01 | 整理番号 | XX850603
|
---|
02 | 作品名 | 不儘儘是誤会
|
---|
03 | 作者名 | 翁樹傑
|
---|
04 | 原載 | 『小説創作』1985年第3、4期
|
---|
05 | 頁 | 43~49頁(7頁)
|
---|
06 | ジャンル | 短編小説
|
---|
07 | 時代 | 1980年代←経済特区(1979年~)の登場
|
---|
08 | 地点 | 香港、香港と九龍の間の海上
|
---|
09 | 手法 | リアリズム
|
---|
10 | 視角 | 3人称
|
---|
11 | 人物 |
馬兆楽 | ある経済特区の水上運輸会社から派遣された長風号の検収グループの責任者。共産党員ではないので行政職務にはついていないが、船舶の検収の技術面では一目置かれているベテラン。
| 王雲吉 | 香港の天華船業会社の社長。愛国企業家
| 余雯雯 | 王の秘書
| 趙深栄 | 経済特区側の現場監督の責任者 | 方船長 | 長風号の船長、経済特区側の人間で、共産党員 | 宗一等航海士、鄭機関長 | 2人とも経済特区側の人間で、共産党員
| 李書記 | 馬の勤める会社の党委員会の書記 | 劉政治委員 | 党の支部書記
| 「私」 | 中国側の語り手 |
|
---|
12 | 題材 | 経済特区、香港側と大陸側の心の溝、豊かで華やかな香港、実直で誇りある共産党、賄賂、物価の差、ビジネス、共産党の規律、共産党に対するあこがれや賛美の気持ち
|
---|
13 | 主題 | 船舶の引き渡しの手続きの段階で発生した香港側と中国側の誤解を通じて、共産党員としてのモラルを描き、そのモラルを守っていない現実を言外に風刺している。
|
---|
14 | 言語 |
|
---|
15 | 描写 | 二日間の出来事をフラッシュ・バックもおりまぜ、馬兆楽の心の動きに沿って、全知全能の語り手「私」によって細かく描写されている。また、語り手は王雲吉の心理も描写。香港の華やかな風景、日の出など風景の描写が多く、象徴的につかわれている。
|
---|
16 | 構成 | | | 全5章。87段落。 | 第1章 | (1)~(10) | 長風号の試航を終え、馬兆楽をはじめ、ある経済特区の査収班のメンバーと何人かの技師をのせた専用ボートが岸に着くと、既に天華船業会社の王雲吉社長と秘書の余が待っていた。王は皆のために一席設けたいと申し出るが。馬はホテルに戻ってまだ相談したいことがあると辞退するが、早く引き継ぎの手続きを済ませたい王の気持ちをくみとり、また長風号も要求よりも性能が良かったので、ホテルで少し休んだら手続きをしようと提案する。王は馬に感謝し、馬はそんな王の恭しい態度に自分の力量、党の自分への信任、党にあたえられた権力を感じた。 | 第2章 | (14)~(27) | 引き渡しのサインのための会談が始まり、終始和やか雰囲気であった。乾杯の準備も整い、あとは馬のサインするだけになると急に馬の顔から笑顔が消えた。皆が不安に見守るなかで馬は中山服のポケットのなかの贈答品目録に手をやった。余の名義で帰国後、カラーテレビ、冷蔵庫、テープレコーダーが贈られることになっているのだ。それらは今の彼には手の届かないものであった。馬はこのような賄賂をおくるということは長風号のなにか欠陥があるのではないか、検収班のなかにも賄賂を約束されているものがいるのではと不安になったのだ。馬は突然頭がぼうっとして目がかすんだので、サインは明日にしてほしいといった。贈り物が足りなかったのかと眉をひそめる王に馬は船に問題なければ明日かならずサインすると約束し、今夜船を再点検しようと心の中で誓う。 | 第3章 | (28)~(41) | 王一行が去ってから査収班のメンバーたちは馬にどういうことかと詰め寄る。馬は共産党員でない自分の非力を痛感する。自分を信任してくれる李書記が相談役として紹介してもらった劉政治委員に報告し、船の再検査をしてからサインするとメンバーにつげる。長風号では劉政治委員が支部委員会を開き馬はその席上で自分が贈答品目録をもらったことを告白、それを劉に提出する。拍手をうける馬。馬はこのような賄賂をもらっては自分の判断に自信がなくなること、ほかのメンバーがもしこのようなものをうけとっていたら知らせてほしいと言う。趙深栄は自分も贈答品目録をもらったことを恥じて認めるが、自分のだしたデータは正確で、また、贈答品目録をもらっても自分は国の利益を売ったわけではないと主張した。 | 第4章 | (42)~(70) | 一晩中馬は点検したがどこも欠陥はなかった。なぜごまかしていないのに贈り物をおくるのか理解できず、劉にたずねる。劉は意味深長に「それは誤解といえるが、誤解にとどまらない。」と言い、王の愛国的な面と資本家の面両方をみなくてはならないとのべる。査収班がホテルにもどると馬は余からの5千香港ドルをホテルの従業員からうけとる。このお金で息子たちにたのまれたテレビを買おうかと苦笑する馬に査収班のメンバーたちは自分たちも援助すると申し出る。三人の敬意をうけ、感激する馬。 | 第5章 | (71)~(87) | 馬は文句も言わず、サインした。5千香港ドルが効いたと自分の機転に満足する王に馬は増盗品目録と5千香港ドルをかえし、私たちは共産党員だと誇りを持って宣言する。自分の行ったことを反省する王は馬は次の商談をもちかける。王は大陸からきた役人には贈り物をわたさないとことが円滑に進まないというデマを信じたので、それが誤解を生んだと反省し、二度としないと誓う。馬はこのとき劉の「誤解にとどまらない。」ということばの意味をさとった。そして自分が党と国家の名誉のために闘ったことを誇りに思い、入党の申請を決意する。 |
|
---|
17 | 問題点 | 「我方」という形で語り手が顔を出す=大陸側の視角から書いている。客観性に徹していない。
|
---|
18 | 作者略歴 | 翁樹傑、筆名庶紀、男、1946年生まれ、福建省福州出身。1968年中等専門学校を卒業後、知識青年、労働者を経て、現在福建漁船建造工場公安警備課で働く。1972年小説を発表しはじめ今にいたるまで既に60篇余りある。『福建文学』『紅豆』『小説林』などの刊行物で優秀小説奨獲得。1982年中国作家協会福建分会に加入した。
|
---|
19 | その他 | 中国の人のもっている個別に悪い人はいるが、共産党はすばらしいという考えが反映しているのではないだろうか?
|
---|
20 | 報告者 | 島由子(1996/11/25)
|
---|