劉慶邦「鞋」


01[整理番号]XY970307

02[作品名]鞋

03[作者名]劉慶邦

04[原載]『北京文学』1997年第1期

05[頁]6 (73−78)

06[ジャンル]短編小説

07[時代]1970年代頃

08[地点]生産大隊のある農村

09[手法]リアリズム

10[視角]三人称

11[人物]守明(女、18歳、婚約者のために一心に靴を作る)、那个人(守明の婚約者、生産大隊の文芸宣伝隊に所属)、守明の母親・妹・いとこ(父方で年上の女性)、仲人、那个人の姉、生産隊で共に働く村の女性達、かかしのような老人

12[題材]乙女心、母娘の愛情、靴作り、姉妹げんか、仲間のひやかし、人民公社の仕事、文芸宣伝隊と追っかけギャル、女性の手仕事の優劣、都市へ出る男性と農村に残る女性

13[主題]婚約者のための靴作りに託す乙女の熱い想いと、嫁ぐ前の微妙な心情。

14[言語]標準語。方言(猛丁、谷草人、不錯眼珠)あり。

15[描写]結納として贈られる布地の種類や、靴作りの材料・部位の名称等が詳しい。人 民公社の組織活動(社員大会、音楽・芝居の公演、農作業等)も描かれている。

16[構成]71段落+後記1段落。章立て無し。1−16:結婚が決まった守明の元に結納の品が届き、それを発端として妹とけんかになる。結納の布地を身にあてがった守明は、幸福感と共に複雑な気持ちを味わう。17−29:守明は慣習に従って、婚約者の靴作りを始める。婚約者が遠くへ行かないように小さい靴を作ろうかと夢想するが、靴底のデザインをナツメの花に決め、一心に取り組む。30−42:生産隊の農作業の合間にも寸暇を惜しんで靴を作る守明は、仲間の女性達にひやかされ、婚約者が来たという嘘にだまされそうになる。43−44:社員大会で批判文を堂々と読み上げる姿を見た後、守明は文芸宣伝隊として村々を回る彼を、仲間と共に追いかけるようになる。ある日、結婚の話を持ち込まれた守明は、相手が憧れのその人であることを知り驚く。45−61:婚約者が遠くへ働きに出るという話を聞き、守明は靴作りを急ぐ。妹に靴を汚され激怒する守明は、母親にいさめられ、嫁ぎ先の決まった娘として突き放されたような寂しさを感じる。62−71:夜、橋の上で落ち合い、守明は出来上がった靴を直接手渡し試着を勧めるが、婚約者ははこうとしない。握手をして別れ、戻る守明を母親が迎えに来ていた。後記:作者自身が贈られた靴をはかずに返し、乙女心を傷つけた思い出。

17[問題点]後記は説明的で蛇足の感があり、物語の余韻を消している。作者は靴を返し彼女と結婚しなかったのか?嫁ぐ娘への母親の愛情が、さりげない形で随所に見られる。

18[作者略歴]劉慶邦、男、1951年生まれ、河南沈丘の人。1978年に作品発表を始め、著作に長編小説『断層』、中編小説『在深処』、『砿山児女』、『東家』等あり。本誌では『白煤』、『屠婦老塘』、『家道』等を紹介した。現在、『中国煤炭報』社勤務、中国作家協会会員。

19[その他]タイトルの下に写真あり。

20[報告者]島田順子