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Varietaet

変種

言語は、その話し手の出身地や職業、あるいは発話の場面などの社会的・心理的条件によって極めて様々な表現形式を取る。この非均質な言語の中で、ある特定のメルクマールによって特徴付られ、且つ一つの体系を成した集合体を総称して変種と呼ぶ。

言語の非均質性については、既に古典古代から確認されており、ドイツ語の文献でも、アーデルング(Johann Christoph Adelung)やパウル(Hermann Paul)の著作物に変種に関する指摘が見いだせる。そして、1960年以降はチョムスキーの均質言語モデルに対する批判から、特に社会言語学者によってこの分野の研究が推し進められている。

これまで、変種という概念は多義的に用いられてきた。例えば、言語の非均質性は歴史的にも確認される。だが、この場合には変種ではなく、ヴァリエーション、もしくは可変性という用語を用いる方が適切である。また、舌先音のrと口蓋垂音のR、 KopfとHaupt等のように、差異を顕在化する各々の言語学上の要素や単位、もしくは規則自体を変種ということがある。しかし、その場合には、変異体もしくは変異形という方が一般的である。即ち、今日の社会言語学では、変種という用語は言語体系を示し、変異体はその内の各々の要素として理解されている。

いくつかの変異体が同じ変種に属するための条件は「共起性」である。即ち、同じ使用条件の下にある全ての変異体、もしくは同じ発話状況・筆記状況で用いられる全ての変異体があるひとつの変種に属する。その使用条件は極めて多様だが、大まかに分けると、次の5つに区別される。

(1) 公的な場面でその言語使用が正しいとされる国家の領域(国家標準変種)

(2) 話者の所属する地域(方言的変種=方言)

(3) 話者の個人的な言語行動様式(個人語的変種)  

(4) 話者の社会的な所属性(社会方言的変種)

(5) コミュニケーション状況の特異性(状況の変種=状況方言=スタイル)

各々の変種(比較的均質な言語体系)は、必ずしも上に挙げた4つのクラスに明確に分類されるわけではなく、むしろこれらのクラスの内の複数のクラスに分類されることの方が多い。例えば、はっきりとしたファルツ方言という変種は、クラス2(方言)に属すると同時に、クラス4(社会方言:地域的な下層)にも、クラス5(状況方言:くつろいだ状況)にも属する。またこれ以外にも、日常語の変種に含めることもできる。