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Jugendsprache in Blog

ブログにみる若者言葉の表現スタイル

1.若者ことばの定義

 若者ことばとは、(米川 1998:p15)によると「中学生から三十歳前後の若い男女が仲間内で娯楽・会話促進・連帯・イメージ伝達・隠蔽・緩衝・浄化などのために使う、規範からの自由と遊びを特徴に持つ特有の語や言い回しである」と説明している。若者言葉の使用条件はおもに、第一に仲間内で使う。仲間内のことばは言い換えれば狭い範囲の言葉であり、気楽に話せるウチのことばである。第二に娯楽や会話促進のために使う。これは若者がその場その時を楽しく過ごそうとする会話の「ノリ」のために使用していることを意味する。第三にことばの規範からの自由と遊びという場合に使う。これは個人の自由を追い求めてきた産物である。中でも個人の自由をもっとも先鋭的に主張する若者は、服装・持ち物・考え方・行動など、従来の規範から自由になろうとするように、ことばにおいても自由に、勝手に新たに語を作り出し、新たな意味・用法で使っている。

2.若者ことばの心理的背景

 こうした若者ことばが発生する心理的背景がおもに3つ考えられる。(米川 2006:p20)によると、第一に、著しい身体的発達・変化によって他人の目が気になり、どう評価されているか敏感になるため、体に関することば、人を見た目で評価することばが若者ことばになってでてくる。第二に生青年期は自己を発見するアイデンティティ発見時代であるため、人と比較し、自己に対しても他者に対しても批判的に見ることが多くなり、若者ことばも人をマイナス評価することばが多くなってくる。第三に自我が芽生えるにつれて自己主張が強くなり、拘束を嫌い、自由を求めて親や教師などに反抗するようになる。さらにことばの規範からの自由をも求めて新語や勝手な意味・用法の語を作り出す。

3.若者ことばの言語構造

3.1 新語と若者ことば

 若者はことばの規範からの自由を求めて勝手な意味・用法の語を次々と作り出すが、若者が使うことばに、次のようなことばがある(いけてる、きショイ、キャラ、マジ、ダチ、ツアコン、ジベタリアン、ボディコン)。語彙だけではなく、若い女性によく見られる、疑問文でもないのに語末をあげるイントネーションー「半疑問」というものもある。

3.2 短縮語

 若者はよく単語を短縮する(例:こくる(<告白)、コピる(<コピー)、マクる(<マクドナルドに行く)、スタバる(<スターバックス)。例の「マクる」のように名詞の短縮形から派生した動詞は数多い。基本的に語頭二モーラを残して、それに「る」を付ける形である。きも(ち悪い)、きしょ(く悪)い、けば(けばし)い、めんど(うくさ)い、うっと(うし)い、などの形容詞にも短縮形が少なくない。この場合には、形容詞の二モーラに「い」を付ける。

4.日本のブログに見る若者ことばの特徴

4.1 絵文字の使用

 インターネットのブログサイトから筆者が調べたところ13歳から27歳までの男女それぞれランダムで5人ずつ計10人を調べたところ、若者が書くブログにはよく絵文字が使われることが明らかになった。例として♪や、(´・∀・`)、 や☆など絵文字が頻繁にブログに登場する。

4.2 英語の使用

 ブログによく見られる傾向の一つは英語から入ってきた言葉をよく使用することだ

 例として、キュート、ベリ、Catch、OKなど。

4.3 カタカナの使用

 ブログでは、ひらがなで書けるが、故意にカタカナで書かれている言葉が多く見られる

 例として、ウチ、僕チン、オススメなど。

4.4 その他の単語について

 例としてやばい、メッチャ、テンション、超大人、番宣、つぶれちゃうなど。

4.5 男女間・年齢に見えるブログの違い

 一般的に見て、女性のほうが、男性よりも絵文字を使う傾向にある。また年齢が上がればあがるほど、絵文字は使われなくなっている。そして年齢が上のほど、書き方がますます丁寧(ですます調)で書いている。

(文責: 執筆時 修士課程一年 中沢雄平)

参考文献:

米川明彦(1996)『若者言葉を科学する』明治書院

米川明彦(1998)『現代若者ことば考』丸亀ライブラリー

米川明彦(2006)『若者ことば研究序説』月刊言語2006年3月号

窪園晴夫(2006)『若者ことばの言語構造』月刊言語2006年3月号

窪園晴夫(2002)『新語はこうして作られる』岩波書店

井上逸兵(2006)『ネット社会の若者ことば』月刊言語2006年3月号