オンライン中国作家辞典

Wáng Méng
王蒙
おう・もう
(1934- )


王蒙自伝:

 1934年10月15日北京に生まれる。6歳で学校に通い始め、成績優秀、その上数多くの中国古典詩を暗唱できた。1945年私は飛び級で中学に入り、この1年はちょうど中国抗日戦争に勝利した年で、民衆は意気高揚し、11歳の私はやはりちょっと知られた学生演説家だった。しかし当時中国政府が腐敗して無能となり、政治情勢に急速に失望したため、私は地下共産党組織と接触し始め、学生民主運動に加わった。しかし1948年私は14歳ですでに、中国共産党の一地下党員であることに上満を感じた。1949年中華人民共和国が成立し、私は中学を卒業する前から北京市青年団活動に参加した。区と工場内の書記を経て、中央団校へ進み政治理論を専門的に学び、少年だった私は職業革命家になりたいと考えた。
 1953年私は中学生の時の生活を書いた長編小説「青春万歳《を手掛け始め、それと同時に当時の「北京日報《、「文報告《などの新聞、雑誌において、当該の部分章節を発表した。(全本1978年に初め て出版にこぎつけた。)1955年「小豆《という初めての短編小説を発表し、翌年「新参の若者で成る組 織《などの短編小説を発表した。それによって当時の文壇にセンセーションを巻き起こし、また批判も浴び た。1957年から5年間北京近郊で肉体労働に従事し、1962年北京師範学院にやってきて中国語の教 員を務めた。1963年の終わりに生活に対する信念と人民への情感から、また政治上の圧力に迫られたこ ともあって、私はシンキョウへ積極的に仕事を探しに行き、短期間編集の仕事に従事した後、1965年ま で当該のイリ農村で6年間働き、この間農村の副大隊長を務め、更にウイグル語とその文学をマスターした 。1973年シンキョウ文化局への派遣が始まったとき、私はすでにウイグル語の翻訳に長けていたため、 「勢いよく流れるイリの川で《等の作品を翻訳した。1978年以後「野良猫と半分に切った箸の話《、「 一番大切なもの《、「光明《、「楽しいお話《等の短編小説を相次いで発表した。1979年北京に戻り、 北京市の文連で専門的創作に携わり、大量の短、中、長編小説と、大量の評論、散記、出版作品集を15部 、300万字近く発表した。作品はさまざまな文字に翻訳され世界の多くの国々で出版されている。198 1年中国作協書記所で書記を務め、国際文芸サロン中国センターの副会長となり、1982年中共第12期 中央候補委員に選ばれ、1983年「人民文学《の編集主幹となった。1985年中国作家協会の常務副主 席に選ばれ、同年また中共第12期中央委員に選ばれた。1986年中華人民共和国文化部部長を務め、中 国芸術研究員の院長も兼任した。
 

   

蝶はなぜ得意になるのか

 幼い頃文学が好きだったのは言葉の世界が現実の世界よりもっと美しいと感じたからである。その後も私 は言葉のパワーを信じ、言葉はますます公正で美しい世界の実現を助けるものだと信じている。若いとき私 はこう感じていた。世界は今現在も十分に美しいが、生活の時間が短いために気苦労をする。ただ言葉の世 界だけが現実の世界に比べて更に長い間残しておけるし、もしそうでなければ、生活が瞬く間に過ぎて行く その特性によって着実にでたらめになって生き続けられなくなるのだ、と。
 今も、やはり書いている。心を自由に駆け回らせるために、泣きも、笑いも、苦しみも、嘲笑も、思索も 、愛情も、平静も、寛大さと自信をも持ってそれを徹底的に詳しく書くために、私がかつて跪いた世界と文 学を傲慢に超越するために、またやつら評論家を永遠に落伊させるために、相矛盾する結論にたどり着いた のである。
 王蒙は“現代派”の凧である。王蒙は五十年代の古典に留まっている。ユーモアであり、象徴であり、で たらめである。始めから終わりまで現代主義を保持した人である。永遠の少年共産党のボルシェビキであり、実際には偽善者で辛辣である。西洋の技術手法を導入した人であり、また政治家でもあった。北京の作家達の兄弟分で、新潮を保護した人である。狡猾極まり、知恵を持ち、意識流であった。反官僚主義の先鋒であり、金持ちであるかと思えばそうでなかったり、儒教を信仰し、昔からの卸問屋を営んだ。また、魔術師でもあり、理性を持たず、生活に重点を置く人であった。“三無”(人物が無く、筋が無く、主題が無い)だった。
 私の小説の一つは“胡蝶”という。私は大変得意にしている。なぜなら一人の小説家を一匹の大きな蝶に 見立てたからだ。私の頭は取り押さえられても腰の部分までは押さえられない。足は押さえられても、羽は 捕まえられない。永遠に私と同じくらい王蒙という人はどういう人なのか知ることはできないのだ。

作品目録

 

「王蒙中編小説集《                           1985年湖南人民出版社出版
「王蒙選集《                         1984-1985年天津百花文芸出版社出版
「王蒙報告文学選《                            1981年北京出版社出版
「王蒙集《                              1986年海峡文芸出版社出版
「悠悠寸草心《(短編小説)                      1979年「上海文学《第9期
「説客満門《(短編小説)                       1980年1月12日「人民日報《
「春之声《(短編小説)                        1980年「人民文学《第5期
「凧の飾りひも《(短編小説)                     1980年「北京文芸《第5期
「高原的風《(短編小説)                       1985年「人民文学《第1期
「布礼《(中編小説)                           1979年「当代《第3期
「胡蝶《(中編小説)                           1980年「十月《第4期
「雑色《(中編小説)                           1981年「収穫《第3期

(『中国当代作家百人傳』求実出版社1989)


単行本・作品集・翻訳


作成:林田路子