イギリス文学研究において環境批評は、過去40年間に飛躍的な発展を遂げた。それは環境問題への社会的関心の高まりに伴い展開された価値ある学術的成果と言えるだろう。


しかし、21世紀になって10年が経過した今、温暖化現象を含めた環境問題が未解決課題として議論され、自然環境と人間社会の共存、先進国と開発途上国との格差や軋轢、資源・エネルギー問題なども深刻化している。こうした状況のもとで、環境を見直す新たな学術的視座がグローバル規模で求められている。


本研究はイギリス文学研究の領域において、こうした視座を環境・エネルギー資源の持続的な保全・活用を目指す「持続可能性」(sustainability)と環境に対する生命体の感応性を意味する「環境感受性」(environmental sensibility)というキー・コンセプトに求め、現代社会に不可欠な「エコロジカル」な思想と感受性の原型を、イギリス・ロマン主義時代の文学テクストの中に遡及し、言語文化研究のレヴェルで解析していくことを目的とする。


これまで文化論的にしか論じられていない「感受性」を環境と生命体との交感の媒体として捉え、テクスト内にその動態を検証することで、この概念に現代的意義を与え、最終的には、人間社会と自然環境との持続可能な発展的共存関係の構築に貢献しつつ、文学研究そのものが他の研究領域や社会・環境とともに持続可能な発展的協調関係を築いていくためのあり方を検討・模索する研究にしたいと企図している。


 

Mission

エコロジー、感受性、ロマン主義

「文学研究の「持続可能性」―ロマン主義時代における「環境感受性」の動態と現代的意義」

*科学研究費基盤研究(B)課題番号22320061