Ye Zi  葉 紫


葉紫小伝
 作家。1910年湖南省益陽生まれ。本名は兪鶴林、またの名を余藩とも言う。湯寵など他にもペンネームを持つ。「左翼作家連盟」時代の青年作家。少年時代は湖南農民運動に参加。彼の父、姉、叔父は1926年の湖南農民運動に参加し、下部組織の指導者だった。1927年「四・一二」反革命事変の後、父と姉は殺害され葉紫も反対派として逮捕された。彼は、親戚や友人のもとに潜み、白色テロに包囲されていた故郷から逃れ貧しい放浪生活を始める。放浪生活の間、彼は乞食をしたりして気ままな生活を送り、その後2年間兵役についた。
 1929年、上海に行き、生活苦のために奉公に出たり、警察に勤めたり、小学校の教師をしたり、新聞社の編集者をするうちに労働者と広範囲に、密接に触れることで彼の階級的なものの見方や社会経験が大きくなっていった。これらの経験が彼のその後の創作活動においての豊富な素材となった。
 1933年、葉紫は上海で共産党、また、中国左翼作家連盟にも加入した。その年短編小説「豊収」を発表した。
 その後、主に1927年の故郷での事件や自らの経歴を題材として創作を進めた。主な作品として短編小説集として「豊収」、「山村一夜」、また、中編小説に「星」と未完成の「菱」がある。また大革命時代の一部の農民運動を基にした長編小説「太陽従西辺出来」の構想があったが、早逝してしまったため実現できなかった。魯迅は葉紫の「豊収」の中の「奴隷叢書」の編集に当たった際、彼の文の序文を見て曰く、
「作者はやはり一人の青年であった。しかし、彼の経歴や転々とした生活は天下泰平の農民の一世紀の経歴に値する。転々とした生活の中で、‘芸術のための芸術‘を求める事はできなかった。」
 葉紫の小説には鮮明で独特の風格がある。一つ目として、巧みに題材を選び、中国の大革命前後の農村における、激しくし烈な階級の矛盾と階級闘争を深く映し出していて、党のリーダーのもとでの農民革命がこの一つの中でたくさんの農民の思想や性格に重大な変化をもたらす重大な変化を正確に表現している事が挙げられ、さらに、二つ目としては、厳めしさを基調としつつも革命楽観主義が見え隠れすることである。多くの作品で、登場人物に新たな道が開け、明るい前途が現れることで人を励まし力づけ、最後に三つ目として、洞庭湖のほとりの農村をモチーフとして登場人物を練り、芸術の形を築くことが多い事が挙げられる。このことは鮮明な地方色と色濃い生活感を醸し出している。



    
    

作品集・単行本

 『葉紫選集』   葉紫 著   人民文学出版社 ・1959
 『葉紫文集』(上・下刊) 胡従経 編  湖南人民出版社・1983                                         

作成:松浦 克至