未央「巨鳥」


01[整理番号]XX850509

02[作品名]巨鳥

03[作者名]未央

04[原載]『文学月報』1985年第3期

05[頁]104-111(8)

06[ジャンル]短編小説

07[時代]70年代末から80年代初頃?

08[地点]岩屋区(岩屋郷岩屋村、モデルは湖南省?)

09[手法]リアリズム

10[視角]三人称(全知)

11[人物]曾安本(男、30代前半、猪撃ちの名人、一農民、党員)[hao3]区長(男、岩屋区長、職務と自らの立場に忠実な人物)曹秘書(男?、区政府の職員) 葉記者(男、新聞記者) 劉雪菊(女、曾安本の妻) 老婆婆(女、村人) 郷長 県長ら県政府要人の視察団

12[題材] 幅広い人材登用、一地方政府の矜持、上級幹部への気遣い、山村における人民生活の悲喜、自らの分を知る、等。人民と幹部の差。

13[主題]幹部/党員として職務に忠実であること、人民のために役立つこと、一人物の守備範囲と個人的判断の是非。

14[言語]会話文にみられる方言(ex.「莫写了」「暁得」、多くない)や社会主義的政治用語(ex.「脱産幹部」「政治資本の撈取]「認識が高まれば」等)

15[描写]典型的人物設定や全体に分かりやすい筆致。

16[構成]6章立て。全187段落。第1章(1)-(23)[hao3]区長が新聞紙上に曾安本の猪猟での名人ぶりを伝える記事を見つけ、彼を区武装部長に任命することを思い立つ。/(24)-(45)区長自ら曾のもとを訪ね、固辞する彼に「党員なら組織観念を持て」と説得。/第2章(46)-(51)曾の回想。山村での生活で必然的に父の代からの猪撃ちの名人となった彼は、降って沸いたような自らの幹部入りに戸悪う。/第3章(52)-(57)区武装部長に就任し、設備の十分整った区政府に出向くも、机に向かうだけの毎日に身体が鈍って仕方がない。/(58)-(59)やっと民兵の射撃訓練を開始。厳しい訓練に1か月ほどで優秀な民兵を少なからず育て上げる。その間も猪のことが頭から離れない。(60)-(68)葉記者が訪ねてくる。曾の急な昇進が何とも滑稽に思えるが、彼はまた訓練の様子を記事にして掲載したところ、県政府上層部の注目するところとなり、政府要人を招いての射撃大会が催されることに。/第4章(69)-(74)岩屋区と自らの威信を賭けた会に、射撃会場の準備から視察団の接待全般にわたって準備に余念のない[hao3]区長。一方大会に味気なさを感じ始める曾安本。/(75)-(77)大会前日、視察団も迎えたその夜、猪の出現に曾は不意に出掛けたきり戻らない。/(78)-(116)当日、姿の見えない曾に[hao3]区長はひどく慌てながらも予定通りの日程をこなす。が最後の模範演技にも間に合わず、昼食後になりやっと大猪を担いだ曾が戻る。視察団への思わぬプレゼントとなるも、その晩[hao3]区長は曾を非耕し、曹秘書にも乗せられて彼の処分を決意。/第5章(117)-(133)曾は懲罰として名ばかりの郷武装部長に降格となり、猟も厳重に禁止され、雑務の日々。ある日山で会った老婆に、猪の被害を嘆かれ「もし変わってないのなら猪を撃って見せろ」と言われる。/(134)-(145)言付けを破って猟の支度をする曾と賛同し手伝う妻劉雪菊。出発3日日にして1頭仕留め、村人に大歓迎される。その後付近の猪を一掃するまで村に留まり、家に戻る頃には既に20余日が過ぎていた。/第6章(146)-(149)職務を投げ出し、勝手に猟に出かけたかどで曾は郷政府で監視付きの謹慎処分を受ける。雨漏りの落ちる音に眠りを誘われ、豹を撃ち損じる夢を見る。/(150)-(175)曾の功績(村での猪退治)を記事にして彼を救い出そうと葉記者が訪ねて<る。幾度も災難をもたらした記事などいらないと言い、猟も止められ、処分を恐れるあまり病気も同然の曾に、葉記者は魯の国の大鳥の故事を持ち出し元気付けようとする。/(176)-(187)郷長から、「寛大なる処置により」現任を解かれ農民に戻れとの辞令を受ける。和む者。

17[問題点]曾安本への処遇があまりに単純すぎないか?/「蓑衣丘斗笠丘」?

18[作者略歴]未央、1930年生まれ、湖南雀臨シ豊県の人。当代詩人。1949年に入隊、朝鮮戦争に参加し、前線にて『祖国,我回来了』『馳過燃焼的村荘』など当代詩編中の名作を書いている。近年の著作である『假如我重活一次』は1980年全国中青年詩人詩歌奨を受賞。現在、湖南省文聯副主席をつとめる。

19[その他]題名の「巨鳥」とは故事(p.111)による。出典は?

20[報告者]山本透江(19960708)