鉄凝「秀色」


01[整理番号]XY970301
02[作品名]秀色
03[作者名]鉄凝
04[原載]『人民文学』1997年第1期
05[頁]7(4-10)
06[ジャンル]短編小説
07[時代]現代
08[地点]秀色:太行山西側の山奥の村
09[手法]リアリズム
10[視角]三人称
11[人物]張品、李(井戸掘りの技術者)、張品の母、李哲(秀色村の村長)、李老哲(李哲の父、元村長)、井戸堀り隊の隊員、秀色村の男たち、女たち
12[題材]井戸掘り、水不足、水の運搬、陳情、共産員の質、村長の汚職、乙女心、性(篭絡の手段)、時代の変化、名水販売
13[主題]井戸が枯渇し水不足に苦しむ村人の厳しい生活、そして井戸を掘り当てることに対する執念を女たちの捨て身の行動を通して描く。
14[言語]標準語、一部方言あり(自個兒、誰們)
15[描写]詩的な現とユーモラスな語り口。重くなりがちな題材を軽妙に読ませる。伝説風の味わい。
16[構成]全89段。章立て無し。1-8:井戸の涸れた村、秀色。男たちは片道100里を歩き、水を運んでくる。水には鍵がかけられ、一滴を惜しんで大切に使われる。9-20:張品の母親が若妻のころ、井戸掘り隊が村に来るが、水は出ない。帰ろうとする隊員を引き止めるため、女たちは進んで身体を提供するが、それもむなしく、結局水は出ない。21-41:時代が移り、李の率いる井戸掘り隊がやってくる。なかなか水脈が掘り当てられず、村人たちは彼らが引き上げてしまうのを恐れる。42-83:張品は李を引き止めるため、自分の身体を捧げようとする。清廉な共産員の李はそれを拒むが、彼女の情熱に打たれて井戸を掘り当てることを約束する。84-89:ついに井戸が掘り当てられる。喜びに沸く村人たちの中で、李は崖から墜落し命を落とす。87-89:井戸の水は村をうるおし、名水として町に売り出される。
17[問題点]42-83段の張品と李のやりとりが冗漫。前半、特に1-8段のエピードを積み重ねる手法とその描写は、水の貴重さが伝わり秀逸である。
18[作者略歴]鉄凝、女、1957年生まれ、原籍は河北省趙県。高校卒業後、農村の生産隊に入隊。1975年から作品を発する。主なものに、短編小説集『夜路』、中短編小説集『没有鈕扣的紅襯衫』、『哦,香雪』、『鉄凝小説集』、長編小説『mei瑰門』、『無雨之城』、散文集『草戒指』等がある。「哦,香雪」は1982年全国優秀短編小説賞、「没有鈕扣的紅襯衫」は1984年全国優秀中編小説賞、「孕婦和牛」は刊第六回百花賞短編小説賞、「mei瑰門」は河北省第三回文芸振興賞を受賞。現在、中国作家協会副主席、河北省作家協会主席。
19[その他]創作談「我看短編小説」が刊同号11頁に掲載されている。その中で鉄凝は、短編小説という形式が様々な人生の風景を描き出すのに適していると述べている。
20[報告者]吾妻智子