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Soziolinguistik

社会言語学

言語と社会の相関関係を研究対象とする学問分野。

広義では言語学と社会学にまたがる学際的な学問分野として理解されるが、狭義では、言語を社会との関連の中で解明する言語学の一分野として理解される。この狭義の社会言語学に対応するのが言語社会学であり、こちらは社会学の一分野として、社会を言語との関連で解明しようとする分野と理解される。

社会言語学が対象とする言語と社会の相関関係は複雑である。そもそも社会的性格を備えた言語とそうでない言語とを区別することは困難であり、実際の社会で用いられていれば、いかなる言語現象も社会言語学の対象となり得る。また、社会という概念も多種多様な要因によって構成されており、これを特定化することはむずかしい。それゆえ、言語と社会に関する問題であれば、ほとんどすべて社会言語学の研究対象となり得る。社会言語学は1960年代の後半から1970年の前半にかけて著しく成長し発展した。その背景には、言語を社会的なコンテキストに依存させずに研究しようとする構造主義言語学やチョムスキー(N.Chomsky)の生成文法に対する批判と反省があった。当時、アメリカの社会言語学者達は、言語をすすんで社会的なコンテキストの中に取り戻そうとしたのであった。またヨーロッパでは、社会問題を解決しようという意識を持つ学生や研究者によってこの分野の研究が推進された。だが、それ以前にも言語と社会の相関関係を解明しようとする学問分野は存在しており、以下にそのなかでももっとも重要と思われる分野を挙げておこう。

1)遅くとも19世紀の末、言語層の問題、もしくは状況に依存した方言や標準変種の使用法の問題を取り扱った社会方言学。

2)1920年代に端を発する言語の標準語化、コード化、拡充の問題を手がけた言語文化研究。

3)言語構造と社会構造の相関関係、並びに言語学的相対性(サピア・ウォーフの仮説)の問題に従事した今世紀の初頭以来の文化人類学的言語研究。

4)1950年代、ワインライヒによって進められた言語接触の研究(ここでは、純粋な言語接触にとどまらない、言語の威信や使用領域などのアスペクトもとらえられている)。

これらの先駆的な研究が社会言語学というより一般的な用語のもとで、その後さらに展開した。以上の研究に加え、新たな問題設定がなされ、それらを研究するための方法論も精密化された。そして、以下のようなより新しい社会言語学の研究領域が開発された。

1)バーンスタインによって提唱された言語障壁理論。

2)制限コードとの類推で、方言の話し手が学校や職場で被る社会的な困難を問題にした方言社会学。

3)心理的な要因ばかりでなく、社会構造との関連をとらえようとするピジン、クレオールの研究。

4)言語変異を規則の中に取り入れることによって、言語の均質性を前提にしたモデルを克服しようとした変異言語学。(この変異言語学の枠組みにおいて、それまでの欠損仮説から差異仮説への移行がなされた。)

5)女性解放運動との関連で発展したフェミニズム言語学。

6)民族と国家と言語の問題を扱う言語的少数民族の研究。

7)特に社会的な要素と結びついた語用論的研究。

8)ハーバーマス(J.Habermas)の伝達能力やハイムズ(D.Hymes)のコミュニケーションの民族誌の研究。

9)言語変種や言語共同体に関する問題。特に変種については、方言、社会集団語、個人語、特殊語、レジスターなどの下位分類がある。

10)ある言語共同体における多言語併用や二重言語使用の問題。

11)言語の社会的地位に関する類型学。たとえば、ダイグロシアの問題、もしくは標準語、公用語、土着語等を規定する諸条件の問題について。

12)学校、役所、企業などの機関におけるコミュニケーションの形態やマスメディアにおけるコミュニケーションに関する問題。

13)言語、および言語使用におけるイデオロギー的な側面について。政治と言語あるいは政治言語の実態についての調査。

14)言語保存や言語操作などについて。

15) 言語計画、言語育成などの研究。

16)国際的な規模におけるコミュニケーションの問題について。たとえば、国際語や国際補助語について。