劉亜洲「一個女人和一個半男人的故事」


[01*整理番号]xx850511

[02*作品名]一個女人和一個半男人的故事

[03*作者名]劉亜洲

[04*原載]『文匯月刊』1985年2期

[05*頁]124-137(15)

[06*ジャンル]短編小説

[07*時代]国共内線の時か?「握頁音嬬梨芝議](P131)(チェーホフ)

[08*地点]不明(大青山、老山)

[09*手法]リアリズム(部分的に意識の流れ,フラッシュバック),古典的悲劇のストーリー構成

[10*視角]三人称

[11*人物]陳惨海 30代、軍歴15年、軍隊長の息子、羅一明の妻を密かに愛し始めている。
羅一明 30代、軍歴15年、看護婦であった女性を妻にする。女性のような風貌をしている。
羅一明の妻 現在は大青山救護所の看護婦。密かに夫の友人の陳を愛している、身篭っている。
頭部に傷を受けている兵士 羅一明が自らを銃で撃つ現場を目撃。
干事 政界上がりの幹部兵士

[12*題材]男同士の友情、恋愛、戦争、名誉、エリートの息子、噂話、女心、愛国心、正義感、自己保身、裏切り、家族愛。

[13*主題]小説の主題が恋愛なのか、戦争にまつわる男の名誉なのか、不明瞭である。「卑怯者」と呼ばれても愛する人のために生き延びようとする「愛」が本物なのか?「愛」よりも「男らしく名誉を貴ぶのが立派であるのか?」人間らしい生き方の選択を作者は読者に問いかけているのか?

[14*言語]標準語、外国の作家の名前(普希金、海明威)。

[15*描写]フラッシュバックの手法により,過去の出来事が回想される。登場人物が少なく、主人公の独白によって物語が展開される。文章は短い。

[16*構成]六章(328)
一章(1-32) 戦場において友人羅一明との再会。陳が羅の妻の目のゴミをとっていた状況が誤解され噂話が起こる。また羅の妻が陳に好意を抱いていると告白した事を描き,二人の親密さが周囲でかなり噂に成り初めていることを述べている。陳が軍隊長の息子であるために何事においても噂になり易い状況である。
二章(33-70) 三度目、四度目の敵陣突破にも失敗し,主攻部隊の幹部はたった三人になってしまった。「名誉の戦死とは体の前面に傷を受けて戦死するのであり,体の後ろに傷を受けるのは卑怯者の印である」と主人公は考える。死に直面した時点で,かって羅一明が現在の妻に巡り会い,如何に深く彼女を愛してきたかを回想を交えて描写。また主人公は友人の妻に好意を抱き始めたことで友人に対し罪悪感を抱き,その罪を彼に告白しようと考えるが,反対に友人から妻の妊娠を告げられる。
三章(71-140) 五度目の突撃にも失敗し,ついに最後の時になる。主人公は友人を生き延びさせ,自らが先鋒になろうとするが彼の好意に反し,羅一明は自らを銃で傷つけ,突撃から逃れようとする。しかしながら負傷した兵士により目撃され,その罪を告発される。目撃した兵士から羅を殺すよう要求されるが,陳は羅一明を卑怯者として死刑にするよりも,敵陣に突撃させ名誉の戦死をさせようと考える。そのことは又,彼の妻の名誉のためであると考える。
四章(141-178) 死の突撃を目前にして,羅一明は「自分が死を恐れるのは愛する妻やお腹の子を残して死ねないからだと告白する」そんな彼に対して陳は「名誉」こそが一番大切な物であると考える。そして「個人的愛情により戦争を恐れるのは男らしくないと考える。」そんな陳は「譬えいくら自分が彼女を愛していても,羅一明が戦死した後に,彼の妻が一人残されても,彼女と結婚すれば二人の間の噂話を認めてしまうことになる。それは軍隊長の息子の自分にとって名誉な事ではない」と考える。
五章(179-246) 最後の突撃で羅一明も兵士も敵弾に倒れてしまう。陳も敵弾に倒れるが,羅一明によって助け出される。意外にも羅一明は敵弾に倒れた振りをし,再び生き残ろうとしたのであった。怒りに燃えた陳は彼を射殺する。
六章(247-328) 団長らの救護隊が到着するが,「なぜ羅一明を射殺したのか?」と陳は上官から厳しい尋問をうける。羅の敵前逃亡を裏付ける証人もなく陳は窮地にたたされる。また今度こそ愛を自覚したにもかかわらず,羅の妻に「私には貴女が必要だ。」と言えずに,「貴女の助けが必要だ。」と言ってしまい,大きな誤解を受けてしまう。結果的には羅の妻の助け(偽証)により,救われるのであろうが,主人公は愛する人からも理解されず絶望と孤独に襲われる。

[17*問題点]リアリテイーに欠ける部分がある。また心の中の葛藤が上手く表現されていない。

[18*作者略歴]劉亞洲,男,安徽省の人,三十二才。一九六八年参軍,一九七五年武漢大学外国語系を卒業,現在は空軍に勤務,中国作家協会会員。一九七六年以来,長編小説『陳勝』、『苛時奉』、『両代風流』、報告文学『這就是馬爾維納斯』、『黄植誠少校』及び報告小説『海水下面是泥土』等の作品があるが,その中『悪魔導演的戦争』で第三回全国優秀報告文学賞を獲得。

[19*その他]「愛」の形は一つではない。

[20*報告者]呼美蘭(1996 9 30)