オンライン中国作家辞典

Liú Yàzhōu
劉亞洲
りゅう・あしゅう
(1953- )


劉亞洲小伝

 私は安徽省宿県の出身で、1953年に生まれた。父の所属していた部隊が朝鮮で戦っていたので、わたしは生まれてから六歳まで朝鮮で過ごした。鉄砲の音を聞くようなことは決してなかったが、頭上を敵の偵察機が飛び交う情景ははっきりと覚えている。この情景は唯一はっきりと印象に残っており、私が戦争を書くとき、今なお私の目の前に浮かぶのである。
 1965年に小学校を卒業すると、「文化大革命《が起こり、私は学校を辞めざるを得なくなった。勉強したさに、私は、既に封鎖されていた部隊の図書館の扉をこじ開けて、何冊かの吊著を探したりした。「本を盗むのは罪にならない《といい、しかもあのような特殊な時期だったとはいえ、私は良心の呵責に今日まで苛まれている。1968年に、私は軍隊に入った。15歳であった。厳しい軍事訓練と、重要な国防のための施工任務で、身体的圧迫を受けたけれども、私の勉強への情熱は圧迫されることなく、私はいつも布団の中で電気を灯し、遅くまで勉強した。1970年第一回目の工農兵大学生が大学にゆけることになり、我が部隊にも2吊の定員が割り当てられた。私は権利獲得のために奮闘したが、選ばれたのは私の仲の良い友人で、北京大学の中文系で勉強することになった。とても嫉妬したが、却って更に意欲がわいてきた。「おまえは中国文学を勉強したいんじゃないのか。私の書いた本をおまえに見せてやろう。《そうしてものを 書こうと決心したのである。
 1972年、私は部隊によって、武漢大学外文系で英語を専門に学ぶことになった。1975年に卒業して、今は空軍で働いている。中国作家協会の会員である。1976年から、『陳勝』、『秦代月』、『両代風流』などの長編小説、『這就是馬爾維紊斯』『黄椊誠少校』などの報告文学、さらに報告小説『海水下面是泥土』などの作品がある。

民族体の解剖

 いかなる経験もなく、たとえあったとしても、人と意志を通じ合う方法はない。主張なら少しはあるだろうが。
 1.文学は、人々が現代を知り、現代についてゆく手助けをするべきものである。私達は新しい時代に臨んでいる。ある人はそれを核時代と呼び、ある人は情報化時代と呼ぶ。一切が、まるで沸きかえる潮の流れのように、驚くばかりの速さで変化し、発展している。潮の流れの前に立って進む人もあれば、潮の流れに押されて進んでゆく人、進まない人、呑み込まれてしまう人もいる。文学は人々にこの流れを正視させ、流れの中に身を投じさせる教科書たるべきなのである。私が『悪魔導演的戦争』を書いたとき、このことを念頭においていた。強国には強い兵力が必要である。強国には、研究する相手が必要である。以前はその相手を書くときは相手をウサギのように書いていた。そして、ウサギを捕まえることができるのは、猟犬だけであった。阿Qは相手が猫やネズミであることを望んだが、私達の今の敵はネズミや猫ではなく、虎である。私はこのように書き、人々に今日、あるいは明日の戦争がどうなるのかを教えた。昨日の戦争はもう終わっているのだから。この作品は大きな成功をおさめ、多くの軍事学校の必須教材とされた。
 2.文学は人々が自分を知る手助けをしなくてはならない。私達の民族はかつては光り輝いていたが、今では特にそういったことはない。何千年もの昔には進んでいたものは、今なお、消えてはいないが、今では進んだものではないだろう。歴史は歴史である。現在でもなければ、ましてや未来でもない。私達は優れた社会制度を持っていながら、どうしてぐずぐずして、貧困と、現代の愚かさも含めた、愚かさから抜けられないのだろうか。それは紛れもなく、私達の民族に元から備わった弱点なのである。文学は最も深く私達のこの民族体を解剖し、政治家も成し遂げることのできなかった任務を成し遂げるべきなのである。
 3.下品な人間がよい作品を書くことは出来ないとは限らないが、きっと永遠によい作品を書きつづけることは出来ないだろう。光り輝くのは金ばかりとは限らないが、金は必ず光り輝く。作品は作者の風格を表すだけで、作者の人格は少しも表さない。私達の作品が受け入れられ、誉め称えられる時には、それは作者本人に変わって賞賛されているのではない。作家と作家の文章技巧を持つ人とは引き裂くことが出来ないようで、また引き裂くことが出来るのである。一人の作家が実際の生活の中で誤りを侵しても、その人が描いた英雄はやはり英雄である。作家の筆がもし誤りを侵して、歴史や事実、良心に背いた作品を書いたらその作家は確実に誤りを侵したことになるのである。

作品目録

《陳勝》(長編小説)   1975年湖北人民出版社出版
《短剣・中魂》(長編小説) 1979年河南人民出版社出版
《大山母山別墅》(長編小説)1982年福建人民出版社出版
《秦代月》(長編小説) 1982年人民文学出版社
《両代風流》(長編小説)  1984年開放軍文芸出版社出版
《開国皇帝》(中編小説)  1982年《海峡》第3期
《一個女人和半個男人的故事》(中編小説)1985年2月《文匯月刊》
《秦宮月》(短編小説)1985年4月《人民文学》
《将軍的涙》(短編小説)1985年《人世間》第3期

授賞作品

《悪魔導演的戦争》全国第三回(1983*1984年)優秀ルポタージュ賞授賞

作品集・単行本

『一個女人和一個半男人的故事』中・短篇小説集 人民文学出版社 1987.5/1.20元


 
作成:神崎麻里子