全学共通教育の開講科目

第 2 外国語

第2外国語科目にはドイツ語、フランス語、ロシア語、中国語、朝鮮語、スペイン語、イタリア語の7言語があります。英語以外の外国語の初中級レベルの学習を通じて、日本語等の母語やすでに一定の知識を持つ英語を相対化し、より多角的な視野を得ると同時に、21世紀を通じていっそう加速する国際化に対応し得るコミュニケーション力を涵養することを目的としています。

学生の皆さんは上記の7外国語の中から各学部で選択可能な1つを選び(カリキュラムアウトラインを参照)、その同じ外国語で初級、中級、上級等の科目を履修し(履修ガイドを参照)卒業要件単位をそろえなければなりません。

留学生の皆さんは、上記7言語に加えて日本語科目も選択することができます。

なお、履修希望者がクラスの受け入れ可能人数を超過している言語(日本語を除く)については、各学期前に履修者抽選を行なうこともありますので、履修時にはマルチリンガル教育センター教務部からの指示に従ってください。

ドイツ語

ドイツ語はドイツ、オーストリア、スイスなどで話されている言葉で、約1億人の母語となっています。系統的には英語と同じゲルマン語派に属していますが、英語がこの千年ぐらいのうちに激しく変化したのに対し、ドイツ語はあまり変化していません。そのためドイツ語は、古い形をよく保っています。発音は基本的にローマ字読みをすればよく、アクセントも原則的に最初の母音におかれます。例えば、Japan(日本)はヤーパンと発音しますが、ヤーの部分を強く発音します。

発音が英語よりシンプルな分、文法は古い形を保っているだけに複雑な部分があります。例えば、名詞には男性、女性、中性という区別があり、この「性」に応じて、冠詞などが変わったりするので、まるで単語一つ一つが本当に男性や女性や中性として生きているかのようです。また、単語が二つ三つとつながって長い単語を作るのもドイツ語の特徴です。たとえばUniversitätsbibliothekは大学図書館という意味ですが、これをちゃんと発音しようとするとちょっとしたお顔の体操になるかもしれません。

ゲーテ、ベートーヴェン、クリムトなどを生んだヨーロッパ文化は、ドイツ語と切っても切れない関係にあります。サッカー、テクノ音楽、ドイツ映画、ソーセージやチョコレートケーキなど、日本で人気のあるドイツ語圏発祥のものも多数あります。医学と登山にまつわる外来語も圧倒的にドイツ語起源です。また今日のドイツは再生可能エネルギーに対する取り組みにみられるような環境政策の先進性によって、さらには欧州連合(EU)の中心国のひとつとしても注目されています。ドイツ語の学習は、その背後に広がる新しい世界に出会うきっかけとなり、きっと皆さんの視野を広げてくれることでしょう。

フランス語

フランス語が英語と並ぶ国際語であること、人文科学・社会科学・自然科学・医学といったさまざまな学問分野において学術用語として重要な位置を占めていること、フランス文学やフランスの思想、さらには食や美術、音楽をはじめとした多種多様なフランス文化が全世界に与えてきた大きな影響力、国際社会においてフランス語圏に属する国や地域が果たしてきた役割の大きさなどについては改めて述べるまでもないでしょう。

フランス語は、歴史的にはラテン語から生まれた言葉であり、ポルトガル語やスペイン語、それにイタリア語などとは姉妹の関係にあります。一方、英語は、歴史的にはやや離れているのですが、かつてイングランドでほぼ400年間にわたってフランス語が公用語として用いられたこともあって、フランス語の著しい影響を受けています。従って、現代英語の語彙の半数以上がフランス語またはラテン語に由来するものであり、文章法についても大きな影響のあとが見られます。そのため、発音は異なるものの、フランス語には英語と同じか、よく似た単語が非常に多く、基本文型などについても英語の知識を大いに活用できます。英語をすでに学んだ皆さんにとっては、最も入りやすい外国語であるといえるでしょう。

フランス語を学ぶことで、多様なフランス文化により直接ふれることができるようになり、また広く西洋文化について皆さんの知識も深まっていくことでしょう。

このように大変学びがいのある外国語、フランス語にぜひ挑戦してみて下さい。

ロシア語

昨年から、ロシアの動向に関心を持ってきた人は多いでしょう。この混迷する時代において、ロシア語を勉強する意義は高まっています。米国では有事があると、当該地域の事情をよく知る人材を国家が必要とする為、その言語の学習者も増えるそうです。ロシアと日本は地理的に近く、今後、米国に劣らずロシア語を話せる人が求められるでしょう。また国家戦略は別にしても、第三者を通じてではなく、自分の目と耳で、戦争の背景には何があったかを知ることは、この先の平和構築において重要です。

さて、ロシア語は「名詞の格変化(語尾変化)」と「動詞の人称変化」を特徴とする英語とは全く違う構造の言語です。詳細は省きますが、この「格変化」があるおかげで、韻を踏む美しい詩的な響きが生み出され、また語順は重要でなくなり、例えば「昨日/私は/アンナと/レストランで/食事した」という文は、なんと120通りの語順が可能になります。これらの文法構造は、スラヴ語に共通するもので、ロシア語の習得は、ポーランド語、ウクライナ語、チェコ語等の学習を容易にするでしょう。

人は「言語」を使うことでしか世界の現象を把握できません。とすると、「日本語」で世界を理解する私たちと、違う言語の話者は、目の前の景色を別様に見ているのかもしれませんね。元来ロシアでは、音楽やバレエに代表される卓越した美意識が発達し、またトルストイやドストエフスキーなど文学の傑作が生みだされてきました。さらに19世紀から地球の外に出ることを目指し、宇宙開発の分野では世界を牽引してきました。ロシア語の学習は、この別の価値を生み出した思考体系に分け入るエキサイティングな体験となるでしょう。他方で、19世紀以降のロシア思想には、西欧へのコンプレックスが指摘されますが、ここには西側との対決を鮮明にする現在のロシア政府のメンタリティを考えるヒントがあるかもしれません。

このようにロシア語を学ぶ意義は沢山ありますが、大学では「人と違う言葉を学んでみたい」と言う素朴な好奇心からの入門ももちろん歓迎です。ゼロから一緒にロシア語の勉強をはじめましょう。

中国語

いまや新聞をひらきテレビをつければ、ビジネスでも文化でも政治でも、中国に関する話題を目にしないことはまずありません。中国語を勉強しておけば、これからの時代、きっと役に立つだろうという考えからでしょう、中国語人気も衰えるところを知りません。

じっさい、中国語は入門しやすい言語です。なんといっても日本人は漢字に慣れていますから、多くの語を学ばずして理解することができます。ところがそれは落とし穴でもあります。学び始めた途端「こんなはずじゃなかった」となることもよくありますから、どうかご注意を。

漢字を使う点はたしかに共通していますが、字体は現在中国(中華人民共和国)で公式に用いられている「簡体字」を使います。「簡体字」は常用字の約4割が、日本語の漢字とどこかが違っています。故郷は故乡、図書館は图书馆、経済は经济、豊富は丰富というように、微妙に(時には全く)違います。また字体が同じでも、表す意味が違うものもあります。「走」は「はしる」ではなく「あるく」ですし、「等」は「など」ではなく「待つ」という意味の動詞です。発音も習得しないといけません。中国語は、学び始めの二か月ほどで、早くも明暗が分かれます。ここできれいな発音さえ身に着ければ、「発音のよさは百難かくす」、中国語の達人への道も見えてきますが、妈mā麻má马mǎ骂mà(同じ“ma”という音でも、イントネーションによって表す字――つまり表す意味が変わります)というように、最初のうちは単調な練習をしっかり積まないと、発音の土台を築くことができません。漢字の文字づらだけ見るのではなく、文法に則ってしっかり意味を取れるようにするには、文法事項もしっかり学ぶ必要があります。――なんだことばを学ぶ上で当たり前のことばかりじゃないか、と思ってくれた方は、どうぞ中国語の教室へ!そう、中国語の学習も他の語学とまったく同じ。地道な努力があってこそ実を結ぶのです。「チャイ語=楽勝」はしょせん幻想にすぎません。

ちょっとこわいことも書きましたが、みなさんの周りにたくさんいる中国人と友達になり、その母語でわずかであれ語り合えるだけでも素晴らしいことです。どうか確固たる学習意欲をもって、中国語クラスの門を叩いてください。

朝鮮語(人間科学部・文学部入学者のみ選択することができる)

朝鮮語は韓国語とも呼ばれ、この言語を母語として用いる人々が南北朝鮮や中国東北地方に、また、「継承語(heritage language)」として学ぶ人々も日本・ロシア・中央アジア諸国・アメリカなどに暮らしています。さらに、ひとつの「外国語」として学ぶ人々も世界各地に存在しています。

近年の日本では、ほぼ大衆文化に限られた狭い範囲でとはいえ韓国への関心が高まり、朝鮮語や朝鮮文化の一面は多くの人々に身近となって、朝鮮語学習人口も増えました。この様な学習・教育の拡大と多様化という状況の中で、朝鮮語部会では、会話学校や実務教育ではなく、高等教育における朝鮮語教育というコンセプトの下、「専門家によるコースデザインに基づき、高度なコミュニケーション能力を含む学問の基礎としての朝鮮語の科学的・体系的習得」に教育目標を置きます。丸覚えのフレーズに依拠した「会話」や片言の挨拶、K-POP・韓流ドラマの、場面や文脈に多くを頼った感覚的な聴解・理解が中心となる目標ではありません(各自の学習意欲の維持にはこれらも大いに活用してください)。言い換えれば、学問の基礎としての朝鮮語を科学的・体系的に習得できれば、会話においては、文の構造や語彙の特質を理解した上で適切かつ過不足のないコミュニケーションが行え、歌やドラマにおいては、感覚的ではない聴解・理解ができるようになるでしょう。

このような教育目標に基づく朝鮮語の学習を通して、細切れの知識の寄せ集めではない国際性が涵養できるのみならず、実用にも資する能力の確固たる基盤を築けるでしょう。また、朝鮮語は日本語との類似性が強調される余り、あたかもたやすく習得できるかのように言われることがありますが、単語や文をコツコツ自分で記憶する、理解した文法を即座に運用できるように自分で反復して訓練するといった自発的・積極的学習態度とその継続的実践なしには、文字の習得すら望めません。また、学習経験のある人は、その知識を資産としつつ、ゼロから体系的に頭の中の朝鮮語を組み立て直すといいでしょう。

しっかり取り組みさえするなら、最初は記号のように見えていたものが読めて意味がわかるようになることは朝鮮語学習の魅力のひとつでしょう。そして、朝鮮語という窓を通して新たな世界が見えてくるでしょう。

スペイン語(人間科学部・文学部入学者のみ選択することができる)

世界に4億人近い話者を持つ現代スペイン語。フランス語などと同様ラテン語を母とするこの言語の文法は15世紀に確立し、その後征服事業を通して新大陸に持ち込まれました。16世紀にはセルバンテスに代表される偉大なスペイン作家たちが黄金世紀と呼ばれる古典文学の一大拠点を築き上げました。ピカレスク小説をはじめとする現代文学の礎がこの言葉で組み立てられたという事実を忘れるわけにはいきません。明治以来の日本における独・仏語偏重の大学語学の枠組みからはなぜか洩れ落ちていたスペイン語ですが、近年はスペインの現代文化が世界へ向けてバンバン発信を行い始めたのに伴い、経済・政治・映画・建築・食などかつては考えられなかったほどの多種多様なレベルでこの国の文化への関心が高まりつつあります。植民地として始まったラテンアメリカのスペイン語文化も20世紀に入って5人のノーベル文学賞を産み出すまでに成長しました。ガルシア・マルケスやボルヘスをはじめとする小説家の刺激的な文学世界は北側ポスト工業化社会の読者にも強い衝撃をもたらしました。グローバリゼーションの進展に伴いスペイン語話者も世界中を移動するようになりましたが、とりわけ南の「アメリカス」諸国からアメリカ合衆国への近年の移動はスケールが違います。広義の「アメリカ大陸文化」を学ぶにあたって、少なくとも英語とスペイン語の二言語を知っておくことはもはや最低限のマナーであると言えるでしょう。

イタリア語(文学部入学者のみ選択することができる)

イタリア語は公のことばとしては主にイタリア共和国で話されているだけですが,西洋文学,西洋史,美術,デザイン,ファッション,音楽,料理に興味を持つ人の間に幅広い需要がある言語です。イタリアにはローマ,ミラノ,ナポリ,フィレンツェ,ベネツィアのような大きな町だけでなく,小さな町にもすばらしい観光スポットが数多くあります。そこで出会う魅力的でもてなし上手な人々とのコミュニケーション手段として,あるいはもう一度行くための準備としてイタリア語を学び始める人もたくさんいます。

学習者の立場から見た最大の特徴は発音が容易なことでしょう。あいまいな音色の母音もなく,子音も特に難しいものはありません。それに加えて,リズミカルかつメロディアスで耳に心地よい話し方をするところがイタリア語らしいところです。

系統的にはフランス語やスペイン語と同じく,ラテン語から生じた「ロマンス諸語」のひとつです。ラテン語系の単語は英語に大量に流入していますから,意味が想像できるイタリア語の単語は少なくないでしょう。文法体系も複雑ではないので,全体として非常に学びやすい言語です。ただ,動詞の活用の種類が豊富で,これを覚えることが重要な学習項目になります。

細かい点ではやっかいな文法の約束事がいくつかありますが,そういうことも気にさせないほどの魅力を持つイタリア語は,フランス語やドイツ語とは違う経路で西洋文化にアクセスする良い手段となるでしょう。

日本語(留学生のみ選択することができる)

学部新入生の留学生の皆さんは、かなり高度な日本語運用能力をすでに身につけているはずです。しかし、日常生活においてはあまり問題がないとしても、大学における一連のアカデミックな活動を日本語母語話者である一般学生とともに行うためには、一層高度な日本語能力、すなわち「アカデミックなコミュニケーション能力」が求められます。例えば、教科書や文献を読む場合、文章全体の大意の把握や重要な情報の抽出を素早く行わねばならないこともあれば、細部にわたる詳細な読み込みが求められることもあります。また、レポートなどを書く場合、全体の構成、論理的な展開、論旨の明快さ、的確な表現等、多くのことに配慮せねばなりません。さらに、調査した結果をプレゼンテーションすることや、自分の意見を論理的に述べ、議論する能力も要求されます。大学における学習は、これらの日本語能力すべてが統合されて初めて達成できると言えます。

このような考え方に立ち、「総合日本語」と「専門日本語」という2種類の日本語科目が第2外国語として提供されます。日本語を使用して生活するだけでなく、日本語で専門分野やそれ以外の分野の幅広い知識や考え方を吸収していくために、アカデミックで高度な日本語能力をさらに向上させたいと希望する留学生のみなさんの受講を期待します。