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張承志創作談


血の出るような執筆に楽しみを

 私が小説に自分を描いていると人は言う。しかし私は自分が完璧な人間であるとは言えないばかりか、自分が善人であるということさえはばかられる。私の小説は、私のあこがれと理想であり、私の小説の男性主人公は、私がそうなりたいと望む理想像である。私は自分がペンを用いて一つの純潔な世界を開拓したのに気がつくと感動を覚える。私は自分がそこで浄化され豊かにされたことを感じたとき、自分の文学が狂おしく好きになった。執筆しているとき、私は激情にかられて自分を抑えることができず、思いのすべてをあらいざらいペンの下に吐き出す。そのようなとき私はいつも深い幻想のなかにおちこみ、幻想のなかで書き続けることによって、壁をつきやぶり、宝物のように美しい文章を見つけ出すのだ。私が歩みを始めたときに誓った「人民の為に」の文字は、今はおぼろであるが、しかし近しくもあり、茫漠と定まりがなくも見えるが、手に触れることができそうな気もする。時には私はたった一人で声もなく笑う。ほんとうに、あらゆる苦しみや犠牲など、このような理想の前では大したことはないではないか。血の出るような執筆の苦しみの中に私は快感を見出した。夢境へのこだわりの中に、私は意味を見出した。これがつまり私が自分を描くということの意味であり、私の自我表現主義なのだ。

(『中国当代作家百人傳』求実出版社1989)

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作成と翻訳:青野繁治