ドイツ語講座(初級文法編)第5回

 


 

1 動詞の現在人称変化(2)

1) a → ä 型の動詞

(^_^)  先生、こんにちは。 なんとか前回ならった定冠詞と不定冠詞、それに名詞の変化をどうにか覚えました。

それじゃあ、今日はまた動詞の方に戻ることにしよう。ドイツ語の動詞は語幹と語尾とに分けることができて、語幹の方は変わらず、語尾の方が主語の人称に応じて変化するということだったよね。ところが、語幹の方もちょっと変化する動詞があるんだ。

(@o@)  ええっ、語幹が変化するの?

うん。語幹の中にある母音のことを幹母音というんだけど、その幹母音が変化するんだよ。ただし、変化するのは親称2人称単数 (du) と3人称単数 (er, sie, es) のところの2カ所だけなんだ。

(~o~) そうか、2カ所だけか。ちょっと安心した。

しかも、変化のパターンも3種類だけなんだ。だからそのパターンを覚えて、どの動詞がどのパターンに属するか覚えておけば大丈夫だよ。ただし、どれもよく使う単語だから、しっかり覚えておいてね。まずは、幹母音 a がウムラウトして ä になる動詞だ。例で示してみるね。fahren (ファーレン)「(乗り物で)行く」、schlafen (シュラーフェン)「眠る」、laufen (ラウフェン)「走る」はこのパターンの動詞なんだ。だから人称変化は次のようになる。laufen だけ、発音にちょっと注意してね。変温すると、du läufst (ロイフスト)、er läuft (ロイフト)だね。

単数2、3人称で幹母音が a →ä と変音する動詞

fahren  「(乗り物で)行く」 schlafen 「眠る」 laufen 「走る」
     
ich fahre ich schlafe ich laufe
du fährst (フェーァスト) du schläfst (シュレーフスト) du läufst (ロイフスト)
er fährt (フェーァト) er schläft (シュレーフト) er läuft (ロイフト)
     
wir fahren wir schlafen wir laufen
ihr fahrt ihr schlaft ihr lauft
sie fahren sie schlafen sie laufen

 

(^o^)  なるほど、du と er のところで  a →ä と変わるんだね。他にはどんな動詞がこれにはいるの?

その他によく使うものでは、fallen (ファレン)「落ちる」、lassen (ラッセン)「〜させる」、tragen (トラーゲン)「運ぶ、身につけている」などがこのパターンだね。

 

2) e → i, ie 型の動詞

(^O^)  まずはとりあえず語幹に a がある動詞だけ注意しておけばいいんだね。

次にもう一つ、語幹に e があれば、同じように単数2人称(du)と単数3人称(er, sie, es)のときに、e が i または ie に変わる動詞があるんだ。まず、sprechen (シュプレッヒェン)「話す」、helfen (ヘルフェン)「助ける、手伝う」、essen (エッセン)「食べる」、geben (ゲーベン)「与える」は e が i に変わるんだよ。

単数2、3人称で幹母音が e →i となる動詞

sprechen 「話す」 helfen 「助ける」 essen 「食べる」 geben 「与える」
ich spreche ich helfe ich esse ich gebe
du sprichst (シュプリヒスト) du hilfst (ヒルフスト) du isst (イスト) du gibst (ギープスト)
er spricht (シュプリヒト) er hilft (ヒルフト) er isst (イスト) er gibt (ギープト)
wir sprechen wir helfen wir essen wir geben
ihr sprecht ihr helft ihr esst ihr gebt
sie sprechen sie helfen sie essen sie geben

 

('o') あれ、 essen のところの du isst と er isst が動詞の形が同じになってるけど。

おや、もう忘れたのかい。essen は語幹が -ss (ス)で終わっているから、そういう場合は主語 du のとき人称変化語尾は -st ではなく -t だけになるっていうのを第3回で話したよね。

(~o~)ゞ あっ、そうか。うっかり忘れてた。それから、geben のところの gibst やgibt は i のところを「イー」と長く読むの?

そうなんだ。普通は幹母音の e が短い「エ」のものが i になるんだけど、geben (ゲーベン)だけは例外で、長い e (エー)なのに i になるんだ。 ただ発音は du gibst (ギープスト)、er gibt (ギープト)と長く読むんだよ。本当は長い「エー」のものは ie になるんだ。その例を挙げるね。sehen (ゼーエン)「見る」、lesen (レーゼン)「読む」、empfehlen (エンプフェーレン)「勧める」なんかがそうなんだ。

単数2、3人称で幹母音が e →ie となる動詞

sehen 「見る」 lesen 「読む」 empfehlen 「勧める」
     
ich sehe ich lese ich empfehle
du siehst (ズィースト) du liest (リースト) du empfiehlst (エンプフィールスト)
er sieht (ズィート) er liest (リースト) er empfiehlt (エンプフィールト)
     
wir sehen wir lesen wir empfehlen
ihr seht ihr lest ihr empfehlt
sie sehen sie lesen sie empfehlen

 

(^o^) lesen が du liest, er liest となっているのは、さっきと同じで、語幹が s で終わっているからなんだね。

そうだよ。この e →ie 型の動詞はそんなに多くはないんだ。じゃあ、次にこれらの変形バージョンを見てみようか。

 

3) 注意を要する不規則動詞

次に挙げる動詞は上で述べた a → ä 型、e → i 型、e → ie 型 のいずれかの一種なんだけど、ちょっと注意を要する箇所があるんだ。halten (ハルテン)「保つ」、laden (ラーデン)「積む」、gelten (ゲルテン)「通用する」、treten (トレーテン)「踏む」、nehmen (ネーメン)「取る」の人称変化を見てみよう。

halten 「保つ」 laden 「積む」 gelten 「通用する」 treten 「踏む」 nehmen 「取る」
ich halte ich lade ich gelte ich trete ich nehme
du hältst (ヘルツト) du lädst (レーツト) du giltst (ギルツト) du trittst (トリッツト) du nimmst (ニムスト)
er hält (ヘるト) er lädt (レート) er gilt (ギルト) er tritt (トリット) er nimmt (ニムト)
wir halten wir laden wir gelten wir treten wir nehmen
ihr haltet ihr ladet ihr geltet ihr tretet ihr nehmt
sie halten sie laden sie gelten sie treten sie nehmen

 

(^_^) うーん、違いがあんまりよくわからないんだけど。

よく見てごらん。まず laden は a → ä 型の動詞なんだけど、語幹が t で終わっているので、du と er のところは口調の e が入って、それぞれ du hältest, er hältet になるはずだよね。ところが、du のところが口調の e が入らず、du hältst (ヘルツト)となり、er のところは語尾が付かずに er hält となるんだよ。laden, gelten も似たようなパターンなんだ。それから、treten は t が2つになってるし、nehmen は h が消えて m が2つになってるよね。

('o') ほんとだ。そう言われてみるとそうだね。

じゃあ、あと2つ、注意を要する不規則動詞の人称変化を覚えてもらおう。werden (ヴェーァデン)「〜になる」と wissen (ヴィッセン)「知っている」だよ。werden は e → i 型の一種なんだ。wissen はまったく別の種類のもので、1人称単数のときも特殊な形だけど、ここで一緒に覚えておいて。

werden 「なる」 wissen 「知っている」
   
ich werde ich weiß (ヴァイス)
du wirst (ヴィァスト) du weißt (ヴァイスト)
er wird (ヴィァト) er weiß (ヴァイス)
   
wir werden wir wissen
ihr werdet ihr wisst
sie werden sie wissen

(@o@) へえー、wissen なんか、ずいぶん変わった変化をするんだね。

そうだね。wissen は実は、後で出てくる話法の助動詞というものと似たパターンなんだ。それについてはまたそのときに話すことにするね。とりあえず、一般の動詞の現在人称変化で不規則なものは、これで終わりだよ。だからよく覚えておいてね。

 


 

2 命令形

1) 3つの命令形

それじゃあ、次は命令形の話だ。英語の命令形は動詞の原形と同じ形でよかったよね。ドイツ語の場合は命令形には3つの形があるんだ。

(@O@) ええっ、命令形が3つもあるの?

そうなんだ。なぜかというと、命令形というのは話し相手つまり2人称の相手に対するものなんだけど、英語の2人称は you だけだったのに対して、ドイツ語の2人称は du, ihr, Sie と3つあるので、それぞれに対する命令形があるんだよ。

('o') なるほど、ドイツ語は2人称が3つあるから命令形も3つあるのか。

そうなんだ。でも作り方はそれほど難しくないよ。

 

2) du に対する命令形


まず、du に対する命令形だ。原則は次の通りだよ。

du に対する命令形=語幹e (ただし e は省略されることも多い)

たとえば、sagen (ザーゲン)「言う」だったら、sage または e を省略して sag だね。

('O') 語尾の e は省略されることも多いというけど、どういう場合に省略されるの?

いい質問だね。まず、口語ではほとんどの場合、省略されるんだ。ただし、語幹が d, t などで終わる動詞の場合は語尾の e を省略できないんだよ。第3回で口調の e が入る動詞というのをやったよね。あれに該当する動詞がそうなんだ。たとえば、arbeiten (アルバイテン)「働く」だったら、du に対する命令形は arbeite で、arbeit とすることはできないんだよ。

(^_^) なるほど、語幹が d, t などで終わる動詞は語幹+e で、それ以外は語幹だけでもいいんだね。

一応そう考えていいね。でも実はもう少しあるんだ。-eln, ern で終わる動詞も語尾の e は省略できなくて、逆に語幹の e が省略されることが多いんだよ。とくに -eln で終わる動詞は必ずと言っていいほど語幹の e が省略されるんだ。たとえば、handeln (ハンデルン)「行動する」だったら、handle となるんだよ。

('_') ふーん、ちょっとややこしいね。

でも、これは慣れてくれば口調でなんとなくわかるようになるよ。重要なのは次の例外規則なんだ。それは、さっき単数2,3人称のところで e →i, ie と幹母音が変わる動詞が出てきたけど、この e →i, ie 型の動詞の du に対する命令形は、幹母音を  e →i, ie に変えて、語尾を付けないんだ。たとえば helfen や sehen, nehmen だと次のようになるんだよ。

helfen → du hilfst → du に対する命令形: hilf
sehen → du siehst → du に対する命令形: sieh 
nehmen → du nimmst → du に対する命令形: nimm

ついでに言うと、a → ä 型は命令形でも変音しないから、間違わないでね。

(T_T) ううっ、やっぱりややこしいよ〜。

まあ、残りの ihr と Sie に対する命令形は簡単だから、気を取り直してがんばろうよ。

 

3) ihr に対する命令形

ihr 「きみたち」に対する命令形は現在人称変化形と同じなんだ。つまり、

ihr に対する命令形=語幹 (ただし語幹が d, t などで終わるものは 語幹et

語幹が d, t などで終わるものは口調の e が入るので、語尾は et になるんだよ。だから、たとえば sagen とか arbeiten だったら、次のようになるね。

sagen → ihr sagt → ihr に対する命令形: sagt
arbeiten → ihr arbeitet → ihr に対する命令形: arbeitet

(^o^) なるほど、ihr の場合は命令形は現在人称変化形と同じだから、簡単だね。

そうだろう。Sie に対する命令形も簡単だよ。

 

4) Sie に対する命令形

Sie 「あなた、あなたたち」に対する命令形も現在人称形と同じなんだ。ただし、この場合だけ、主語 Sie を付けないといけないんだよ。つまり、

Sie に対する命令形=語幹en Sie (ただし不定詞が -n のものは 語幹n Sie) 

たとえば、sagen や handeln だと

sagen Sie sagen → Sie に対する命令形: sagen Sie
handelnSie handeln → Sie に対する命令形: handeln Sie

(^O^) うん、これも簡単だ。楽勝だね。

じゃあ、全部まとめてみようか。

動詞 du に対する命令形 ihr に対する命令形 Sie に対する命令形
sagen sag または sage sagt sagen Sie
arbeiten arbeite arbeitet arbeiten Sie
handeln handle handelt handeln Sie
helfen hilf helft helfen Sie

 

(^_^) なるほど、表にまとめてみると、なんとかわかりそうだ。

あと、sein は例外的で、命令形は次のようになるんだよ。

sein の命令形(du に対する) sei   : (ihr に対する) seid    : (Sie に対する) seien Sie

それから、werden は現在形は du wirst と変化するので e →i 型の動詞なんだけど,、du に対する命令形は werde なんだ。

 


 

 練習問題

さあ、それじゃあまた練習問題をやって終わりにしよう。

 

以下工事中

 


 

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