1) a → ä 型の動詞
それじゃあ、今日はまた動詞の方に戻ることにしよう。ドイツ語の動詞は語幹と語尾とに分けることができて、語幹の方は変わらず、語尾の方が主語の人称に応じて変化するということだったよね。ところが、語幹の方もちょっと変化する動詞があるんだ。
うん。語幹の中にある母音のことを幹母音というんだけど、その幹母音が変化するんだよ。ただし、変化するのは親称2人称単数 (du) と3人称単数 (er, sie, es) のところの2カ所だけなんだ。
しかも、変化のパターンも3種類だけなんだ。だからそのパターンを覚えて、どの動詞がどのパターンに属するか覚えておけば大丈夫だよ。ただし、どれもよく使う単語だから、しっかり覚えておいてね。まずは、幹母音 a がウムラウトして ä になる動詞だ。例で示してみるね。fahren (ファーレン)「(乗り物で)行く」、schlafen (シュラーフェン)「眠る」、laufen (ラウフェン)「走る」はこのパターンの動詞なんだ。だから人称変化は次のようになる。laufen だけ、発音にちょっと注意してね。変温すると、du läufst (ロイフスト)、er läuft (ロイフト)だね。 単数2、3人称で幹母音が a →ä と変音する動詞
その他によく使うものでは、fallen (ファレン)「落ちる」、lassen (ラッセン)「〜させる」、tragen (トラーゲン)「運ぶ、身につけている」などがこのパターンだね。
2) e → i, ie 型の動詞
次にもう一つ、語幹に e があれば、同じように単数2人称(du)と単数3人称(er, sie, es)のときに、e が i または ie に変わる動詞があるんだ。まず、sprechen (シュプレッヒェン)「話す」、helfen (ヘルフェン)「助ける、手伝う」、essen (エッセン)「食べる」、geben (ゲーベン)「与える」は e が i に変わるんだよ。 単数2、3人称で幹母音が e →i となる動詞
おや、もう忘れたのかい。essen は語幹が -ss (ス)で終わっているから、そういう場合は主語 du のとき人称変化語尾は -st ではなく -t だけになるっていうのを第3回で話したよね。
そうなんだ。普通は幹母音の e が短い「エ」のものが i になるんだけど、geben (ゲーベン)だけは例外で、長い e (エー)なのに i になるんだ。 ただ発音は du gibst (ギープスト)、er gibt (ギープト)と長く読むんだよ。本当は長い「エー」のものは ie になるんだ。その例を挙げるね。sehen (ゼーエン)「見る」、lesen (レーゼン)「読む」、empfehlen (エンプフェーレン)「勧める」なんかがそうなんだ。 単数2、3人称で幹母音が e →ie となる動詞
そうだよ。この e →ie 型の動詞はそんなに多くはないんだ。じゃあ、次にこれらの変形バージョンを見てみようか。
3) 注意を要する不規則動詞 次に挙げる動詞は上で述べた a → ä 型、e → i 型、e → ie 型 のいずれかの一種なんだけど、ちょっと注意を要する箇所があるんだ。halten (ハルテン)「保つ」、laden (ラーデン)「積む」、gelten (ゲルテン)「通用する」、treten (トレーテン)「踏む」、nehmen (ネーメン)「取る」の人称変化を見てみよう。
よく見てごらん。まず laden は a → ä 型の動詞なんだけど、語幹が t で終わっているので、du と er のところは口調の e が入って、それぞれ du hältest, er hältet になるはずだよね。ところが、du のところが口調の e が入らず、du hältst (ヘルツト)となり、er のところは語尾が付かずに er hält となるんだよ。laden, gelten も似たようなパターンなんだ。それから、treten は t が2つになってるし、nehmen は h が消えて m が2つになってるよね。
じゃあ、あと2つ、注意を要する不規則動詞の人称変化を覚えてもらおう。werden (ヴェーァデン)「〜になる」と wissen (ヴィッセン)「知っている」だよ。werden は e → i 型の一種なんだ。wissen はまったく別の種類のもので、1人称単数のときも特殊な形だけど、ここで一緒に覚えておいて。
そうだね。wissen は実は、後で出てくる話法の助動詞というものと似たパターンなんだ。それについてはまたそのときに話すことにするね。とりあえず、一般の動詞の現在人称変化で不規則なものは、これで終わりだよ。だからよく覚えておいてね。 |
1) 3つの命令形 それじゃあ、次は命令形の話だ。英語の命令形は動詞の原形と同じ形でよかったよね。ドイツ語の場合は命令形には3つの形があるんだ。
そうなんだ。なぜかというと、命令形というのは話し相手つまり2人称の相手に対するものなんだけど、英語の2人称は you だけだったのに対して、ドイツ語の2人称は du, ihr, Sie と3つあるので、それぞれに対する命令形があるんだよ。
そうなんだ。でも作り方はそれほど難しくないよ。
2) du に対する命令形
du に対する命令形=語幹+e (ただし e は省略されることも多い) たとえば、sagen (ザーゲン)「言う」だったら、sage または e を省略して sag だね。
いい質問だね。まず、口語ではほとんどの場合、省略されるんだ。ただし、語幹が d, t などで終わる動詞の場合は語尾の e を省略できないんだよ。第3回で口調の e が入る動詞というのをやったよね。あれに該当する動詞がそうなんだ。たとえば、arbeiten (アルバイテン)「働く」だったら、du に対する命令形は arbeite で、arbeit とすることはできないんだよ。
一応そう考えていいね。でも実はもう少しあるんだ。-eln, ern で終わる動詞も語尾の e は省略できなくて、逆に語幹の e が省略されることが多いんだよ。とくに -eln で終わる動詞は必ずと言っていいほど語幹の e が省略されるんだ。たとえば、handeln (ハンデルン)「行動する」だったら、handle となるんだよ。
でも、これは慣れてくれば口調でなんとなくわかるようになるよ。重要なのは次の例外規則なんだ。それは、さっき単数2,3人称のところで e →i, ie と幹母音が変わる動詞が出てきたけど、この e →i, ie 型の動詞の du に対する命令形は、幹母音を e →i, ie に変えて、語尾を付けないんだ。たとえば helfen や sehen, nehmen だと次のようになるんだよ。 helfen → du hilfst
→ du に対する命令形: hilf ついでに言うと、a → ä 型は命令形でも変音しないから、間違わないでね。
まあ、残りの ihr と Sie に対する命令形は簡単だから、気を取り直してがんばろうよ。
3) ihr に対する命令形 ihr 「きみたち」に対する命令形は現在人称変化形と同じなんだ。つまり、 ihr に対する命令形=語幹+t (ただし語幹が d, t などで終わるものは 語幹+et) 語幹が d, t などで終わるものは口調の e が入るので、語尾は et になるんだよ。だから、たとえば sagen とか arbeiten だったら、次のようになるね。 sagen → ihr sagt
→ ihr に対する命令形: sagt
そうだろう。Sie に対する命令形も簡単だよ。
4) Sie に対する命令形 Sie 「あなた、あなたたち」に対する命令形も現在人称形と同じなんだ。ただし、この場合だけ、主語 Sie を付けないといけないんだよ。つまり、 Sie に対する命令形=語幹+en Sie (ただし不定詞が -n のものは 語幹+n Sie) たとえば、sagen や handeln だと sagen →
Sie sagen → Sie に対する命令形:
sagen Sie
じゃあ、全部まとめてみようか。
あと、sein は例外的で、命令形は次のようになるんだよ。 sein の命令形: (du に対する) sei : (ihr に対する) seid : (Sie に対する) seien Sie それから、werden は現在形は du wirst と変化するので e →i 型の動詞なんだけど,、du に対する命令形は werde なんだ。 |
さあ、それじゃあまた練習問題をやって終わりにしよう。
以下工事中 |