1) 使用地域
いい質問だね。それじゃあ、ドイツ語の使用地域の話から始めようか。まず、ドイツ語だから当然ドイツでは話されてるよね。でもその他にも、ドイツのお隣の国のオーストリアとスイスでも話されてるんだよ。ドイツ、オーストリア、スイスの三つがドイツ語の話されている主な国だね。スイスではドイツ語の他に地域によってフランス語とかイタリア語、それにレトロマン語というのが話されてるんだけど、ドイツ語人口が一番多いんだ。あとは、スイスとオーストリアの間にリヒテンシュタインという小さな国があって、そこでも話されてるんだよ。
フランス語が東南アジアとかアフリカなんかで話されてるのは、旧植民地の関係があるんだ。ドイツはあまり植民地を持ってなかったし、それに世界大戦で敗戦して、それまで持ってた植民地も放棄しちゃったからね。ただ、かつてドイツ領だったことのある東ヨーロッパの一部とか、フランス北東部のアルザス地方とか、ドイツ語がしゃべられてたり通じたりする地域はあるんだよ。ドイツの隣のベルギーやルクセンブルクでもドイツ語は公用語になってるんだ。ドイツ語を母語としているひとは1億人弱ぐらいと言われていて、日本語よりはちょっと少ないけど、それでもドイツ語の使用人口は世界の言語の中では かなり上位なんだ。
うん、そうだね。でも残念ながら今は医学でも、論文なんかはほとんど英語で書かれるようになってるんだ。日本では明治以降、戦前まではドイツ語は学問の言語という感じで勉強されてきたんだけど、それはほとんど英語になってしまってるね。
そんなことはないよ。もちろん一般的には英語ほど重要とはいえないだろうけどね。でも今ヨーロッパはヨーロッパ連合(EU)として一つになろうとして、通貨もユーロという共通の通貨が導入されてるんだ。 だからこれからEUが世界の中で占める地位はますます高まってくると思うよ。そしてこのEU諸国の中では英語はむしろマイナーで、ドイツ語を母語としている人が一番多いんだよ。 そんなわけで、ドイツ語の重要性もこれから増してくると思うんだ。
確かに、普通の人にとってドイツ語ができなくても困ることはないだろうね。旅行とかでドイツへ行っても、ホテルとかレストランとかお土産屋さんとかでは英語もだいたい通じるし。でも、使えなくても困らないけど、使えたらいいこともたくさんあるんだよ。 だいいち、自分の世界が広がるしね。昔とちがって今はとくにインターネットが普及してるから、ドイツ語を使おうと思ったらいくらでも使えるんだよ。ドイツ語のサイトとかでドイツの情報を入手できるし、ドイツ語のニュースを聞くこともできるし、ドイツ人とメール交換することだってできるしね。ドイツ語圏へ旅行するときは、たとえば列車の時刻を前もって調べたり、ホテルを予約したり、オペラのチケットをとったりすることだってできるんだ。ドイツのサッカーのニュースなんかも調べられるよ。
その意気だよ。世界にはいろんな国があって、いろんな言語がある。それを認め合うことがグローバル化の基本なんだ。英語以外の外国語を知れば、それだけ多様な世界の情報を手に入れられるしね。
2) 言語的特徴
うん、まずドイツ語は英語とは文法も語彙もよく似ているところがあるんだよ。だけど違うところもあるんだ。文法の特徴についていえば、大きく三つの特徴があると言えるね。一つめは人称変化、二つめは格変化、三つめは語順だね。
順番に説明するね。変化というのは、ここでは単語の形が変わることなんだ。とくに語尾が変わるんだよ。その変化にも二つあって、人称変化と格変化があるんだ。まず人称変化なんだけど、これは動詞と助動詞の変化なんだ。堅苦しく説明すると、「人称変化とは、動詞や助動詞が主語の人称と数に応じて変化すること」だよ。
ごめんごめん。でも、実は人称変化というのは英語にもあるんだよ。たとえば be動詞の場合、主語が一人称単数 I だったら、I am となるよね。ところが二人称 you だと you are だね。さらに三人称単数だと he is とか she is という具合に、主語の人称に応じて am, are, is と形が変わるよね。これが人称変化なんだ。他にも、have なんかだと、I have, you have に対して he has となるよね。あとは三単現のSというのがあったけど、あれもたとえば I come, you come に対して he comes となるよね。これも人称変化の一種だよ。過去形だと I was に対して you were となるのが人称変化だね。
うん、でもドイツ語の場合はもっと複雑なんだ。英語の場合はbe動詞とhave、三単現のSぐらいだったけど、ドイツ語ではすべての動詞と助動詞がすべての人称で変化するんだ。その変化のパターンを覚えるのが、最初のうちはちょっと大変だけど、でも基本パターンは一つで、あとはそのバリエーションだから、きちんと順を追って覚えていけば、そんなに心配する必要はないよ。
そうだよ。「格変化とは、冠詞、名詞、代名詞、形容詞などが、その格に応じて変化すること」なんだ。英語で残ってるのは代名詞ぐらいだね。たとえば、一人称単数の人称代名詞 は主格 「私は」の場合は I だけど、所有格「私の」だと my になって、目的格「私を、私に」だと me と変化するよね。他の代名詞でも同じように you, your, you 、とか he, his him とかいうふうに変化してたよね。これが格変化だよ。ドイツ語の場合は、代名詞だけじゃなくて、冠詞とか形容詞とかも変化するんだ。でもこれも基本パターンは一つで、あとはそのバリエーションだから、やっぱりきちんと順を追って覚えていけば大丈夫だよ。
語順はそれほどたいしたことないよ。英語の場合だとS+V+OとかS+V+O+Cとかいう文型というのがあったけど、ドイツ語の動詞の位置が重要なんだ。それ以外の語順はわりと自由なんだよ。で、動詞の位置も基本は第二位と文頭と文末の三つなんだ。そのかわり、ここはきっちりやっとかないとだめなんだよ。
そうだね。それが主だよ。でももちろん、文法規則だけじゃなくて、単語とか熟語、言い回しなんかも覚えないといけないよね。でも覚えるだけじゃなくて、使えるっていうのが大事なんだ。だから変化表とかで規則だけ覚えるんじゃなくて、実際に文章を数多く読んだり、書いたり、聞いたり話したりして、その中で覚えていった方がいいと思うよ。
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1) 辞書の話
まず、独和辞典が必要だね。独和辞典と言ってもいろんな種類のがあるんだけど、とりあえず語彙数を基準とすると、次の四種類ぐらいに分けられるよ。 @初級用辞書(2万語以下) これらの辞書は語数を少なくし、基本的な用法などの説明を詳しくしてあるから、求める単語が見つけやすくわかりやすいため、初級の段階では使いやすい ね。そのかわり、実際のドイツ語の文章などを読むときには、単語が辞書に載ってなかったりして、物足りなくなるよ。 A学習用辞書(2万語〜6万語) これらの辞書は語数も一応実用に耐え、学習者への様々な配慮がなされて いるから、とりあえずはこのあたりから選ぶのが無難だろうね。 B実用向辞書(6万語以上) これらの辞書は語数も多いから、本格的に使えるね。ただ、そのかわりに初学者への配慮はあまりなされて なかったり、語数が多いため辞書を引くのに時間がかかったりするので、どちらかといえば、初歩的なドイツ語はマスターした人が使うのに向いるかな。 でも、最初からこれらの辞書を使ってももちろんかまわないよ。 Cポケット版 これらは旅行に出かけるときなど、携帯に便利な辞書だね。 Dその他 木村相良は最近はめっきり見かけなくなったけど、昔の学生は大勢この辞書のお世話になったはずなんだ。語数もかなり多く、普通の独和辞典には載っていない古い用法がよく載っているので、18〜19世紀頃の文献を読むのには便利で、独文学やドイツ哲学などを勉強する人にとっては今でも利用価値があ るんだよ。ただ、古い辞書なので、新しい単語が載っていないのが難点だね。大独和辞典は同じ方針 だけど、語彙がさらに多くなっています。不変化詞辞典は前置詞や接続詞、副詞などの解説が詳しいから、さらに進んだ学習者にとっては便利な辞書だよ。
そうだね。基本的には、実際に本屋さんで現物を見て、使いやすそうだなと思うのを選ぶといいよ。でも、ドイツ語を初めて学ぶ人は、学習用辞書の中から選ぶのが無難だね。初級用だと最初はいいけど、すぐ物足りなくなるし、かといって実用向けのだと辞書を引くのが面倒になるかもしれないしね。ポケット版はある程度ドイツ語のできる人が携帯用に使うもので、初学者にはあまり勧められないね。
あるにこしたことはないけど、学習用の独和辞典にはだいたいちょっとした和独辞典が付属としてついているので、とりあえずはそれで間に合うかな。和独辞典は必要性を感じるようになったら買うといいと思う。とりあえず次のようなものが出てるよ。 E和独辞典
2) さらに進んだ学習のために
うん、いい心構えだね。授業ではどうしてもドイツ語の基本的な部分しかやれないから、どんどん自分で積極的に勉強するといいね。手軽なところでは、ドイツ語の参考書や問題集がちょっと大きい書店に行けばたくさん売られてい るから、それらの中で使いやすそうなものを選んでやっていくといいよ。とくに練習問題を数多くこなすといいね。それから、NHKのテレビやラジオのドイツ語講座もあ るよ。あとは、三修社から「基礎ドイツ語」というドイツ語学習雑誌もでていて、これを1年間しっかり勉強すればかなりの力が付くはずなんだ。ドイツ語会話を勉強した かったら、都会ならばドイツ語を教える語学学校もあるよ。とくに東京、大阪、京都にはドイツ文化センター(ゲーテ・インスティトゥート)があって、資格をもつネイティブの教師による授業が比較的安い料金で受講でき るんだ。地方だったら、地元の日独協会などがドイツ語講座を開講していることもあるし、また、ちょっと値段は張 るけど、NOVAなどでもドイツ語のレッスンが受けられるところがあるよ。
ある程度実力がついたら、ドイツ語検定試験(独検)なんかを受験するのもいいね。1級から4級まであって、6月と11月の年2回( 1級と2級は1回)全国各地で開催されてるんだ。レベルは英検の1〜4級にだいたい対応してるから、とりあえずは4級あるいは3級を目指して勉強するといいよ。 半年ぐらいしっかり勉強すれば、4級ぐらいは受かると思うんだ。独検用の参考書や問題集も書店で手に入るしね。 |
1) アルファベットの読み方
うん、そうだよ。今は英語と同じラテン文字のアルファベットを使ってるんだ。昔はドイツ文字(髭文字、亀の甲文字)と呼ばれる ちょっと難しい文字を使ってたんだけど、今では装飾文字として使われている程度だね。
残念ながら、ドイツ語のアルファベットの読み方は英語とずいぶん違うんだ。とりあえずカタカナ表記で書いてみるね。
たしかに英語とずいぶん違うよね。でもよく見ると、いくつか規則性があるんだ。まず、 @ 母音はローマ字読み A (アー) E (エー) I (イー) O (オー) U (ウー) 英語よりわかりやすいでしょ。ただ発音で注意してほしいのは、ドイツ語は日本語より口の形をはっきりとさせて発音させるのがコツで、たとえば「アー」というときは口を大きく丸く開けて そのまま「アー」と言うんだ。「エー」は口を横に引っ張ってイに近いような感じで「エー」、「イー」はさらに思い切り口を横に引っ張って「イー」、「オー」は口を丸く尖らせてのどの奥で発音するように「オー」、「ウー」は口をさらに前に思いっきり尖らせて「ウー」 だね。次に、 A英語と同じ読みのもの F (エフ) L (エル) M (エム) N (エン) S (エス) これらは英語と同じ読みだよ。共通しているのは、いずれも「エ○」となっているよね。
じゃあ、次に行くね。 B英語の「イー」がドイツ語の「エー」になるもの B (ベー) D (デー) P (ペー) T (テー) 英語だとそれぞれ「ビー」、「ディー」、「ピー」、「ティー」だけど、ドイツ語だと「ベー」、「デー」、「ペー」、「テー」だね。栄養ドリンクにリポビタンDというのがあ るけど、このDはなぜかドイツ語読みで「デー」だね。Pは化学で酸性アルカリ性を表すのに pH (ペーハー)というのがあるけど、これもドイツ語読みなんだよ。それ以外のものについては英語とずいぶん違 うから、一つずつ覚えるしかないかな。でも残り12個 だから、なんとかがんばってね。英語のABCの歌みたいにキラキラ星の歌に合わせて歌ってみるのもいいと思うよ。
それにどうしても面倒ならば、無理に覚えなくとも大きな支障はないよ。アルファベットの読みはどういうときに使うかというと、 まず略号のときだね。日本でもNHK(エヌエッチケイ)とかJR(ジェイアール)とかありけど、ドイツでもそういう場合はドイツ語のアルファベット読みでいうんだ。あとは名前の綴りというとき だね。日本人の名前はドイツ人にはわかりにくい場合があるので、綴りを言ってくれと言われることがあるんだ。 だから自分の名前の綴りぐらいはドイツ語のアルファベットで言えるようにしておくといいよ。 2 特殊文字
おっとまだまだ。ドイツ語にはその他に特殊文字として、ウムラウトとエスツェットがあるんだ。 @ウムラウト (Ä, ä, Ö, ö, Ü, ü) ウムラウトは、A, a, O, o, U, u の上に点が二つついたもので、それぞれ「アー・ウムラウト」、「オー・ウムラウト」、「ウー・ウムラウト」と呼ばれるんだ。この上に付いた二つの点は何かというと、e を表していると考えるといい。実際、タイプライターやメールなどでその文字が出せないときはそれぞれ、Ae, ae, Oe, oe, Ue, ue で代用することもでき るんだ。 ウムラウト(Umlaut)のウムは「変」、ラウトは「音」で、「変音」とでもいうものなんだけど、A, O, U の音がそれぞれ e に近い音に変音するってことなんだ。でも一つの音なので、発音するにはちょっと注意がいるよ。 Ä, ä 「エー」: 簡単に言えば、「アー」と「エー」の中間音だね。E が「イー」に近い「エー」であるのに対し、「アー・ウムラウト」は口をやや大きめに開いて、「アー」に近いような口の形で「エー」と 言うんだ。日本語の「エー」はこちらに近いかな。 Ö, ö 「エー」: 一言で言えば「オー」と「エー」の中間音なんだけど、ちょっと発音が難しいね。口を「オー」と同じように丸く尖らせて「エー」と言 うんだ。反対に「エー」と言いながらそのまま口の形だけ「オー」にしてもいいよ。 Ü, ü 「ユー」: これは「ウー」と「イー」の中間音なんだけど、日本語だと「ユー」に近いかな。ただ、日本語の「ユー」は長くのばしていると「ウー」になってしま うから、「ユ」のままがんばって続けるんだ。やり方は口を「ウー」と同じように思いっきり丸く尖らせて「イー」と いう。逆に「イー」と言いながら口の形だけ「ウー」にしてもいいね。
はい、よくできました。発音はカセットとかCDとかでネイティブの発音をよく聴いて、しっかり練習してね。じゃあ、最後一つの特殊文字だよ。 Aエスツェット (ß) このギリシア文字のベータみたいなのは、エスツェットというんだ。エスツェットはもともとはエス(s) とツェット(z)がくっついてできた文字 なんだけど、現代ドイツ語では ss と同じだと考えていいんだ。だから、タイプライターやメールなどでエスツェットの文字が出せないときは ss で代用することもあるんだよ。なおエスツェットは小文字しか存在しないから、大文字で書く必要があれば、SS を使うんだ。ß と ss の使い分けは次の課で説明するね。じゃあ、今日は最後にアルファベットの練習問題をちょっとやってみよう。 |
ドイツ語のアルファベット読みで読みなさい。 1) BRD 2) BMW 3) ZDF 4) FKMQOXYG 5) CPTSVNEHU 6) あなたの名前
はい、よくできました。 |