Biàn Zhīlín 卞之琳


卞之琳小伝:

 卞之琳、現代中国の著名詩人、翻訳家、評論家、教授。1910年12月江蘇梅門湯家鎮に生まれる。季陵、林子、老卞などの筆名を用いた。
 卞之琳はふるさとで小学校に通い、卒業後は、私塾で古文を一年間学び、それから初級中学に進んだ。1922年夏上海の浦東中学に合格するとともに、跳び級で高校一年クラスの二学期に編入した。このころから西洋の文学と進歩的思想に触れ始めている。
 1929年の夏、北京大学英文系に合格、翌年から詩を書き始める。初期の詩は中国の古典詩詞、現代の徐志摩、聞一多らの新格律詩および西洋のヴァレリー、リルケ、エリオット、オーデンの影響をうけている。
 1933年、大学を卒業後、保定、済南などで教鞭を執り、合同で文藝刊行物『氷星』を編集、同年最初の詩集『三秋集』を出版、それ以後続々と『魚目集』、『漢園集』(李廣田、何其芳と共著)、『十年詩草』などの詩集を出版した。 これらの詩は、卞之琳の詩歌創作の最高の成果を代表するものであり、評論家たちからは、古典を消化し、西洋を消化し、「新月」を出て、「現代」に入る、独立した一家を成す、高い風格を打ち立てたものであると見なされた。 中国現代詩歌の先駆者として、その影響は同時代にも広まり、次世代の40年代「九葉」詩派に及んで遥か海外に至る。更に新時期以来の詩歌の探求や発展にも一定の影響力を発揮した。
 その代表作の一つである『断章』の一節、「あなたは橋の上に立って風景をながめ、風景をながめる人は階上からあなたを見る。名月はあなたの窓を飾り、あなたは他人の夢を飾る。」は人口に膾炙しており、内外の詩界で広く伝誦されている。
 卞之琳の詩作について、沈従文、朱自清、李廣田、徐遅、屠岸、余光駐中、張曼儀、三木直大(日本)など中国内外の著名な詩人、作家、学者が専門的に論じており、また高く評価している。
 抗日戦争初期、卞之琳は四川大学の講師をつとめた。1938年から1939年までは延安や太行山一帯を訪れ、1940年には昆明の西南聯合大学で教鞭を執った。抗日戦争勝利後、天津の南開大学教授となり、1947年にはオックスフォード大学に招かれて、実地に西洋の生活と文化の様々な側面を視察した。1949年以後は北京大学西洋語系教授、北京大学文学研究所研究員をつとめた。50年代にはポーランド、東ドイツを訪問、80年代初めにはアメリカを訪問している。
 詩歌のほかに、卞之琳は小説、散文、文学評論も書いている。短篇「石門陣」「紅褲子」などがあり、長篇には『山山水水』(一部分散逸、残りが香港山辺社から1983年12月に出版された)がある。また卞之琳は長期にわたって外国文学の翻訳と研究に従事している。1949年以後、シェークスピアの翻訳と評論に重点を置き、『西窓集』『ビクトリア女王伝』『アドルフ』『アソリン小集』『浪子回家集』『新的糧食』『紫羅蘭姑娘』などの訳著がある。
 卞之琳は中国作家協会理事、『詩刊』『世界文学』『文学評論』などの編集委員、中国社会科学院研究員をつとめた。

(『卞之琳代表作』1998.1華夏出版社)


作品集・単行本

『魚目集』
『漢園集』 商務印書館 1936.3/国幣陸角
『卞之琳代表作』 中国現代文学館編 華夏出版社 1998.1/12.00元
  

邦訳


作成:青野繁治