曲する虚偽文学は市場を失っていった。それは中国当代文学の発展において、里程標として意義をもつ。文学の真実性の確立は、リアリズム伝統の回復を意味しており、極左思潮による作家に対する束縛が次第に解かれて行ったことを示している。また中国の文壇を10年の長きにわたって統治してきた「偽り、大げさ、空虚」による創作スタイルが解体に向かったことを示すものでもある。

 傷痕文学の始まりは劉心武の「班主任」(邦訳:クラス担任)であるが、代表的な作品には、盧新華の「傷痕」、鄭義の「」などがある。(文:張東明)

(『 文藝学新概念辞典』文化藝術出版社1990 )



作成:青野繁治