高紅十「浪也白頭」


01[整理番号]XY970105

02[作品名]浪也白頭

03[作者名]高紅十

04[原載]『江南』1996年第5期

05[頁]24(57〜80)

06[ジャンル]中編小説

07[時代]今(1990年代)

08[地点]渤海市(北方の海辺にある都市)

09[手法]リアリズム

10[視角]三人称全知

11[人物]沈麗(渤海医院看護婦で、付属看護学校の教師。ナイチンゲールを尊敬する「白衣の雷鋒」)老宋(沈麗の夫)柳天(沈麗の義理の息子。結婚のため住宅を欲しがる)柳眉(沈麗の義理の娘。看護婦。母親思い)華越(沈麗の同僚。沈麗の訴訟相手)小胡(研修医。柳眉の恋人)趙明明(渤海テレビのディレクター。息子が出生時に沈麗の手厚い看護を受ける)李涛(趙明明の夫。渤海市民事裁判所の判事)方瑾(李涛の同僚。判事)張翔(趙明明の元恋人)王侃(鷺美公司総経理。華越の別居中の夫。趙明明が担当する番組のスポンサー)老張(渤海医院の党委員会書記)老宋の前妻、柳天の恋人、小虎(趙明明の息子)、女子大生、王侃の愛人、沈麗の教え子(王珍珍、李平、小孫、劉梅、焦葉葉、呉玉敏)、フリーライター、秋蓮、大海、小海

12[題材]剽窃、看護婦、テレビ番組、民事裁判、愛人、判事への付け届け、住宅問題、学生恋愛、私生児、マクドナルド、詩、列車への投身自殺、捻挫骨折、浪、靴

13[主題]「人民の為に奉仕する」という古い美徳を体現する一人の看護婦が起こした著作権侵害訴訟を中心に、事件にかかわる周囲の人間の姿を描き、現代の世相を映し出す。

14[言語]標準語。数カ所に方言(北京?):pa拉、半拉。外国語:南丁格爾

15[描写]各章にタイトルつき。会話文に引用符合なし。場面展開の説明を省略して会話のみの箇所あり。()による解説が数カ所。典故が多数あり:「少林、少林」「紅灯記」「鴻門宴」郭小川の詩。その他に詩、歌謡曲、対聯の引用あり。

16[構成]632段落。エピグラム+12章立て。第1章:沈麗一家の紹介。自分の講義内容が華越の論文に盗用されているという噂を聞いた沈麗は、夫と息子にも冷淡にされ、自宅前の階段で足をくじく。老いを感じ空虚感にとらわれる。第2章:趙明明一家の紹介。明明は今まで制作したテレビ番組に疑問を感じ、沈麗を題材にした番組を企画する。李涛はアフリカ留学生の私生児を産んだ女子大生の訴訟を担当中。第3章:李涛は夜行列車で出張から帰途につく。飛び込み自殺が発生。方瑾は李涛に思いを寄せているが、李涛は気づかない。第4章:沈麗が足の骨折で入院。華越が見舞いに訪れ、自分の論文を贈る。第5章:沈麗に盗作を問いつめられた華越は強く否定。沈麗は家族に勧められ、告訴を決意する。第6章:私生児を産んだ女子大生が告訴を取り下げる。沈麗は李涛を訪ね、著作権侵害で華越を告訴する手続をとる。第7章:明明が王侃と会食。番組スポンサー打ち切りをにおわせ、明明を通し李涛に対して沈麗を敗訴させるよう圧力をかける。華越は勝訴を条件に離婚に応じる見込み。第8章:年越し。沈麗一家の団欒に訴訟が影を落とす。明明一家は裁判関係者の付け届けを避けて過ごす。第9章:証拠集め。柳眉と小胡は、裁判の証拠になる沈麗の講義ノートを求めて沈麗の教え子たちを訪ねるが、はかばかしくない。第10章:裁判の結果、証拠不十分で訴えが却下される。渤海市初の著作権侵害訴訟に司法関係やマスコミの注目が集まり、判決をめぐって憶測記事が流される。第11章:沈麗は自ら進んで、当直看護婦に代わって小児科病棟を見回る。拭き掃除の最中、心筋梗塞で死ぬ。第12章:沈麗の追悼会。かつての教え子や患者が続々訪れる。明明は沈麗の裁判をめぐるドキュメンタリー番組の制作を開始する。

17[問題点]沈麗の人物像が理想化されすぎて、リアリティーに乏しい。登場人物やエピソードを多く盛り込み、やや散漫な印象。沈麗が大切な講義ノートの管理にずさんなのは不自然。

18[作者略歴]高紅十:女。1951年生まれ。黄土高原で7年間、生産隊に入る。北京大学中文系文学専攻及び作家班を卒業。長編詩「理想之歌」(共同執筆)、小説集『哥哥ni不成材』、散文集『我的歌』『月亮走,我也走』『風景』、報告文学集『只縁妖霧又重来』。現在、北京の某新聞社に勤務。中国作家協会会員。

19[その他]二ヶ所に挿し絵あり。

20[報告者]吾妻智子、島田順子