近代著名作家、歴史文物研究家。二十年代中期に創作を開始するが、四十年代末には断筆する。著作の合計は短編小説が二百編余り、中長編小説10編余り、延べ三百万字にのぼる。
作品の取材範囲は広く、思想内容は比較的複雑であり、その中でも、湖南省や貴州省辺境の少数民族の生活を題材とした作品に最も特徴があり、代表的作品として中編小説「辺城」がある。
彼の作品には、中国大陸の二、三十年代の種々さまざまな面影と生活様式が著されている。創作方法、芸術的風格、文体形式のいずれの方面においても多様な特徴を有しており、中国近代小説の創作領域の開拓に独自の貢献をした。
作品は主に@軍隊生活に取材したものA湖南西部の山岳部における苗族の生活に取材したものB都会生活に根ざしたものC童話、伝記物の改作D辺境地方の風土・民族に取材したものに大別でき、その流麗暢達な筆致は、茅盾をして「文字の魔術師」と言わしめた。
1902年11月29日(12月28日の説も)
湖南省鳳凰県(現、湘西土家苗族自治州)の軍人の家庭に生まれる。苗族 本名・沈岳煥 筆名に「休芸芸」「懋琳」「甲辰」「小兵」「炯之」「上官碧」などがある。
1915年
新制小学校に入学
1918年
母親の「世間で生きてゆけるよう」にとの願いから、補充兵として地元の部隊につき、邃水流域にて活動。
1922年
「知を探求し、希望を求める」ため、湖西を離れ、北京へ上京するが、学校に入学できず、独学を志す。
1925年5月
短編小説『屠卓辺』を『晨報副刊』に発表。
1926年
小説、戯劇、散文、詩歌を一つにした作品集『鴨子』が上海北新書局から出版される。胡也頻と共に『京報副刊』『民衆文芸』を編集。
1927年9月
短編小説集『蜜柑』が上海新月書局より出版される。
1928年
北京を離れ上海へ。丁玲、胡也頻と相前後して雑誌『紅与黒』、『紅黒』を編集し、紅黒出版社を興す。また、長編童話『阿麗思中国旅行記』が『新月』1巻1号から8号まで連載、短編小説『老実人』が現代書局から出版され、『入隊後』が上海北新書局より出版、『雨後及其他』が上海春潮書局より出版される。
1929年
呉淞中国公学校にて現代文学講師となる。短編小説集『龍朱』が紅黒出版社から出版され、『旅店及其他』が中華書局より出版される。中編小説『神巫之愛』が光華書局より出版される。
1930年
武漢大学国文科にて講師をつとめる。中編小説『一個女劇員的生活』を『現代学生』1巻1期に発表。短編小説集『石子船』が上海中華書局より出版。『小説月報』(21巻1号)に『蕭蕭』を発表。
1931年
青島大学にて教鞭をとる。
1932年
1月短編小説集『虎雛』が上海中国書局より出版される。5月、伝記文学『記胡也頻』が光華書局より出版され、11月、短編小説集『都市一婦人』、新中国書局から出版。
1933年
短編小説集『月下小景』が現代書局から出版。平北(現、北京)に戻り、『大公報』文芸欄の編集に携わる。
1934年
1月中篇小説『辺城』が『国聞報』11巻1−6期に連載される。天津『大公報』文芸欄の編集に参加。伝記文学『従文自伝』が時代書局から出版される。『記丁玲』、『記丁玲続集』が上海良友復興図書印刷公司から出版。論文集『沫沫集』、上海大東書局より出版される。
1935年
12月短編小説集『八駿図』、上海文化生活出版社から出版。
1936年
3月散文集『湘行散記』が上海生活書店から出版。5月、小説選『従文小説習作選』、上海良友復興図書印刷公司から出版、11月、短編小説集『新与旧』、上海良友復興図書印刷公司から出版。
1937年
1月論文集『廃郵存底』、上海文化生活出版社からされる。抗日戦開始後、青華大学、北京大学などの大学について南下、昆明西南連合大学にて文章創作を指導。
1938年
散文集『湘西』、商務印書館から出版される。
1939年
1月論文『一般与特殊』が『今日評論』1巻4期に発表される。12月、短編小説集『主婦集』が商務印書館から出版される。
1940年
論文集『燭虚』が上海文化生活出版社から出版される。
1943年
4月短編小説集『春灯集』が上海開明書店から出版される。6月、論文集『雲南見雲集』が重慶国民図書出版社から出版される。7月、短編小説集『黒風集』、上海開明書店より出版される。
1945年
抗日戦勝利後、北京大学の教授に任命されると共に、『大公報』『益世報』『平明日報』などの文学欄の編集に携わる。
1948年
8月、長編小説『長河』が上海開明書店より出版される。
1950年
一万余字に及ぶ自己批判書を発表。中国歴史博物館に勤務。出土品や中国の絹織物を研究、故宮博物院などの職を兼任し、工芸美術デザインと物質文化史を研究する。
1967年
湖北咸寧農場で労働する。
1978年
中国社会科学院歴史研究所研究員に任命される。
1979年
中国文学芸術工作者第4次代表大会に出席。
1988年
死去。
『老舎・曹禺集』松枝茂夫/訳 平凡社 1962
『中国古代の服飾研究』沈従文・王◆D240◆/編著 古田真一・栗城延江/訳 京都書院 1995
「夫」 小島久代/訳 『中国現代文学珠玉選』1 2000.3.10