喬雪竹「波莱羅舞曲」


[01*整理番号]XX850506

[02*作品名]波莱羅舞曲

[03*作者名]喬雪竹

[04*原載]『中国作家』1985年1期

[05*頁]71-85

[06*ジャンル]短編小説

[07*時代]文革の後1〜2年か?

[08*時点]東北地区

[09*手法]“意識の流れ”小説

[10*視角]三人称

[11*人物]江山(男、政府の中央機関の工作員、現在は何らかの理由により失脚、本名不明、30-40才)把頭児(男、40-50才、以前は地方の最高行政長官であったが森林盗採により刑務所に入れられ、出獄後現在は漁業を営む)把頭児の息子、妻、女服務員(ホテルの従業員) 娘(副部長の娘、30代) 司機

[12*題材]文革、男の友情、音楽「ボレロ」、文革後の社会の変貌と人々の意  識の変化、“暴発戸”(経済機構の変化により人民の富への渇望)、エリ  ート工作員の挫折、大自然(森林、北の海)、テープレコーダ(贅沢品)、主人公と副部長の娘の過去の恋愛、性購狼,恠朔壇。

[13*主題]中国社会において文化大革命の前後の大きな社会的、経済的変動を一人の青年の挫折を通して描いている。しかしながら,主人公の青年は一体どのような挫折感を味わっているのかは不明?また判断材料の不足から主人公の立場が明確でない。官僚の権威主義に対する作者の立場は消化不良のままで,読者には理解できない。

[14*言語]標準語、一部方言(p80香眥眥)、魚の名称、音楽、英語

[15*描写]フラッシュバックの手法により,過去の出来事が再現される。主たる人物二人だけで,回想による心理描写により物語が展開される。内容が一部不明瞭な部分もある。会話部分を除き文章が長い。

[16*構成]七章。(230)
一章(1-22)ホテルに宿泊する江山,ホテルの近代化に驚く。二章(23-27)ホテルの庭園を散策しながら昔を振り返る。娘との出会い。(28-37)ホテルの庭園での男との出会い。「ボレロ」の音楽に引き込まれるように男の話に耳を傾けるうちに,かっての事件を思い出す。三章(38-42)六年前風雪で立ち往生した小さな村での“把頭児”との出会い。(43-50)彼の森林盗伐の罪を暴き告発す,八年の刑を言い渡される。四章(51-72)四年で釈放されたものの,家族を初め全てを失った“把頭児”がボレロの音楽によって心の安らぎを取り戻し,北の海の漁業に活路を見いだす。(73-93)話を聞くうちに次第に打ち解ける二人。漁業の成功に従い,家族の絆も取り戻した“把頭児”が金銭のためだけではなく,息子とともに北の海に魅せられた様子。しかしながら特殊な漁法(違法か?)で魚を乱獲して,莫大な利益を得ている。五章(94-102)ホテルのレストランで二人の食事の情景。社会の変化(経済的)に伴い,客層の変化や従業員の変化を描写。(103-134)偽名に疑問をもった“把頭児”が江山にどのような罪を犯したのかと詰め寄る。(135-156)酒に酔った二人は,人々の崇拝が権力や金銭に変わったことを痛感する。(157-179)ホテルの庭園で出会った女性とレストランで再会するが,江山の失言に怒った彼女は彼を罵倒する。七章(180-211)娘は江山を庭に呼び出し,彼の力になれるかもしれない政府の要人を暗示する。彼女は江山のかっての友人と結婚すること,以前江山に紹介されたが相手にされなかった事実を告げる。かって成功の絶頂にあった彼が,いかに尊大で思いやりのない人間であったと非難する。(212-218)司機が迎えに来る。(219-230)“把頭児”が万一の時には自分が牢獄まで差し入れに行くからと車を追いかけながら別れを惜しむ。

[17*問題点]新時代の社会変動を否定しないまでも,ある種の疑問を感じる。ボレロの音楽の意味するものは何か?副部長の娘と江山の関係は?

[18*作者略歴]喬雪竹,女,1950年生まれ。1968年高等学校を卒業後文化大革命の政策により内蒙古に下放され(戸籍も移す),牧民、農民、“裸足の医者”、中学の教員を経験する。1978年に中央演劇学院に合格し,卒業後江蘇省文化局劇目工作室で勤務。現在までに『北国紅豆也相思』等中、短編小説多数発表。

[19*その他]

[20*報告者]呼美蘭(1996.6.10)