トップ 差分 一覧 ソース 検索 ヘルプ RSS ログイン

danwakai

言語教育談話会

 設立趣意書


(大阪大学)言語教育談話会の設立趣意書(案)
Language Education Colloquium (LEC=OU- LEC)

 大阪大学では言語文化研究科拡充に伴い、今後、(日本語教育も含め、)外国語教育に関わる研究に従事する院生ならびにほかの分野の研究であっても教職に就いて外国語教育に携わる院生がますます増えていくと考えられる。(共通の教育を受けた学部生を持たない)独立研究科であることから、国内外の院生の教育的背景がまちまちである。このため、外国語教育を巡る研究や実践面で、院生に必要な知識と研究能力の養成に寄与し、かつ院生、教員が自由に討議できるような場として「言語教育談話会」を定期的に開くこととする。
 今日の外国語教育は、極めて多くの関連領域[各外国語学・日本語学、言語教育・計画、言語学(対照・理論・認知・心理・社会・コーパスほか、談話・会話分析など)、脳機能イメージング、文学・文化論、翻訳・通訳論&技術、機械翻訳ほか]の知見をも総動員することが必要となっている。したがって、狭い意味での外国語教育ということではなく、総合的研究領域として外国語教育を捉え、言語教育談話会の発表、講演、研究活動を運営するものとする。

言語教育談話会組織


 言語教育談話会のメンバーは、言語文化研究科の講義を担当する教員と同研究科院生ならびに修了生とするが、学外者も歓迎する。(狭い意味での外国語教育専攻の方々だけではなく、関連領域の研究を専攻の方々も是非参加されたい。)★修了生、学外者には下記のメールまで所属・身分とメールアドレスを記して参加手続きいただきたい。

narita@lang.osaka-u.ac.jp

研究分野によっては外部からの講師を招くなど、開かれた活動組織とする。

代表と副代表、幹事(院生)を置き、円滑な運営を図る。

運営方法試案

基本的に第2ないし4木曜日3時〜5時(8、9月を除く4月〜11月)に二部構成で談話会を開く。(院生や講演の状況などにより2回開くとか時間が延長される月もある)
(第一部)発表、指導 
1,3〜5名の院生が10分〜15分ずつの発表し、各10分前後の質疑応答を行う。
⇒院生の研究方向がしっかりまとまっていない中間的な段階で、研究方法、対象、論の展開方法などについてアドバイスを受ける。
(第二部)講演、討議について
2.教員ないし(修了生を含む)外部講演者による20分〜40分の講演と10分〜20分の質疑応答を行う。⇒関連領域についてのオリエンテーションの意味もある。
3.そのほか、(メールないしその場で、)メンバーは外国語教育に関わる問題を中心に意見交換をしたいテーマを気軽に提起・説明し、それについて自由な討論を行う。

 第17回言語教育談話会 第5回英語教育総合学会との共同開催


日時:2013年3月10日(日)13:00−17:00
場所:大阪大学大学院言語文化研究科A棟2F大会議室(豊中キャンパス:HP参照)

特別講演 言葉の感性を高める語法の世界―微妙な意味の違いを見極める― 八木克明(関西学院大学)


シンポジウム 「習得が容易な言語と難しい言語」―教授技法は言語によって違う―


コメンテータ:江利川春雄(和歌山大学)
ミニマルな文法ですぐに話せる―新たな基礎日本語教育の内容と方法― 西口光一(大阪大学)
なぜ英語の習得は難しいのか―厳しい構造制約と激しい音声変容― 成田一(大阪大学)

参加費:無料 詳細は、言語教育談話会HP参照。
一般の方の参加歓迎。直接会場にお越し下さい。
問い合わせ:大阪大学成田研 narita@lang.osaka-u.ac.jp

・シンポジウムの理念
日本の英語教育では、コミュニケーション偏重の中、文法教育が軽視され英語力が低下したまま、高校で「英語での授業」が始まる。シンポジウムでは、なぜ日本語教育ではコミュ二カティブな教育に早い段階で移行でき、英語教育ではできないかについて、日本語と英語の言語差だけでなく、文法的な仕組みの違いを取り上げて、同じ言語対でも学習困難度は違い、教育方法も違うべきことを明らかにしたい。

・シンポジウム概要
八木講師:「語法」という用語はいろいろな人がいろいろな研究を指して使われる。現象を観察することだけのものから、言語学的手法(認知文法であれ、生成文法であれ、その他どんな立場であれ)を用いてなぜそうなのか、そうでないのか、を明らかにしようとするものまで幅は広い。ここでは私の独自の研究方法とその成果を用いて、英語をより深く理解するためにいかに役に立つかを語ってみようと思う。
西口講師: :膠着語の一つである日本語は、欧米の言語に比べて文を作る際の決まり事が非常に限られており、既に共有している事柄は省略されるのが通常である。故に、一定の注意を払えば初習者でも「文法的に不正確でない発話」を行うことが容易である。本発表では、そのような日本語の性質を生かした基礎日本語教育のカリキュラムと教材を紹介し、そこでの学習と学習指導の原理について論じる。
成田講師 日本人にとって英語の習得が難しいのは言語差だけではない。現に日本語は漢字を除けば欧米人にとってもそんなに難しくはない。英語は発音が激変し厳しい構造制約があるだけでなく、日本語にはない(数の一致やWH移動など)「瞬時の計算処理」の必要な操作があり、発話時の過重な負担となる。文法を定着させ半自動化することが、コミュニケーションの条件になることを明らかにしたい。

 第16回言語教育談話会


日時:2012年8月2日(木)15:00−17:30
場所:大阪大学大学院言語文化研究科A棟大会議室(2F)

第一部:招待講演(15:00-15:55)

講師:大庭 幸男(大阪大学教授)
  英語の統語論や意味論から英語教育へ
  ―自動詞の他動詞化を巡って―

第二部:院生発表(16:00-17:30)

� 田島 麻紀(言文D1)
  帰国子女の思考のプロセス
� 蔦田 和美(言文M1)
  本物の素材を使えば学習意欲が高まる
� ヴィノグラードワ ダリア(言文D1)
  漢字教育における文字文化学習の有用性
                
参加資格:どなたでも結構です。 参加費:無料

概要


 英語の統語論や意味論から英語教育へ 学校英文法における基本5文型が英文の理解に役立つことは否めないが、英語の文には共通した意味的・統語的な特徴を持つ構文が多数ある。講演では、自動詞(非能格動詞)に焦点を当てて、この自動詞を他動詞化することによって、他動詞を伴う構文と同種の構文が生じることをみて行く。具体的には、結果構文と同族目的語構文を取り上げ、中高や大学で英語を教える場合、基本5文型のみならず、構文という側面からも英語(の実態)を教えることが有益ではないかと指摘したい。
 帰国子女の思考のプロセス サピア・ウォーフの仮説は「言語構造の違いは人々の日常的な思考のプロセスに反映される」とする。では、第2言語環境(おもに英語)で育った帰国子女は、どのような思考プロセスを辿っているのか。日本語よりの思考なのか、それとも第2言語環境よりの思考なのかを探ってみたい。
 本物の素材を使えば学習意欲が高まる レベルにより素材、活用法などが異なるが、どのレベルにおいても、本物の素材を使用する授業は評価が高い。実際に、単語、文法、読解などの学習意欲が高まる。語学学習において、生きていることばで「今」を学んでいるという実感は大切であると思われる。
 漢字教育における文字文化学習の有用性 現代の情報社会の影響を受けた(非漢字文化圏の)学習者の漢字の図形的知覚及び認識方法を分析・解明した上で、 漢字学習に効果的な文字文化学習の実践的な適用法を確立し、新たな日本語教育プログラムの開発を試み、その有用性について検討したい。

講師プロフィール


 大阪大学大学院文学研究科教授。 文学博士(大阪大学)。生成文法理論の枠組みで、英語の統語現象について幅広く研究。学校文法にも関心があり、日本英語学会シンポジウム『構文・語彙の意味と構造について―英文法教育に生かす方途を探る―』を企画・司会発表(平成16年)し、東北大学で開催されたワークショップ『英文法:理論と学習文法のインターフェイス』で発表(平成18年)する。著書に『英語構文研究――素性とその照合を中心に――』(英宝社)『左方移動』(研究社)『英語構文を探求する』(開拓社)。


 第15回言語教育談話会


日時:2011年7月14日(木)15:00−17:30
場所:大阪大学大学院言語文化研究科新棟大会議室(2F)

第一部:招待講演(15:00-15:55)

講師:鈴木章能(あきよし)(甲南女子大学准教授)
大学入試センター試験の課題点―作問者の立場から―

第二部:院生発表(16:00-17:30)

� 八野幸子(言文D1)
  高校英語教育におけるコーパスの利用促進
  ―コーパスを利用した英作文指導の実践―
� 吉田ひと美(言文D3)
  成功する外国語学習者の動機づけの流動性と継続性
� 立川真紀絵(言文D1)
  日中間ビジネス場面における対立管理パターン
  ―「回避」と「順応」方略の事例を中心に―

参加資格:学内外どなたでも結構です。 参加費:無料

概要


大学入試センター試験の課題点
 大学入試センター試験問題を巡り、様々な課題点が指摘されてきた。文の抑揚に始まり、文法問題のあり方、問題文の内容、問題の種類・方向性、選択肢の妥当性等、挙げたらきりがない。何が課題かは眺める立ち位置によって異なる。そこで、同試験を巡る課題点について、教育者や受験者、社会の期待といった視点に、作問者の視点や環境を加えて複眼的に眺めつつ、課題点の起因や要因、解決の工夫の有無、具体的な工夫のあり方等について述べたい。
高校英語教育におけるコーパスの利用促進
 近年コーパス研究の知見の英語教育への応用が目覚ましいが、高校でのコーパス利用の具体的な事例報告は少なく、どう利用すればよいか教員が分からないのが実情だ。コーパスは使い方次第でその知見を手軽に授業に活用できるが、その実践例を多く紹介すれば高校での利用が増えるだろう。発表では、英字新聞の記事をテキストファイル化して編纂したごく簡単なコーパスを利用してのプロジェクト型英作文の授業の実践例を報告したい。
成功する外国語学習者の動機づけの流動性と継続性
 成功する学習者の多くは、難なく外国語をマスターしたのではなく、当たり前の方法や活動を根気よく続けている。発表では、日本で英語学習に成功した学習者の動機づけに注目し、ある出来事や経験によって常に変化する流動的な性質をもつ動機がどのように維持され、学習が継続されているのかを検討する。
日中間ビジネス場面における対立管理パターン
 中国人を対象として、異文化間のビジネス交渉において用いられる対立管理方式のパターンとその有効性を調査するインタビューを行った結果、「回避」および「順応」方略が多く見られた。本発表では、主にこれら2つの方略の事例を取り上げ、それぞれの方略の具体的な使用実態とその効果について分析を試みる。

講師プロフィール

鈴木章能 (甲南女子大学文学部准教授)
博士(英文学)。元大学入試センター委員。専門は米文学、比較文学、英語教育。英語教育ではモチベーションの問題と同課題克服の工夫について理論と実践の両面から研究。成果として現在e-job100を展開(科研費課題)。アジア諸国の大学教員とも連携してモチベーションの問題に取り組む。英語教育分野の共著にWorldCALL (Routledge, 2011)、論文に“The Fact Speaks for Itself”, IMSCI’ 10 (Orland, 2011)など。

 第14回言語教育談話会


日時:2010年12月2日(木)15:00−17:00
場所:大阪大学大学院言語文化研究科新棟大会議室(2F)

 

第一部: 講 演(15:00-16:00)

講師:工藤眞由美 教授(大学教育実践センター長)
南米・移民コミュニティにおける日本語の動態

第二部: 院生発表(16:00-17:00)

� 若林 香(言語文化専攻M2)
  日本人高校生の英語学習に対する動機づけ研究
  −学習と教師に対するビリーフから−
� 黄 瑩(言語文化専攻D3)
  中国の日本語教育における中級レベルの文法項目の教え方
  −教材分析を中心に−
                
参加資格:阪大関係者に限らずどなたでも結構です。 参加費:無料

概要

南米・移民コミュニティにおける日本語の動態
 永住を目的とした戦後移住者を構成メンバーとする二つの沖縄系エスニックコミュニティ−、ブラジルの都市とボリビアの農村のエスニックコミュニティ−の言語生活調査を実施した結果、前者ではポルトガル語へのモノリンガル化が急速に進んでおり、後者では日本語が維持されるバイリンガルな状況にあることが明らかになった。このような言語面での差異がどのような条件の違いから出現しているかを考える。
日本人高校生の英語学習に対する動機づけ研究
 動機づけは英語学習の成否に影響を与えると考えられるが、学校教育ではその動機づけが十分に行われていない。日本人高校生の英語学習への動機づけを高めるための学習環境と教師との関係性を提示するため、高校生が英語学習と英語教師に対してどのような認識を持っているかを学習者ビリーフから明らかにする。
中国の日本語教育における中級レベルの文法項目の教え方
 中国の日本語教育は学習者にそれぞれの文法要素を積み上げ式に勉強させることを中心に行われている。本発表には中級レベルで扱われている文法項目が中国の日本語教材にどのように提示、説明されているかに関して具体的な記述例を出す。そして、それは中級日本語学習者が自分で気がつき、自分の言葉で自分の言いたいことを言おうという気持ちを育てるにはどんな影響を与えているかを検討したい。

講師プロフィール

工藤眞由美教授
文学博士(大阪大学)。現代日本語の記述文法において幅広い研究。近年、ブラジル日系社会における言語の総合的研究と記録保存事業にも携わる。著書に『日本語のアスペクト・テンス・ムード体系―標準語研究を超えて―』『児童生徒に対する日本語教育のための基本語彙調査』『アスペクト・テンス体系とテクスト―現代日本語の時間の表現―』(ひつじ書房)

 第13回言語教育談話会


日時:2010年7月1日(木)15:00−17:20
場所:大阪大学大学院言語文化研究科新棟大会議室(2F)

第一部: 講 演(15:00-15:55)

講師:沖田 知子(大阪大学大学院教授)
アリスの不思議な世界―解読から読解へ―

第二部: 院生発表(16:00-17:20)

� 米崎 里(兵庫教育大大学院 D1、帝塚山中学・高校教諭)
  フィンランドの教員養成制度
� 浦山奨吾(言文M2)
  ソシュール言語学とバフチン言語哲学―第二言語の習得と習得支援の観点から―
                
参加資格:どなたでも結構です。 参加費:無料


概要

アリスの不思議な世界
 ことばでは十分尽くされない、あるいは敢えてことばでは尽くさないこころがある。ことば足らずになるのは、実際に使われることばの限界というよりは、推論によって補っていける可能性と考えられる。ここに、ことばの面白さがあると言えよう。言語的解読に留まらず、ことばとこころを繋ぐ主体的な作業としての読解について、ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』を題材にして考えてみたい。

フィンランドの教員養成制度
 経済協力開発機構(OECD)が実施する2006年度学習到達度調査(PISA)の好成績からフィンランドの学校教育が世界中から注目されている。フィンランド教育省は教育の成功の理由のひとつとして教員の質の高さを挙げている。発表では英語担当教員を中心としたフィンランドの教員養成制度に着目し、その特徴を明らかにしたい。

ソシュール言語学とバフチン言語哲学
 昨今の第二言語習得と習得支援は、言語の抽象的な体系を習得させることを目的とするが、バフチンは、ソシュールとは逆の視点を持っている。発表では、ソシュール言語学とバフチン言語哲学に基づく第二言語習得と習得支援はどのようなものかを考察し、ソシュールの功績を踏まえた上で、バフチンの新たな可能性を検討する。

講師プロフィール

沖田知子(言語コミュニケーション論講座教授)
英語学専攻。特に意味論・語用論・文体論などを含めた広範な観点から、ことばの選択や使用、時には遊びも対象に入れた「ことば学」を研究。最新共著『謎解き「アリス物語」―不思議の国と鏡の国へ』(PHP新書、2010年)。

 第12回言語教育談話会


日時:2009年12月10日(木)15:00−17:00
場所:大阪大学大学院言語文化研究科新棟大会議室(2F)

第一部:院生発表(15:00-15:55)


� 照井雅子(言文専攻D2)
  「EOPのニーズに応じた大学英語教育の可能性―工学英語を中心に―」
� アン・アイビー(言文専攻M2)
  「語彙学習における文脈の効果―学習ストラテジーの観点からの再考―」

第二部:講 演(16:00-17:00)


講師:早瀬尚子(大阪大学准教授)
「認知言語学的視点を英語教育にどう活かせるか」
                
参加資格:どなたでも結構です。 参加費:無料

概要

「EOPのニーズに応じた大学英語教育の可能性―工学英語を中心に―」
ESP(English for Specific Purposes)は、学術目的のための英語(EAP)と職業上の目的のための英語(EOP)を統合したものと捉えられているが、従来の大学英語教育におけるESPはEAPが中心である。しかし、学習者が将来属すことになる社会で必要となる英語教育を行うとするESPの観点と工学系大学(院)生の進路状況から、EOPを大学英語教育に導入する可能性について論ずる。

「語彙学習における文脈の効果―学習ストラテジーの観点からの再考―」
第二言語の意図的語彙学習において文脈の効果について未だ賛否両論が存在している。学習ストラテジーという新たな着眼点を通して多角的に検証した結果、文脈の必要性および効果は恒常的なものではなく、対象語の概念的困難度を含めた学習負荷という外的要因と、学習者がいかに文脈を活用するかという内的要因によって大きく左右されることが判明した。

「認知言語学的視点を英語教育にどう活かせるか」
近年、認知言語学は言語学分野の中でも一大勢力となりつつある研究分野である。この分野は、言語が人間の外界の捉え方を反映しているという立場をとり、形式の違いが意味の違いに対応する、形が同じで複数の意味が対応する場合にはそれらの意味は互いに関連し合っている、などのテーゼを共有している。この講演では認知言語学でのトピックをいくつか取り上げて、それを英語教育に応用する際にどのような新しい視点を提示できるかの可能性を探ってみたい。


講演講師プロフィール

早瀬尚子(大阪大学言語文化研究科准教授)
大阪大学大学院文学研究科中退。大阪大学助手(文学部)、大阪外国語大学講師、准教授を経て、現職。主な著書:『認知言語学の基礎』(河上誓作編著(分担執筆、研究社))、『英語構文のカテゴリー形成』(勁草書房)『認知文法の新展開:カテゴリー化と用法基盤モデル(共著、研究社)。

 第11回言語教育談話会


日時:2009年7月9日(木)15:00−17:20
場所:大阪大学大学院言語文化研究科新棟大会議室(2F)

第一部:講演 (15:00-15:55)

 講師:大谷晋也(大阪大学准教授)
「これからの日本の姿と「日本語教育保障法案」」

第二部:院生発表(16:00-17:20)

� 嚴馥(言文専攻D3)
  「「上」と「上がる/上げる」の意味拡張に見る空間認知の類似性」
� 郭毓芳(言文専攻D3)
  「台湾人学習者における日本語漢字語彙の習得について」
� 林盈萱(言文専攻D3)
  「学習ストラテジーの自己調整を促進する学習支援の考察」
                
参加資格:どなたでも結構です。 参加費:無料

概要

「これからの日本の姿と「日本語教育保障法案」」
日本は、ニューカマーの増加により、多民族・多言語・多文化化が進行しつつあるが、こうした外国人への処遇に関する政策は、理念・実践ともに立ち後れており、場当たり的な施策と現場の努力で凌いでいるのが実状である。外国人の受け入れ・サポート等については、大局的見地に立った国の方針・政策が求められるが、その一つとして、言語権の観点から日本語学習を保障する「日本語教育保障法案」を提案したい。その狙いは、希望する者はだれでも日本語教育を受けられると同時に、だれも日本語学習を強制されない社会を目指すことにある。諸外国の例を参考にしつつ、居住地の言語を学習する権利と義務、および、社会の多言語・多文化化について考えたい。

「「上」と「上がる/上げる」の意味拡張に見る空間認知の類似性」
「上」と「上がる/上げる」の意味拡張を分析し、その認知パターンを明らかにした上で、両者の異同を検討する。「上」と「上がる/上げる」の文法的特徴は異なるが、その認知パターンを考察した結果、同じ言語において、同じ空間概念を表す言語表現の間に、類似する認知パターンがあることが分かった。

「台湾人学習者における日本語漢字語彙の習得について」
台湾人日本語学習者による日本語漢字語彙の使用様式を分析し、彼らの該当漢字語彙の習得について、新しい観点から考察する。具体的には、まず台湾人日本語学習者はどのような言語知識を基にして日本語漢字語彙を使用しているのかを明らかにし、次にそれらの習得状況の考察につなげる。

「学習ストラテジーの自己調整を促進する学習支援の考察」
台湾人日本語学習者に学習ストラテジーの自己調整を促進する学習支援を行い、学習ストラテジー使用における教育デザインの影響と調整過程の個人差について考察した結果、学習ストラテジーは教育デザインの違いに大きく影響されることと、学習者の学習ストラテジー調整過程が一人ひとり異なっていることが判明した。


講演講師プロフィール

大谷晋也(大阪大学留学生センター准教授)
大阪大学大学院言語文化研究科博士後期課程退学。専門:言語文化の教育と政策。最近の論文等:「来るべき「共同体」への理念構築と日本語・日本文化教育の権利保障を目指して」、「学校制度や学校文化の多文化適応を目指して」(科研報告)、「外国人にもわかりやすい問診票とは:問診票の理解に関する調査」(『国際保健医療』)、「多言語・多文化化する日本とこれからの言語政策」(『言語文化学への招待』)、「中学校英語教科書に見られる価値観」(『言語と文化の展望』)。共編著書:『源氏物語別本集成』『日本文学どっとコム』(おうふう)、『パソコン国語国文学』(啓文社)、『まちおこしの風景』(櫟/凡人社)、『CD-ROM角川古典大観 源氏物語』(角川書店)。

 第10回言語教育談話会


日時:2008年10月23日(木)15:00−17:20
場所:大阪大学大学院言語文化研究科旧棟大会議室(1F)

第一部:講演 (15:00-16:00)

 講師:定延利之(神戸大学教授)
「コミュニケーションにおける権利と義務」

第二部:講演(16:05-16:50)

 講師:西川眞由美(摂南大学講師)
 「談話標識の意味と機能」

院生発表(16:50-17:20)

 発表者:松本敬子(言文専攻D3)
 「ホール・ランゲージにおける言語の学習と発達」

 参加資格:どなたでも結構です。 参加費:無料

概要

「コミュニケーションにおける権利と義務」
本講演では、われわれの現実のコミュニケーションが「情報の伝達」的なコミュニケーション観からしばしば逸脱することに注意を向けることによって、われわれがなすべき言語教育について再検討する。具体的に扱われるのは、指示的意味を持たないとされる語群や声質である。これらが「何かを伝えるもの」であるよりもむしろ「相手の前で体験してみせること」であって、それがゆえの権利と義務の問題が発生することを示す。

「談話標識の意味と機能」
コミュニケーション重視の英語教育が叫ばれる中、wellやyou knowなどいわゆる談話標識の伝達効果が注目を集めている。しかしながら、日本の英語学習者にとって、概念的意味を持たないこのような言語表現の実態を正確に理解することはかなり難しい。本発表では、談話標識をめぐる理論的研究の一端を紹介するとともに、映画の一場面を使って談話標識の多様な意味と機能を認知語用論の観点から考察する。

「ホール・ランゲージにおける言語の学習と発達」
ヴィゴツキー理論の再評価が積極的に進められている今日的動向を反映し、その中で特に言語教育の立場から論を展開しているホール・ランゲージを考察対象とし、その学習観の側面における言語の学習と発達を探る。本発表では、まずホール・ランゲージの5つの理念を概観し、次にそれらの理念の中から特に学習観を中心に論議する。

講演講師プロフィール

定延利之(神戸大学大学院国際文化学研究科教授)
京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了(博士)。専門:言語学・コミュニケーション論。主な著書:『よくわかる言語学』(アルク)、『認知言語論』(大修館書店)、『ささやく恋人、りきむレポーター』(岩波書店)、『煩悩の文法』(筑摩書房)、『言語に現れる「世間」と「世界」』『音声文法の対照』(くろしお出版、共編著)、『文と発話1,3』(ひつじ書房、共編著)、Evidential extensions of aspecto-temporal forms in Japanese from a typological perspective (Chronos 7、共著)など。

西川眞由美(摂南大学外国語学部講師)
奈良女子大学大学院博士後期課程(比較文化学専攻)修了(博士)。専門:英語学、認知語用論(関連性理論)、辞書学。主な著書・論文:「コーパス語彙意味論―語から句へ」(訳本、共著、研究社)、「ジーニアス英和辞典(第3版、第4版)」、「ジーニアス英和大辞典」の談話標識の項目執筆、「Tautology の考察ーアドホック概念の視点から」(日本語用論学会)、”Pragmatics of Adverbial Discourse markers in an English-Japanese Dictionary” (共著、大修館)、”Oh as a Discourse Marker”(Organization of Interactive Discourse)など。

 第9回 言語教育談話会


日時:2008年6月5日(木)15:00−17:00
場所:大阪大学大学院言語文化研究科新棟大会議室(2F)

第一部:講演(日野信行教授)(15:00-16:00)

「国際英語の概念と教育実践」

第二部:院生発表(16:00-17:00)

「学習者の自発的活動と学習言語接触」吉田ひと美
「議論文における数量詞の役割とコーパスを利用したクラスルーム活動」三木望

概要

「国際英語の概念と教育実践」日野信行教授
従来、第2言語・外国語教育のモデルは母語話者であることが常識であり、学習者は母語話者の言語的・文化的規範の習得につとめるのが当然とされていた。しかしながら今日では、母語話者の規範を相対化する考え方が盛んになるとともに、第2言語・外国語教育の目標も見直されつつある。本講演では、母語話者・非母語話者の垣根を越えた「国際英語」の理念に基づき、国際コミュニケーションにおける自己表現のための英語教育のあり方について考えてみたい。「国際英語」の概念の重要点を整理するとともに、具体的な教育実践の方法について論じる。

「学習者の自発的活動と学習言語接触」吉田ひと美(D2)
学習者の言語習得環境は各種webサイトの利用やe-Learning、ポップカルチャーの流入により多様化している。こうしたリソースが学習者によって授業外で自発的に取り入れられれば、学習者は学習言語とより多くの接触をもつことが期待される。本発表では、学習者が自発的活動を通して学習言語に接触する際、どのような情動要因が作用しているのかを整理する。

「議論文における数量詞の役割とコーパスを利用したクラスルーム活動」三木望(D1)
アメリカの学生の議論文エッセイ( LOCNESS )とTOEFLモデルエッセイにコーパスの特徴語分析を行い、その特徴語と共起語の談話分析から、manyなどの数量詞の議論文における役割を明らかにする。そして、これまで数量詞の教え方が不十分だったことを指摘した上で、レベルを調整しながら、コンピュータを利用したタスクを提案したい。

講演講師プロフィール:日野信行(ひの・のぶゆき)
言語文化教育論講座教授。言語教育学・英語教育専攻。ラジオ「百万人の英語」講師として全国の英語学習者を相手に独自の教育法を実践。『トーフルで650点:私の英語修業』(南雲堂)。Cross-Cultural Literacy (共著、Regents/Prentice Hall)等の単行本に加え、World Englishes (英国)、Georgetown University Round Table on Languages and Linguistics (米国)、Asian Englishes(日本)などの国際学術誌に論文を発表。『英語リフレッシュ講座』(大阪大学出版会)でも二つの章とコラムを執筆。「大阪大学共通教育賞」6回受賞。

 第8回 言語教育談話会

日時:2007年11月22日(木)15:00−17:30
場所:大阪大学大学院言語文化研究科新棟(HP参照)大会議室(2F)
懇親会:研究科旧棟大会議室 費用:教員−1000円 院生−800円

第一部:院生発表(15:00-16:20)

�「植民地台湾で受けた日本語教育という遺産―ある台湾人親子に着目して―」陳 麗華
�「台湾在住日本語学習者に対する会話教育―学習ストラテジーという側面から―」林 盈萱
�「多義語の語彙習得への一提案―認知意味論の意味分析を通して―」嚴 馥

第二部:統合記念講演(仁田義雄教授)(16:30-17:30)

「日本語のモダリティをめぐって」

講演講師プロフィール:仁田義雄(にった・よしお)
 大阪府生まれ,東北大学大学院文学研究科博士課程単位取得後退学。文学博士。専門は日本語学,特に日本語文法の記述的研究と近代日本文法研究史。主な著作に,『語彙論的統語論』(明治書院,1980),『日本語のモダリティと人称』(ひつじ書房,1991),『日本語文法研究序説』(くろしお出版,1997),『副詞的表現の諸相』(くろしお出版,2002),『ある近代日本文法研究史』(和泉書院,2005)などがある。

概要

「日本語のモダリティをめぐって」仁田義雄
 日本語の文の基本構造における,命題とモダリティのあり方を概観する。さらに,命題とモダリティに対する,私の規定を説明し,モダリティの下位的タイプについて触れる。さらに,モダリティのタイプ・モダリティの階層性と文の成立について考えて,単語連鎖が(述語)文として成立せざるをえない最終的な決め手を取り出し,文というものに迫る。また,テクスト・タイプとモダリティとの相互関係にも触れてみたい。モダリティの種類として大きく2種を設定するが,その現れ方・その偏在性を明らかにしながら,それと文のタイプとの相関関係につても概観する。さらに,現実と文の事柄的内容との関係という,奥田靖雄のモダリティ観に触れ,どういった事態として捉えたのか,という事態の捉え方についても考えてみる。

「植民地台湾で受けた日本語教育という遺産ーある台湾人親子に着目して」陳 麗華
 19世紀末の台湾は日本の植民地であったため、日本語学習は言語政策の一環として被統治者が努めるべき義務であった。本研究は日本が台湾での50年間統治において、ある親子(経験者)が受けた日本語教育に着目し、その日本語を習得した過程とその後の影響について考察を行う。現在も調査を進行しているが、当該経験者が日本語を受容しただけでなく、植民地終了後もなお、日本語能力を衰えずに保持し、日本語話者であることを自覚しているとインタビュー調査で判明した。

「台湾在住日本語学習者に対する会話教育―学習ストラテジーという側面から―」林 盈萱
 台湾南部にある大学で日本留学支援業務を携わっていた間、日本留学から帰国した学生から、台湾の留学準備教育で学んだものは、実際に日本留学中で必要とされるコミュニケーション力につながり難いというフィードバックをもらっていた。それを原点として、現在台湾で、日本へ留学する予定のある学生たちに対して、いかなる準備教育が適切なのかと検討し直す必要があると考える。本発表では、2007年8月に実施した調査に基づき、学習ストラテジーを取り入れた会話教育の可能性を検討する。

「多義語の語彙習得への一提案―認知意味論の意味分析を通して―」嚴 馥
 認知意味論における多義語の意味分析は語彙理解を高めるひとつの方法である。発表では、認知意味論の多義語の意味分析は語彙習得に応用できるとの立場から、≪上方向≫の移動を表す「あがる」を取り上げ、Lakoffのカテゴリー観に基づきその意味ネットワークを分析したうえで、語彙習得への応用方法を提示する。

 第7回 言語教育談話会

日時:2007年5月10日(木)14:40−17:00
場所:大阪大学大学院言語文化研究科新棟(HP参照)大会議室(2F)

テーマ講演『ヴィゴツキーの言語習得理論と外国語教育』
司会:アレクサンドル・ディボフスキー(大阪大学教授)
講演1(14:40−15:30)
「ロシアにおける外国語教育」
講師:アレクセイ・パルキン(大阪大学客員研究員)
講演2(15:30−16:10)
「日本の習得と習得支援−中級段階におけるショー&テルの実践を通して」
講師:西口光一(大阪大学教授)
質疑&討論(16:10−16:30)

研究発表(16:35−17:00)
『多言語化する職場での「言語権」と「双方向バイリンガル教育」』
      発表者:高野直人(言語文化研究科D3)

参加費:無料。会員資格なし。非会員参加自由。
問合せ 大阪大学大学院 成田研究室 email: narita@lang.osaka-u.ac.jp

概要ほか

講演:「ロシアにおける外国語教育」
講師:アレクセイ・パルキン
プロフィール:1998年にモスクワ教育国立大学を卒業し、モスクワ国立言語学大学大学院に入学。同大学で博士論文『言語活動個体発生における情緒を表す語彙と形態』を書き、2002年にPhDを取得。著作としては、ロシア語で著書2冊(『発達言語心理学:子供による国語辞典』、『日出ずる国のスター:日本人学者の著作におけるL.S.ヴィゴツキー」)、論文と教育用便覧19編、英語論文1編がある。
概要:日本においては従来の文法訳読式の英語教育が健在だ。これは文法と語彙の習得には有効で、実際英語の入試には不可欠なものであったが、それだけでは口頭運用能力を向上させることができないことも疑いない。ロシアにおいては外国語教育に口頭運用能力の養成に有効なコミュニカティブ・アプローチを採用するが、言語学習の基礎として文法と語彙の習得が重要であることを踏まえ、文法訳読式を併用する。この併用方式の実践にあたっては、教師が言語の文法と運用のメカニズムを説明した上で教育デザインに従ってコミュニカティブ・アプローチの授業を教師主導で運営する。これにより統合的な言語能力の適切な習得を図るのだが、これは19世紀後期のロシアの(外国語での直接教授を特徴とする)ナチュラル・アプローチの流れを引くヴィゴツキー学派の行動理論に基づいている。

特別講演:「日本の習得と習得支援−中級段階におけるショー&テルの実践を通して」
講師:西口光一
プロフィール:国際基督教大学大学院教育学研究科博士前期課程修了、教育学修士。アメリカ・カナダ大学連合日本研究センター講師、1991年から1992年はハーバード大学東アジア言語文化部上級日本語コース主任。1994年、大阪大学留学生センター助教授に着任。日本語教育学会理事。研究領域は、第二言語習得への文化歴史的アプローチ、記号論、接触場面の相互行為研究、日本語教育学など。著書に、『日本語教授法を理解する―歴史と理論編』(バベル・プレス)、『人間主義の日本語教育』(共著、凡人社)、『社会文化的アプローチの実際』(共著、北大路書房)、『文化と歴史の中の学習と学習者』(編著、凡人社)など。ほかに、『基礎日本語文法教本』(アルク)、『みんなの日本語初級 漢字』(スリーエーネットワーク)、『例文で学ぶ漢字と言葉』(スリーエーネットワーク)、『日本語 おしゃべりのたね』(監修、(スリーエーネットワーク))、『Kanji in Context』(ジャパンタイムズ)などの日本語教科書。
概要:本講演では、最初に、発表者自身が実施した中級日本語教育におけるショー&テルの実践を紹介する。次に、その背後で想定されている第二言語の習得と第二言語習得支援の原理について議論する。また、そうした議論の中で、第二言語話者とはどのような言語使用者か、ことばとはどのような性質のもので、ことばを媒介とした相互行為実践とは何か、といった人間の記号的行為の根本に関わる問題についても言及したい。

研究発表:『多言語化する職場での「言語権」と「双方向バイリンガル教育」』
発表者:高野直人
概要:多言語化する職場において、非英語母語話者の「言語権」はどの程度、保障されるのだろうか。「移民の国・アメリカ」では、1980年代以降、ヒスパニック系労働者の(就業時間中の)スペイン語を使用する権利が連邦裁判所の中で議論されている。本発表では、そうした「言語権」に関わる諸問題を検証しながら、その解決策として1990年代以降、教育現場で急速に、注目され出した「双方向バイリンガル教育」の方法論を紹介していく。


 第6回 言語教育談話会


日時:2006年6月29日(木)15:00-17:30
場所:大阪大学大学院言語文化研究科新棟(HP参照)大会議室(2F)

第一部(15:00−15:25/15:30−16:20)
研究発表
「日本生まれの帰国児童の学習言語能力」
発表者:高橋朋子(大阪大院生)
特別講演
「日本におけるESP教育の現状と課題 ―医学部ESP教育全国調査から―」
講師:川越栄子(神戸市看護大学)

第二部(16:30−17:30)
トピック討論
「先端科学技術5分野におけるESP学習ソフトの可能性―デモと意見交換―」
発表・解説者:福井希一;中嶋幹男;岩井千春(大阪大大学院工学研究科)
西川美香子(大阪大サイバーメディアセンター)
コメンテータ:小口一郎(大阪大大学院言語文化研究科)
        川越栄子(神戸市看護大学)

参加費:無料。会員資格なし。非会員参加自由。
懇親会(17:45−19:00)
場所:大阪大学大学院言語文化研究科旧棟大会議室
費用:教員1500円、院生1000円

問合せ 大阪大学大学院 成田研究室 email: narita@lang.osaka-u.ac.jp

概要ほか

研究発表:「日本生まれの帰国児童の学習言語能力」
要旨:中国帰国児童のほとんどが日本生まれになってきている。彼らは流暢に日本語を話し、生活上の不自由はほとんどない。にもかかわらず、小学校現場からは、「日本語ができるのに、授業についてこられない」という報告がなされている。それはいったいなぜなのか。小学校での在籍学級や日本語教室でのフィールドワークをもとに、彼らが抱える教育問題について考察してみたい。

特別講演:「日本におけるESP教育の現状と課題―医学部ESP教育全国調査から―」
講師:川越栄子(神戸市看護大学助教授)
プロフィール:(社)日本時事英語学会副会長、大学英語教育学会(JACET)関西支部研究企画委員。著書:「耳から学ぶ楽しいナース英語」(共著)講談社 「看護英語読解15のポイント」(共著)メデイカルビュー社など。
概要:1991年度の文部省「大学設置基準の大綱化」以降、各大学ではESP教育を導入する動きが見られた。しかし、本格的にESP教育が始まったのはこの数年である。現在、日本におけるESP教育がどのようになされているか、�文部科学省の動き、�各大学での取り組み、�学会での研究、それぞれについて概観する。さらに、「医学部・看護学部におけるESP教育の実態と将来像の系統的研究」(科研費研究代表者:川越栄子)で実施した全国医学部80校に対する英語教育実態調査、3,000人の医師対象の英語使用度調査・大学英語教育に対する要望調査、および医学部ESP教育のための教材調査について報告し、今後の医学部ESP教育の課題と展望を述べる。さらに、医学部の課題を基盤として、日本におけるESP教育の将来の展望を述べる。

トピック討論
「先端科学技術5分野におけるESP学習ソフトの可能性−デモと意見交換−」
内容:(文科省)現代的教育ニーズ支援プログラム「国際的な人材養成に資するコンテンツの開発」においては、先端科学技術分野において国際的に活躍する人材を養成するために専門英語教育(ESP)を行うe-Learning用コンテンツ開発に取り組んでいる。選ばれた先端科学技術分野は総合科学技術会議で重点分野とされた、バイオテクノロジー(BT)、情報科学(IT)、環境科学(ET)、ナノ・材料科学(NT)の4分野に加えて、大阪大学が大きな研究開発能力を有するロボット技術(RT)である。それぞれの分野で通年30コマの講義用のコンテンツ開発を進めており、前半15コマで当該分野における英語会話とプレゼンテーションの基礎、後半15コマで当該分野の専門英語を学ぶ構成になっている。さらにe-Learningの特長を生かして大阪大学海外拠点を結んでの講義も取り入れている。こうした(学部2年生向け)理工学系英語の教材開発について解説し、意見交換を行う。

 第5回 言語教育談話会


日時:2006年4月27日(木)15:00-17:30
場所:大阪大学大学院言語文化研究科新棟大会議室

第一部 研究発表&トピック報告(15:00-16:20)

�発表者1:大熊富季子(D1)
発表題目:「日本人英語学習者のテンスとアスペクトの習得」
 要旨:日本人英語学習者のテンスとアスペクトの理解を通し、Minimal Trees(MT)とFull Transfer/Full Access(FT/FA)という二つの理論を検証。日本人10名の現在形・現在進行形・現在完了形・過去形の理解をネイティブと比較した処、母語に起因すると思われる違いが見られた。この結果は、機能範疇・語彙範疇共に母語の影響があると仮定するFT/FAを支持し、機能範疇には母語の影響は見られないと仮定するMTに反するものとなった。

�発表者2:田鴻儒(M2)
発表題目:親疎場面における中国人日本語学習者のスピーチレベルの使用実態
          ――日本語母語話者との比較を通して――   
 要旨:親疎関係の異なる話者間の会話場面において、母語話者間の会話における日本語母語話者のスピーチレベルの使用と、母語話者と非母語話者間の会話における日本語学習者のスピーチレベルの使用を比較、分析する。それにより、日本語学習者のスピーチレベル使い分け能力の実態およびその問題点を明らかにする。また、学習者を対象とするアンケート調査やフォロアップ・インタビューを通して、学習者のスピーチレベル使用に関する使用意識を調査する。

トピック報告
「大学院留学生の英語ライティング教育―イギリスの場合」(報告者:小口一郎)
内容:2005年度の1年間英国オックスフォード大学に派遣され、英国における大学院留学生向けの英語教育の方法や実践の調査を行った経験を踏まえ、特にオック スフォード大学言語センターが提供しているアカデミックライティングの授業について、その概略と特徴を報告する。

第二部 講演(16:30-17:30)

講師:岡田伸夫
大阪大学大学院教授
プロフィール:専門:生成文法、第1/第2言語獲得、学習英文法。大学英語教育学会 (JACET) 副会長。著書:『英語教育と英文法の接点』(美誠社)、(共著)『言語科学と関連領域』(岩波書店)、『副詞と挿入文』(大修館書店)など。検定教科書:(共著) Genius English Readings (大修館書店)、(共著) New Horizon English Courses 1-3 (東京書籍)。学習参考書:Genius English Grammar (大修館書店)、『英語の構文150 Second Edition』(美誠社)、『基礎からの英語 新訂第2版』(美誠社)など。
題目:生徒にわかる文法的説明
概要:文法を教える場合には、どのような方法で教えるか (顕在的か潜在的か、演繹的か帰納的か) を選ばなければならない。教えるべき内容の難しさ、学習者の英語力や理解力、学習者が好んで用いる学習方略、教えるのに使える時間、教える内容に対する教師の理解度や得意とする教授方略など、多くの要因を計算に入れて選ぶ必要がある。だが一旦教室を出ると英語が使われることのない状況下で、短時間の授業を通して、知的に発達した学習者に教える場合には、文法を顕在的に教えることも有効な手段の一つだ。文法を教える時には、正しい事実をそのまま示すこともあれば、事実を説明することもある。文法は「これこれの形はこれこれの意味を持っている」という知識の総体なので、文法を教えるというのなら、形だけではなく意味も教えないと教えたことにならないが、現実には、表面的な形だけを教えて終わりとすることがよくある。また、意味を教える場合でも、なぜそのような意味になるかまで踏み込んで説明することは稀だ。講演では、現在完了形と過去形、willとbe going to、二重目的語構文、形式の主従と意味の主従のねじれなどを材料に、どのような文法的説明なら生徒にわかってもらえるかについて皆さんと共に考えたい。

参加費:無料
問合せ:成田(narita@lang.osaka-u.ac.jp)

 第4回 言語教育談話会


日時:2005年12月8日(木)15:00-17:10
場所:大阪大学大学院言語文化研究科新棟大会議室

懇親会
日時:2005年12月8日(木)17:15-18:00
場所:大阪大学大学院言語文化研究科旧棟大会議室
費用:教員−1000円 院生−800円

第一部(15:00-15:55)

テーマ討論
�「どういう英語を教えるか」(発題者:成田一)
 内容:現在は英語を第二言語ないし外国語として話す人口が母語話者より多く、国際的な政治・経済活動においては、ノン・ネイティブ間の英語によるコミュニケーションが多い。このため、「諸英語(Englishes)」という地域英語容認の傾向が広まって来たが、地域によっては、語法もさることながら、特に音韻において、ネイティブの基準英語からの逸脱が激しくて、理解が困難なことが少なくない。それを学習してもネイティブの英語の理解が難しくなる。コミュニケーションがうまく行かない危険が大きくなるのだ。そこで、学校では「どういう英語を教えるか」べきか、ということについて多面的な視点から大いに議論したい。

�「在住外国人は日本語を身につけなければならないか」(発題者:西口光一)
内容: 日本人の配偶者ないし「定住者」や「研修生・実習生」として日本に在住し生活する外国人が増えているが、日本各地でこうした人たちに日本語の学習支援を行う「地域日本語活動」が行われている。そこでは「在住外国人=(日本人が構成する)日本社会への新参者」というような図式が当然視され、「(そうした)日本社会でうまく暮らしていけるように 」という趣旨で、「マジョリティである日本人に都合のいい日本語」が押しつけるということが、しばしば、善意に基づいて、無意識的に行われている。「在住外国人にとってのニホンゴ」、そして「在住外国人を相手としたニホンゴ」ということについて、いっしょに反省的に考えたい。

第二部 講演(16:00-17:10)

講師:水野真木子
千里金蘭大学助教授
プロフィール:京都府立大学文学部卒業。立命館大学大学院国際関係研究科修士課程修了。会議通訳・法廷通訳を経て、現在、千里金蘭大学人間社会学部助教授。日本司法通訳人協会副会長、日本通訳学会理事・コミュニティー通訳分科会代表。主な著書:「通訳トレーニングコース」(共著)大阪教育図書、「通訳のジレンマ」(単著)日本図書刊行会、「グローバル時代の通訳」(共著)三修社、「司法通訳」(共著)松柏社、「Let's Interpret ! 通訳実践トレーニング」(共著)大阪教育図書など。

題目:英語教育における通訳養成メソッドの効用

概要:近年、大学レベルで通訳トレーニングの手法を用いた英語学習が広まっている。これは、従来型の文法重視の授業と会話の授業の中間の位置づけになりうる学習方法である。
 手法の代表的なものとしては、集中力、注意力配分の能力を強化するラギング(時差リピーティング)とシャドウイング(同時リピーティング)、記憶力を鍛えるリテンション(逐次リピーティング)、意味のユニットごとにメッセージを把握する練習であるサイト・トランスレーション(視訳)、表現力を身につけるためのパラフレージング(言い換え)などがある。また、実際の通訳練習では、文法中心の訳ではなく、意味中心の訳が求められ、英語を表面的に処理するのではなく、話者の意図を汲み取って訳す訓練をする。
 今回、このような通訳トレーニング手法をデモンストレーションを通して紹介し、学習者自身の感じ方も含め、学習者に及ぼす効果について述べる。さらに、通訳手法を学習者のレベルに応じてどのように適用するか、通訳手法を用いた学習の欠点は何か、などについても触れたい。

 第3回 言語教育談話会


日時:2005年10月13日(木)15:00-17:00
場所:大阪大学大学院言語文化研究科新棟大会議室

第一部講演(15:00-15:55)

�院生の研究構想の発表とアドバイス(発表募集中)
�自由な意見交換テーマ(未定)

第二部講演(16:00-17:00)

  講師:相川真佐夫先生
京都外国語短期大学・専任講師

プロフィール:University of Northern Iowa修士課程修了(MA in TESOL、社会言語学的能力とテスティングについて主に研究)研究活動:文科省・科研費「台湾国民小学の英語教育政策に伴う英語教員の意識変化と日本への適用性に関する研究」(平成15-16年度)、「台湾の国民小学・国民中学・高級中学における英語教育の連続性に関する調査研究」(平成17-19年度) 、国立教育政策研究所 「教科等の構成と開発に関する調査研究」(外国語教育班)研究協力者、著書『最新アジアの英語事情』(本名信行編・共著、大修館書店)、『世界の外国語教育政策』(大谷泰照ほか共編、東信堂)、学会活動:日本「アジア英語」学会理事、大学英語教育学会関西支部代表幹事

題目:      小学校における英語教育の現状と課題
―台湾、韓国、中国の実践と日本の針路―

概要:外国語教育を一種の言語政策として捉えた場合、その政策を国際的に比較することで、今まで見えてこなかった日本の外国語教育の問題点が見えてくるはずである。本発表では、東アジアの隣国である韓国、中国、台湾における小学校での英語教育を取り上げ、その現状と課題を紹介する。これらの国は、日本と同じように、英語を外国語として学び、しかも受験・テストに動機付けを頼ってきたが、近年、英語運用能力の向上に努めようと、小学校まで英語学習の開始時期を早めている。これらの国々では、「話すこと」「聞くこと」の技能の向上には成果を上げているようだが、多くの問題もはらんでいる。たとえば、児童間の学力や学習意欲の格差、中学校段階への継続性、小学校の英語教員の質・数の確保などが挙げられる。日本では、現在、小学校における英語の科目化が問われている。日本に先駆けて導入された隣国の事情を提示することで、日本の教育政策に与える示唆と小学英語科目化の是非を、参加者の皆さんと共に考えてみたい。

 第2回 言語教育談話会

日時:2005年6月30日(木)15:00-17:00
場所:旧棟大会議室

第一部研究報告(15:00-15:55)
 木本 和志 氏(本研究科M2)
 「法学系学術論文の序論に見られる文章構造の分析―専門日本語教育の観点から―」

 枡田 愉加利 氏(本研究科M1)
 「修士論文の構想について」

 井上 加寿子 氏(本研究科M2)
 「新造オノマトペを通して見る日本語清音・濁音の音象徴−SD法による分析を中心に−」

第二部講演(16:00-17:00)
  講師:竹内 理 (TAKEUCH Osamu) 先生

関西大学教授 (大学院外国語教育学研究科・外国語教育研究機構)

プロフィール:神戸市外大大学院修了。フルブライト米国留学後、同志社女子大助教授を経て現職。英語教育学(学習者要因)、教育メディア学専攻。学習者要因に関しては、学習方略の研究を中心に、年齢や不安、動機づけ、適性の問題までを含めて、実証的に検証。教育メディアに関しては、メディアを利用した教授方略を、認知的メカニズムの枠組みの中で実証的・理論的に検討。著書、論文、講演多数。『より良い外国語学習法を求めて:外国語学習成功者の研究』(2003. 東京:松柏社)では2004年度JACET学術賞受賞。大学英語教育学会、外国語教育メディア学会では、幹事、理事、運営委員、大会実行委員などを歴任。

題目:   新しい英語授業実践を行う前に
 −目標と評価の間をうめる原則作りの試み−

概要:昨今、英語教育の世界では、「目標」ー「評価」の枠組みの重要性が強調されている。しかしながら、その間にはいるべき「授業」の枠組みに関しては、十分に言及されることがなく、また研究もすすんでいない。本講演では、英語授業実践学の立場から、良い「授業」を貫く原則というものを実証的に解明し、これをEcology of Language Learning の視点と関係づけながら、説明していくことにしたい。

要約:この講演では、「目標と評価」の枠組みの現状を、大学および中学校の英語教育を例にとり説明したあと、この枠組みの陰で見過ごされている「授業の原則」について詳述した。この「授業の原則」(9つ)は、数多くの英語授業の観察データをもとに、質的研究手法であるKJ法を利用して抽出されたものであり、現在の教育学や心理学、第2言語習得理論やデータとも整合性が高いものであることが指摘された。その後、「学習者」「教授者」「メディア」を統合的に取り扱う Ecology of Language Learning の考え方を導入し、「目標と評価」の枠組みと「授業の原則」を統合した授業実践の方向性を提案した。最後に、授業のような、どちらかというと科学的探求の対象になりにくいものをあえて取り扱うことの意義について、学習方略の研究などを引きあいにだしながら、言及した。なお、本講演のなかでは、Emergence, Affordance, Participation, Human Agency, Autonomy などのキーワードについても、具体的例をあげながら説明した。

 第1回 言語教育談話会

日時:2005年5月12日(木)15:00-17:00
場所:旧棟大会議室

第一部研究報告
  紙谷一彦氏(本研究科M2)
  「body形,one形不定代名詞の比較研究ーBolinger説をめぐって」

第二部講演
  講師:横川 博一 先生


神戸大学助教授


プロフィール:大阪大学大学院言語文化研究科博士後期課程修了(博士)。京都外国語大学専任講師を経て、2003年10月より現職。専門は、言語教育科学、心理言語学。主な著書・論文に、『英語教師の悩みにこたえる』(大修館書店、分担執筆)、『現代英語教育の言語文化学的諸相』(三省堂、編著者)、『英語のメンタルレキシコン−語彙の獲得・処理・学習』(松柏社、共著)、『知へのステップ―大学生からのスタディ・スキルズ』(くろしお出版、分担執筆)、New Crown English Series(中学校検定教科書、三省堂、共著)、EXCEED English Series(高等学校検定教科書、三省堂、共著)、『ウィズダム英和辞典』(三省堂、共著)、“Lexical networks in L2 mental lexicon: Evidence from a word-association task for Japanese EFL learners” (Language Education and Technology, 39、共著)、“Off-line and On-line Study on Processing of Garden Path Sentences by Japanese EFL Learners”(JACET Bulletin, 41、共著)などがある。


題目:人間は言語をどのように理解しているかー語彙と文法はいかに関連しているか

概要:本講演では、まず、言語教育研究のあり方について、心理言語学的視点からのアプローチがどのように貢献するか述べた。言語教育が自然科学の研究がもつべき客観性、再現性などの性質を備えており、同様の手法でかなりの程度研究することができること、言語の認知メカニズムといった基礎研究とリスニングの指導といった教育実践のインタラクションの有効性などについて触れた。
 こうした基本的理解を踏まえて、人間の言語情報処理の認知メカニズムにおける語彙・文法の役割について述べた。英語教育では、文法と語彙はとかく区別される傾向があるが、この両者が密接に関連しており、英語教育においても語彙と文法を有機的に関連性をもたせて指導することが重要かつ有効であることを、言語理解や言語獲得に関する心理言語学的知見をもとづき、指摘した。