賈 興安「麦殤」


01[整理番号]XY970104

02[作品名]麦殤

03[作者名]賈 興安

04[原載]<<北方文学>>1996年第10期

05[頁]51〜56頁 (総6頁)

06[ジャンル]短編小説

07[時代]1981年から85年の間と思われる(理由;年齢その他の考察より)

08[地点]張堤村(経由地)、他

09[手法]リアリズム

10[視覚]一人称

11[人物]我…男・主人公
父…麦を作っている農夫
呉海山…主人公の元同級生 農産物買い上げ所所長
李季貴…父の同業者
郭老三…借りた車の持ち主
成国…友人(?) 手伝ってくれた人

12[題材]麦売り、面子、農産品買い付け所、麦の等級付け

13[主題]息子から見た孤独な父の麦売り生活に見られた父の夢。

14[言語]標準語(会話;河北・東北・陜西方言?)

15[描写]私を中心に父の生き様を描いている。

16[構成]138段落 章立て無し
  01-06:「父病気、早く帰れ」との電報を受け取った。父は頑固な人だったが母が亡くなったりで孤独になっていた。だから私は帰るしかなかった。帰ってみると父は何も無い様子。
  07-36:父が「麦を売れ」と私に言う。私の同級生、呉海山が買い上げ所所長に就いていて私が行けば低く値を付けられる事も無いと思ったからだ。父は人に物を頼み、策略を巡らし悪巧みをする人になっていた。私は父のやり方を疑ったが、父の怒りをかってしまい、「麦を売る事によっておまえらを育てたんだ」と説得される。
  37-66:仕事を始める。麦の運搬は初めての事で道中苦労が続く。遂には雨が降り出し、父がすばやく対処したが、その甲斐も無く麦は濡れてしまい、乾かして麦の等級を下げない様にする為にまた遠路を引き返す。私は風邪を引いてしまう。辛いので買い付け所に運ぶ事を躊躇ったが、結局、成国という人物に手伝って来てもらって運ぶ事になる。
  67-98:父と成 国と共に買い上げ所に着き、所長の呉 海山を探す。ランクを下げない為に苦労をして運んだが、ランクの差は大した事が無いのに気づく。呉海山は快くうまく取り計らえると私に約束した。しかし、若い検査員の邪魔により、一等級に認定されなくなる恐れが出てくる。呉は一等、二等の差は大した事はないと言うが、私の父には金よりも面子が大切なので如何にか出来ないかと呉に持ち掛ける。
  99-109:検査所の人間を上手く騙す為の策略を呉が思い付き早速私と共に実行に移す。そして何とか一級の認印を手に入れた。
  110-121:父に「一等級」の票を見せる。父は驚き大声で一等級を喜んだ。
  122-133:麦を売る手続が終わり、倉庫に入れる準備をする。私では駄目だと父が担ぎ上げをかって出た。一寸して父は汗だくでフラフラになって戻ってきた。しかし父は大丈夫だと言い張り、また高い所に上がって行ったが心配でならなかった。
  134-137:作業中に下から結果を聞く声が聞こえ「一等!」と叫んだその時、父はずっしりと重い麻袋と共に高い橋板の上から落ちてしまった。父の最期の「一等!」と言うのはとても満たされていて満足げに満ち、その声は長く聞こえた。

17[問題点]結末が余りにも短絡的過ぎるように思えた。

18[作者略歴]賈 興安、男、1960年河南浚県に生まれる。かつて内モンゴルにて兵役をし、河北師範大学中国語学科を卒業。1981年に文学の創作を開始し、今までに短編小説集<<白雲蒼狗>>を出版。ここ何年かの間に<<家殤>>、<<背景>>、<<浮草>>及び、沢山の散文を発表した。現在、雑誌<<散文百家>>を職務している。河北省作家協会理事、河北文学院専門作家。

19[その他]特に無し

20[報告者]石川統太