鄭清文「報馬仔」


01[整理番号]XY970110

02[作品名]報馬ラミ

03[作者名]鄭清文

04[原載]『台湾文学選刊』1996年第10期

05[頁]6(103〜108)

06[ジャンル]短編小説

07[時代]今

08[地点]台湾(台北か?)

09[手法]リアリズム(部分的に意識の流れ.モダニズム的な描写も)

10[視角]三人称全知

11[人物]陳保民(男.主人公.以前は“総会屋”,今は“一股的”と呼ばれる銀行の株主の一人.日本の植民地支配の時代,“特高”をしていて,皆に恐れられていた.) 理事長(日本に留学経験有り.),陳の妻,美セ黶i陳の娘)秘書,副頭取,副支配人,銀行の喫茶室のボーイ,若い銀行員の女性たち,株主たち

12[題材]銀行,株主総会,総会屋,“特高”,日本の植民地時代,台北の帝国大学,2・28事件,世代の溝,仕事中の居眠り,トイレットペーパー,老人世代のアイデンテイテイー,ラブホテル

13[主題]台湾社会の老人のアイデンテイテイー.

14[言語]標準語.台湾語有り(作品の題;アィツラミ,108頁;ネーヒ)固有名詞(明星,三花牌,扶輪社)日本語の“総会屋”(103頁)

15[描写]一日の出来事を時間に沿って,陳の回想を交えて描写.陳の心情が細やかに描かれている.軽いテンポで重いテーマ.会話に“”がない場合有り(105頁右36行目).比喩表現に動物を使うことが多いのでは?

16[構成]全206段落.章立てなし.(1)〜(24)株主総会で陳は二度手をあげたが,二度とも指名されず.そのまま会議は終了.どうしても銀行の経営について話がしたかったので,七階へ.誰にも相手にされず.(25)〜(35)トイレへ.目的はトイレットペーパーだったがほとんどない状態.フロントの女の子のしわざだと思う.(36)〜(47)一階の営業部へ.ここでも相手にされず.(75)〜(93)九階の食堂へ.一人で食事.銀行の女の子たちの態度に腹をたてる.(94)〜(114)まっすぐ喫茶室へ.新聞を持ち出そうとする(トイレットペーパーをくるむため)とボーイに注意され,仕方なく主任室に古新聞をとりにいくが誰もいない.(115)〜(122)再び七階へ.トイレに忍び込むと案の定トイレットペーパーがあり,会議の資料の封筒に入れた.(123)〜(132)株をもっている他の二つの銀行へ.手に入れたのはタバコ六箱だけ.大通りに出るとタクシーが体をかすめ,運転手ににらまれ,腹をたてる.(133)〜(139)小さな公園へ.扶輪社贈答の時計台を見て,扶輪社にはいれなかった自分を回想.塀の向こうの学校は日本の植民地時代高校で陳はそこの学生の調査をしていた.(140)〜(166)“特高”時代を回想.詰問の資料があれば,明日あさっての株主総会で人々は自分に“特高”時代のようにご機嫌をとるだろうと思う.(167)〜(208)娘美セ黷ェ男とラブホテルに入るの目撃.家に帰って妻に報告.

17[問題点]1932年生まれの作者が元“特高”の男を主人公にした意図は?ー老人のアイデンテイテイーを描きたかったのでは?なぜ大陸の雑誌に台湾の作品を掲載するのか?

18[作者略歴]鄭清文,1932年生まれ,台湾台北出身.台湾大学商学部卒業,現在は華南銀行に勤めている.著作には長編小説「峡地」,「大火」,短編小説には「、箕谷」,「校園里的メャ子樹」など十種ある.ホ竡O連文芸奨受賞したことがある.

19[その他]103頁に写真有り.

20[報告者]島由子(1997.7.2)