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Jugendsprache

若者言葉

青年期の若者に特徴的な言語。若者とは、一般的には20才代前半までのより幅広い年齢層が含まれる。青年期という概念は1762年、ルソー(Jean Jacques Rousseau)の『エミール』によって定式化された。現代の若者の特性をもっとも的確に示したのはエリクソン(Erik H. Erikson)のモラトリアムの概念である。エリクソンによれば、若者とは、社会的責任や義務から免除されているため、社会と一定の距離を置くことができ、社会的な遊びや自由な実験によって、成人の価値観を批判したり追従しながら新たなアイデンティティを獲得しようとする存在である。若者は独自の文化「若者文化」を形成し、その集合行動を通して卑小な自我からの脱出感と他者との一体感を感得する。その文化への所属性をもっとも顕著に表すのが若者言葉である。それ故、この言葉は、

1)仲間同士の連帯を深める。

2)成人の言葉、標準語を権威と見なし、それに対抗する。

3)成人に理解できない攻撃性や否定の要素を多く含む。

4)成人の価値観の表れである規範、常套句、文字性、丁寧さ、形式、秩序、順応、理論に用いられる言語に対立する。

5)オリジナリティーに富み、感情やその場の雰囲気を巧みに表現する。

6)メタファや誇張法を多く用い、奇抜な表現を創作する。

7)おどけていたり、なげやりであったり、嘲笑的であることが多い。

8)流行に敏感で自由に新しい表現を創造する。

9)語彙に乏しく、軽率で貧弱であると考えられている、等の特徴を持つ。

語彙のレベルでは、英語からの借用語、感情を表す不変化詞、短縮語、直接性、露骨さを表す語、或いは奇抜な合成語が多く用いられる。だが、より特徴的なのは、発話全体の構成にあり、特に呼称や挨拶表現に多くの変化に富む変異形が認められる。今後の若者言葉の研究は、若者のおかれた社会的な立場を考慮しながら、談話分析、社会心理、言語変遷等、様々な視点から捉えて行くべきであろう。