ドイツ語講座(初級文法編)第3回

 


 

1 動詞の現在人称変化(1)

1) 人称代名詞

(^o^)  先生、こんにちは。 ぼく、あれからドイツリートの歌詞をいくつか辞書で発音だけ調べて、CDで歌を聴いて、発音練習しました。そしたら、発音についてはだいぶわかってきたよ。

それはいいやり方だね。実際に文章を発音してみるということが大事だね。じゃあ、いよいよ強から文法事項に入るよ。まずは動詞の現在人称変化だ。第1回の授業で、現在人称変化というのは、動詞や助動詞が主語の人称と数に応じて語形が変化すること、と説明したよね。でもその説明の前に、まずドイツ語の人称代名詞を覚えてしまうことにしよう。ドイツ語の人称代名詞には次のようなものがあるんだ。発音も練習してみてね。

単数:  ich (イッヒ)「私は」(英:I)  du (ドゥー)「きみは」(英:you)  er (エァ)「彼は」(英:he)  sie (ズィー)「彼女は」(英:she)  es (エス)「それは」(英:it)

複数:  wir (ヴィーァ)「私たちは」(英:we)  ihr (イーァ)「きみたちは」  sie (ズィー)「彼ら、彼女ら、それらは」(英:they)

敬称2人称: Sie (ズィー)「あなた、あなたたちは」(英:you)

('o')  先生、敬称2人称ってなんですか。それに英語の you に相当するのが du, ihr, Sie と三つもあるようだけど。

そうだね。たしかに英語だと2人称は全部 you で澄むのに、ドイツ語だと三つもあるからややこしいね。まず、ドイツ語の2人称には親称と敬称の二種類があるんだ。

親称2人称(単数 du, 複数 ihr): 親子、兄弟、子供、友だち、神様など、親しい間柄で使う。
敬称2人称(単数複数とも Sie): それ以外の間柄で使う。

敬称2人称の Sie は頭文字を常に大文字で書くんだ。逆に1人称単数の ich は文頭以外では小文字で書くんだよ。これは英語と大きく違う点だね。あと、3人称単数の sie 「彼女は」と3人称複数の sie 「彼ら、彼女ら、それらは」はどちらも同じ形だから、ちょっと紛らわしいね。敬称2人称も Sie だから、注意が必要だよ。とりあえず、以上の人称代名詞を何度も発音して覚えてね。イッヒ・ドゥー・エァ・ズイー・エス。ヴィーァ・イーァ・ズィー、ズィー、だよ。何度か口に出して言ってみて。

(^o^)  イッヒ・ドゥー・エァ・ズイー・エス。ヴィーァ・イーァ・ズィー、ズィー。イッヒ・ドゥー・エァ・ズィー・エス。ヴィーァ・イーァ・ズィー、ズィー。イッヒ・ドゥー・エァ・ズィー・エス。ヴィーァ・イーァ・ズィー、ズィー。うーん、なんとかがんばって覚えるよ。

 

2) 不定詞と人称変化語尾

それじゃあ、動詞の話にはいるね。まず、ドイツ語では動詞の元の形、つまり英語で言う原形のことを「不定詞」と言うんだ。辞書に載っている動詞は不定詞の形で載っているんだよ。で、不定詞は必ず語尾が -en か -n で終わってるんだ。ほとんどの動詞は -en だけどね。不定詞から -en あるいは -n の語尾を取った残りが語幹と呼ばれる部分なんだ。図式で表すと次のようになるよ。

不定詞=語幹+語尾(en または n)

このうち、語幹の部分は原則として変わらなくて、語尾の部分が主語の人称に応じて変化するんだ。その基本パターンを例で示すね。英語の come 「来る」に相当するドイツ語の動詞は kommen (コメン)なんだけど、語幹は komm- で、語尾が -en だよね。そうすると現在人称変化は次のようになるんだ。

kommen (コメン)「来る」 語幹 komm- +語尾 -en

ich  komme (イッヒ コメ) 「私は来る」
du  kommst (ドゥー コムスト) 「きみは来る」
er       (エァ コムト) 「彼は来る」
sie  kommt (ズィー コムト) 「彼女は来る」
es        (エス コムト) 「それは来る」

wir  kommen (ヴィーァ コメン) 「私たちは来る」
ihr  kommt  (イーァ コムト) 「君たちは来る」
sie  kommen (ズィー コメン) 「彼ら、彼女ら、それらは来る」

Sie  kommen (ズィー コメン) 「あなた、あなたたちは来る」

この主語の数と人称に応じて変化した語尾を人称変化語尾というんだけど、それだけみると、e, st, t, en, t, en, en となっているよね。なお、敬称2人称は歴史的には複数3人称の sie を大文字書きしてできたものなので、動詞の人称変化形は必ず複数3人称と同じ形になるんだ。だからそれを省略すれば、e, st, t, en, t, en 「エ、スト、ト、エン、ト、エン」または「エストテンテン」という覚え方もあるんだよ。

(~_~) ふーん、「エストテンテン」ねえ。

これが動詞の人称変化のすべての基本になるから、しっかり覚えといてね。ついでに、主語に応じて人称変化した動詞の形を「定動詞」というんだ。逆に言えば、不定詞は主語が何になるか決まってないから、動詞の形が定まっていないので、不定詞というんだよ。定動詞は図式で表すと次のようになるね。

定動詞=語幹+人称変化語尾

じゃあ、次の動詞を同じように人称変化させてごらん。3人称単数は主語は er で代表させていいし、敬称2人称は動詞の変化形が複数3人称と同形だから省略して、ich, du, er, wir, ihr sie に対する変化形を書いてみて。

1) lernen (レルネン)「学ぶ」   2) singen (ズィンゲン)「歌う」

(^o^) じゃあ、やってみます。
1)  ich lerne   du lernst   er lernt   wir lernen   ihr lernt   sie lernen
2)  ich singe   du singst   er singt   wir singen   ihr singt   sie singen

はい、正解です。

 


 

2 口調上の例外

1) 語幹が d, t などで終わる動詞の場合 (口調の e がはいるもの)

(^_^) 意外と簡単だね。これなら楽勝だ。

おっと、安心するのはまだ早いよ。これにはいくつか例外もあって、その変形バージョンをまず3つほど覚えてもらおうか。まず最初は、

語幹が d, t などで終わる動詞の場合は、親称2人称単数複数、3人称単数のときに、口調の e と呼ばれるものが語尾の前に入る。

例で説明するね。英語の find 「見つける」に当たるドイツ語の動詞は finden なんだけど、これは語幹が find- で d で終わっているから、現在人称変化は次のようになるんだ。

finden  (フィンデン) 「見つける」 語幹 find- +語尾 -en

ich finde   (イッヒ フィンデ) 「私は見つける」
du findest   (ドゥー フィンデスト) 「きみは見つける」
er findet   (エァ フィンデット) 「彼は見つける」

wir finden   (ヴィーァ フィンデン) 「私たちは見つける」
ihr findet    (イーァ フィンデット) 「きみたちは見つける」
sie finden   (ズィー フィンデン) 「彼ら、彼女ら、それらは見つける」

赤で示したのが口調の e だよ。これはたとえば、findst (フィンドスト)とかfindt(フィンドト)とかだと言いにくいので、言いやすくするために間に e を入れたんだよ。上の表を見ればわかると思うけど、これで語幹の直後にすべて e がきてるよね。だから、語尾の e のないところ(-st, t)に口調の e が入るんだよ。じゃあ、arbeiten (ルバイテン)「働く」という動詞を同じように現在人称変化させてごらん。

(^o^) じゃあ、やってみます。これは語幹が t で終わっているから、
ich arbeite   du arbeitest   er arbeitet   wir arbeiten   ihr arbeitet   sie arbeiten

うん、それでいいよ。ついでに arbeiten は日本語の「アルバイトする」という意味ではなくて、英語の work と同じで、普通に「働く」という意味だから、注意してね。

('o') 先生、このパターンは語幹が d と t で終わるものだけ注意すればいいの?

そうだね。とりあえずは d, t だけ念頭においておけばいいと思う。でも実はまだあるんだよ。たとえば、bn, chn, ckn, dm, dn, ffn, gn, tm なんかだね。もうちょっと公式的な言い方をすれば、語幹が l, r 以外の子音+m, n で終わる動詞のときもこのパターンになるんだ。一つだけ例を挙げておくね。begegnen (ベゲーグネン)「〜に出会う」という動詞は語幹が gn で終わってる動詞で、現在人称変化は次のようになる。アクセントが第2音節の「ゲー」のところにあるから発音ちょっと注意してね。
ich begegne   du begegnest   er begegnet   wir begegnen   ihr begegnet   sie begegnen

('_') ちょっとややこしくて覚えられそうにないんだけど。

d, t 以外のケースはそんなに多くないから、出てきたときに覚えるといいよ。それに慣れてきたら口調でなんとなくわかるようになるんだ。だからそんなに心配しなくていいと思うよ。

 

2) 語幹が歯音「ス、ツ、ズ」(s, ß, z, x)で終わる動詞

(^_^) それを聞いて安心しました。じゃあとりあえずは語幹が d, t で終わるものに注意すればいいんだね。

そうだよ。でも、実際にたくさんのドイツ語を口に出して読んでみて、語感を身につけるということが大事だね。そうすれば頭じゃなくて体で覚えられるようになるから。じゃあ、次のパターンに行くよ。

語幹が歯音「ス、ツ、ズ」(s, ß, z, x) で終わる動詞は親称単数2人称(du)のときの語尾が -t になる。

親称単数2人称のときの動詞の人称変化語尾は -st なんだけど、語幹が歯音「ス、ツ、ズ」(s, ß, z, x)で終わる動詞の場合は、-st の s が語幹末の歯音に吸収されてしまって、-t だけになるんだよ。じゃあ、例を見てみるね。reisen (ライゼン)という動詞は「旅する」という意味なんだけど、語幹が s で終わっているから、現在人称変化は次のようになるんだよ。

reisen (ライゼン) 「旅する」 語幹 reis- + 語尾 -en

ich  reise  (イッヒ ライゼ) 「私は旅する」
du  reist  (ドゥー ライスト) 「きみは旅する」
er  reist  (エァ ライスト) 「彼は旅する」

wir  reisen  (ヴィーァ ライゼン) 「私たちは旅する」
du  reist  (ドゥー ライスト) 「きみたちは旅する」
sie  reisen  (ズィー ライゼン) 「彼ら、彼女ら、それらは旅する」

s の部分はあとが母音か子音かでにごったりにごらなかったりするから注意してね。

('o') あれ、でも先生、du のところは reist で語尾は -st になってるよ。

ちょっとまってよ。reisen は語幹が reis- だから、その s は語尾じゃなくて、語幹の s なんだよ。つまり、語幹 reis- + 語尾 -t なんだ。

(^o^)ゞ あ、そうか。規則通りに語尾に -st をつけると reisst になっちゃうんだね。

そうだよ。「ライススト」なんて言いにくいでしょ。だから語尾の s が消えちゃうんだよ。じゃあ、sitzen (ズィッツェン)「座っている」という動詞を同じように現在人称変化させてごらん。

(^O^) これは英語の sit に相当する単語だよね。えーと、語幹が -tz で「ツ」の音で終わってるから、
ich sitze   du sitzt   er sitzt   wir sitzen   ihr sitzt   sie sitzen

はい、よくできました。じゃあ、口調上の例外の最後のパターンに行くね。

 

3) 不定詞が -eln で終わる動詞

(^_^) いよいよ最後のパターンか。でもやっぱり覚えるの大変だな〜。

そうだね。さっきも言ったけど、頭で覚えようとしてもだめだよ。何回も口に出していったり、練習問題をやったりして、体で覚えなきゃ。野球の選手が何千回も素振りをやったり、バレーボールの選手がレシーブの練習をしたりするのといっしょだよ。口調上の例外最後のパターンは、不定詞が -eln で終わる動詞なんだ。ほとんどの動詞は不定詞語尾は -en なんだけど、-n だけのものもあるという話を前にしたよね。その中でも -eln で終わる動詞があるんだ。それで、

不定詞が -eln で終わる動詞は、1人称単数(ich)のとき l の前の e が消える。また1人称複数(wir)と3人称複数(sie)のときは語尾が -n だけで、不定詞と同じ形になる。

言葉による説明だけではわかりにくいと思うので、lächeln (レッヒェルン)「ほほえむ」という動詞を例にとって説明するね。

lächeln (レッヒェルン) 「ほほえむ」 語幹 lächel- +語尾 -n

ich  lächle  (イッヒ レッヒレ) 「私はほほえむ」
du  lächelst  (ドゥー レッヒェルスト) 「きみはほほえむ」
er  lächelt  (エァ レッヒェルト) 「彼はほほえむ」

wir  lächeln  (ヴィーァ レッヒェルン) 「私たちはほほえむ」
ihr  lächelt  (イーァ レッヒェルト) 「きみたちはほほえむ」
sie  lächeln  (ズィー レッヒェルン) 「彼ら、彼女ら、それらはほほえむ」

lächeln は語幹が lächel- だから、原則通りだと主語が ich のときは ich lächele なんだけど、l の前の e が省略されて、ich lächle となっちゃうんだよ。これは「イッヒ レッヒェレ」とちょっと言いにくいからなんだ。それから wir と sie のところも、原則通りだと wir lächelen,  sie lächelen となるはずなんだけど、不定詞と同じく語尾は -n だけで、wir lächeln,  sie lächeln となるんだよ。じゃあ、angeln (アンゲルン)「釣りをする」という動詞で、同じように現在人称変化を言ってごらん。

(^o^) 釣りはぼくも好きなんだ。じゃあ、やってみるね。
 ich angle   du angelst   er angelt   wir angeln   ihr angelt   sie angeln

はい、正解です。

 


 

3 とくに重要な不規則動詞

1) sein

(^o^) ほかにも例外はあるの?

うん、そうだよ。今回はとくに重要な不規則動詞を2つ覚えてもらうよ。まずは英語の be 動詞に当たる sein (ザイン)だ。これはかなり不規則な現在人称変化をするから、何度も口に出して覚えてね。

sein (ザイン) 「〜である」 (英:be 動詞) 語幹 sei- +語尾 -n

ich  bin  (イッヒ ビン) 「私は〜です」
du  bist  (ドゥー ビスト) 「きみは〜です」
er  ist  (エァ イスト) 「彼は〜です」

wir  sind  (ヴィーァ ズィント) 「私たちは〜です」
ihr  seid  (イーァ ザイト) 「きみたちは〜です」
sie  sind  (ズィー ズィント) 「彼ら、彼女ら、それらは〜です」

発音もちょっと注意してね。sind, seid, sind の最後の d はにごらないで「ト」だからね。

(@_@) ひえ〜、ずいぶん不規則なんだね。

うん、よく使われるものほど不規則なんだよ。英語の be 動詞だって、am, are, is というふうに、かなり不規則だったでしょ。

 

2) haben

じゃあ、次は英語の have に当たる haben だ。

haben (ハーベン) 「〜を持っている」 (英:have) 語幹 hab- +語尾 -en

ich  habe  (イッヒ ハーベ) 「私は持っている」
du  hast  (ドゥー ハスト) 「きみは持っている」
er  hat  (エァ ハット) 「彼は持っている」

wir  haben  (ヴィーァ ハーベン) 「私たちは持っている」
ihr  habt  (イーァ ハープト) 「きみたちは持っている」
sie  haben  (ズィー ハーベン) 「彼ら、彼女ら、それらは持っている」

これは親称2人称単数(du)と3人称単数(er)のところが不規則で、原則通りだと、du habst,  er habt となるはずなんだけど、b が消えてしまって、du hast,  er hat となってるんだね。あとは発音なんだけど、親称複数2人称(ihr)の habt の b はにごらないんだ。だから発音は「ハープト」だよ。

(^_^) うん、発音はしっかり確認した方がよさそうだね。

それじゃあ、最後に語順の原則をちょっとやっておこう。

 


 

4 定動詞の位置(1)

1) 定動詞第2位の原則

(^O^) 先生、語順って英語の5文型みたいなやつですか?

いや、ちょっと違うんだよ。ドイツ語の場合は英語よりも語順は自由なんだ。ただし、定動詞の位置はけっこう厳しい規則があるんだよ。その中でも最も重要なのが、定動詞第二位の原則というものなんだ。定動詞というのは、前にも話したけど、主語に応じて人称変化した動詞のことだね。

定動詞第2位の原則: 主文では定動詞は2番目の位置にくる。

じゃあ、例を見てみよう。「私は今日ドイツ語を学びます。」をドイツ語で書いてみるよ。単語は次の通りだね。 ich (イッヒ)「私は」  heute (ホイテ)「今日」  Deutsch (ドイチュ)「ドイツ語」  lernen (レルネン)「学ぶ」。主語が ich のときは lernen は lerne と人称変化するよね。それで定動詞を2番目の位置において並べてみるよ。

Ich lerne heute Deutsch. (イッヒ レルネ ホイテ ドイチュ) 「私は今日ドイツ語を学びます」

これでいいんだよ。ただし、heute 「今日は」とか、Deutsch 「ドイツ語を」というのを最初に持ってくることもできるんだ。その場合でも、定動詞は2番目に置かないといけないんだよ。そうすると主語はその後に置かないとしょうがないんだ。

Heute lerne ich Deutsch. (ホイテ レルネ イッヒ ドイチュ) 「今日は私はドイツ語を学びます」
Deutsch lerne ich heute. (ドイチュ レルネ イッヒ ホイテ) 「ドイツ語を私は今日学びます」

('O') なるほど、そうか。英語だったら、動詞は必ず主語のあとだよね。じゃあ先生、定動詞を文頭に置くと間違いなんだね。

普通は間違いだね。だけど、定動詞を文頭におく場合もあるんだよ。

 

2) 定動詞倒置

定動詞を文頭に置くことを「定動詞倒置」ということもあるんだ。疑問詞のない疑問文、つまり、はい、いいえ、で答えられる決定疑問文では、定動詞を文頭に置くんだよ。たとえば次の文を見てごらん。

Lernen Sie heute Deutsch? (レルネン ズィー ホイテ ドイチュ)

Sie は文頭でもないのに大文字になってるから、これは敬称2人称「あなた、あなたたち」だね。定動詞が文頭にあるから、決定疑問文となって、「あなた(たち)は今日ドイツ語を学びますか?」という意味の文になるんだよ。

('o') ふーん、英語だったら Do you learn German today? というふうに、助動詞 do を使うけど、ドイツ語は動詞をそのまま文頭に置けばいいんだね。

そうだよ。その点は英語より簡単でしょ。疑問詞があれば、疑問詞を文頭に置いて、次に定動詞が来るから、疑問詞のある疑問文では定動詞第2位の原則に従うことになるよね。じゃあ、疑問詞 was (ヴァス)「何を」と疑問詞 wann (ヴァン)「いつ」、それに疑問詞 wo (ヴォー)「どこで」を使った疑問文を書いてみるね。

Was lernen Sie heute? (ヴァス レルネン ズィー ホイテ) 「あなたは今日何を学びますか?」
Wann lernen Sie Deutsch? (ヴァン レルネン ズィー ドイチュ) 「あなたはいつドイツ語を学びますか?」
Wo lernen Sie heute Detusch? (ヴォー レルネン ズィー ホイテ ドイチュ) 「あなたは今日どこでドイツ語を学びますか?」

(^o^) そうか、疑問詞のない疑問文のときは定動詞が文頭で、疑問詞のある疑問文は、疑問詞+定動詞+主語、という語順にするといいんだね。

そうだね。定動詞を文頭に置くのは、疑問詞のない疑問文以外にも、命令文、wenn の省略された文、doch などが入った強調文などの場合もあるけど、これらはまた後の課で出てきたときに説明するね。それともう一つ、定動詞を文末に置く場合もあるんだ。これもまた後の課で説明するけど、ドイツ語の文では、定動詞の位置は、第2位、文頭、文末、と三つのケースがあるんだよ。とりあえずそれだけ頭に入れておけばいい。

('o') 先生、定動詞以外のものの語順はまったく自由でいいんですか。たとえば主語を文末に置いて、Heute lerne Deutsch ich. なんて書いてもいいの?

残念ながら、それはだめだね。主語は文頭以外だったら原則として定動詞の直後だよ。とくに主語が代名詞の場合はね。ただし、主語が長くて他の成分が短かったりしたら、主語が後に来るケースもあるんだ。それもまた出てきたときに説明するよ。とりあえず普通の文では主語は文頭か、もしくは定動詞の直後にくるのが原則だと考えておくといいね。

('o') じゃあ、目的語はどうなの?さっきの例文で、Ich lerne heute Deutsch. てあったけど、英語だと I learn German today. だから、Ich lerne Deutsch heute. でなくていいの?

それはいい質問だね。答えを先に言えば、Ich lerne Deutsch heute. という語順の文は、間違いじゃないんだけど、ちょっと不自然なんだ。実はドイツ語では定動詞と結びつきの強い成分は文末にくるという原則があるんだよ。lernen という動詞は他動詞で、「〜を学ぶ」という意味だから、何を学ぶかという目的語を必要とするんだ。だからこの場合は「ドイツ語を学ぶ」ということで、Deutsch が動詞 lernen と強く結びついてるんだね。それで Deutsch を文末においた方が自然なんだよ。この文末という位置はドイツ語の語順ではすごく大事なんだ。だからちょっと注意が必要だね。じゃあ、今日はあと練習問題をちょっとやって終わりにしよう。

 


 

 練習問題

次のドイツ語を日本語に、日本語をドイツ語に訳しなさい。

1) Sie spielt morgen Tennis. (ズィー シュピールト モルゲン テニス)

('o') 先生、spielt が辞書に載ってないんだけど。

うん、動詞は辞書には不定詞の形で載ってるんだ。ところが spielt は人称変化した形だから、不定詞の形に戻して引かないといけないよね。

(^o^)ゞ あっ、そうか。最後の -t が人称変化語尾だから、不定詞の語尾 -en にすると、不定詞は spielen (シュピーレン)「遊ぶ、プレイする」だね。sie は「彼ら」で、Morgen は「朝」で、Tennis は「テニス」だから、答えは「彼らは朝テニスをする」です。

うーん、ちょっと注意が足りないね。まず、sie は「彼らは」という意味のほかに「彼女は」という意味があるよね。さらに大文字だと Sie 「あなた、あなたたちは」の意味も考えられるね。ところがこの場合は、動詞の人称変化語尾が -t となってるでしょ。だから主語は3人称単数の「彼女は」ということになるんだ。もし「彼らは」だったら定動詞は spielen でないといけないよね。

(~_~) いけない、そうだったね。sie には注意が必要だったんだ。じゃあ、「彼女は朝テニスをします」でいい?

もう一つ間違いがあるよ。Morgen と morgen を区別しなきゃ。大文字で始まる Morgen の方は名詞で「朝」という意味だけど、小文字の morgen の方は副詞で「明日」(英:tomorrow)という意味なんだよ。間違いやすいから気を付けてね。ついでに morgens という単語もあって、これは副詞で「朝に」という意味だね。

(^O^) そうか、辞書も注意して見なきゃいけないんだね。それじゃあ答えは、「彼女は明日テニスをします」だね。でも、明日のことをいうのに未来形にしなくていいの?

うん、ドイツ語では未来のことでも、ある程度確実なこととして断言するのであれば、現在形で言っていいんだよ。じゃあ次ね。

2) Was machen Sie jetzt? (ヴァス マッヘン ズィー イェッツト)
   − Ich wechsle Geld. (イッヒ ヴェクスレ ゲルト)

(~_~) えーと、machen は「する」で、Sie は文頭でもないのに大文字になってるから敬称2人称で「あなた、あなたたち」だね。答えの方が ich 「私は」になってるから、「あなた」だね。jetzt は「今」だから、最初の文は「あなたは今何をしますか」です。

ちょっと待って。「あなたは今何をしますか」というのは日本語としてちょっと不自然だね。「あなたは今何をしているのですか」とでも訳した方がいいよ。

('o') えっ、でもそれだったら現在進行形になるんじゃないの?

ごめん、説明するの忘れてたね。ドイツ語には現在進行形はないので、現在進行中のことも現在形で表すんだよ。

(^_^) へぇー、ドイツ語には進行形がないのか。ちょっと不便だけど、その分覚えるのが少なくて助かるな。じゃあ、次の文は、えーと、wechsle は wechseln 「交換する」だね。-eln で終わる動詞だから、主語 ich のとき l の前の e が抜けてるんだね。次の Geld は「お金」だから、「私はお金を両替しています」かな。

はい、正解です。じゃあ次。

3) Was trinkt ihr gern? (ヴァス トリンクト イーァ ゲルン)
  
−Wir trinken gern Wein. (ヴィーァ トリンケン ゲルン ヴァイン)

(^o^) これは簡単だね。was は「何」、trinkt は不定詞が trinken で「飲む」、ihr は「きみたち」で、gern は副詞で「好んで」だから、「きみたちは何を好んで飲むか」です。

うーん、間違いとは言わないけど、日本語としてちょっと不自然だね。gern はたしかに「好んで」という意味だけど、この場合は「〜するのが好きだ」と訳す場合が多いんだ。だから「きみたちは何を飲むのが好きかい」とでも訳すといいよ。それでも日本語としてちょっと不自然だと思うんだったら、もうちょっと意訳して「君たちは飲み物は何が好きかい」とでも訳したらどうだろう。

(~_~) うーん、ぼくもちょっと不自然な日本語だとは思ったんだけど。じゃあ、次の文は「ぼくたちはワインを飲むのが好きです」でいい?

うん、そんなもんでいいよ。じゃあ、次は和文独訳の問題だ。

4) きみはダンスが好きかい。−うん、ぼくはダンスが好きだよ。(tanzen, gern, ja)

(^O^) あ、今出てきた gern 「〜するのが好きだ」を使うんだね。最初のは決定疑問文だから、定動詞を最初に持ってくるんだよね。tanzen (タンツェン)は語幹が z で終わってるから、主語が du のときに語尾は t だけだったな。そうすると、えーと、
Tanzt du gern? (タンツト ドゥー ゲルン)
−Ja, ich tanze gern. (ヤー、 イッヒ タンツェ ゲルン)

うん、それで正解だよ。

('o') 先生、英語だとこういう場合、答えは Yes, I do. という言い方するけど、ドイツ語ではそれに対応する言い方はないの?

残念ながらないんだ。だからドイツ語の場合は ja 「はい」、 nein 「いいえ」 だけで止めておくか、完全な文を続けるかどちらかなんだよ。じゃあ最後の問題だ。

5) 彼はどこで待っているの?−あそこで彼は待っているよ。(wo, warten, dort)

(^_^) これは何とかできそうだ。まず、最初の文は wo 「どこで」という疑問詞を最初に持ってくるんだよね。次が定動詞で、warten は語幹が t で終わっているから、主語 er のときは語尾に口調の e がはいって、wartet だね。次の文は dort 「あそこで」を文頭に置くと、定動詞第2位の原則で、その次が定動詞だから、
Wo wartet er? (ヴォー ヴァルテット エァ)
−Dort wartet er. (ドルト ヴァルテット エァ)

はい、よくできました。

 


 

目次に戻る