01整理番号xx850505
02作品名你別無選澤
03作者名劉索拉
04原載「人民文学」1985年第3期
0541頁~72頁 32頁
06ジャンル中編小説
07時代1980年代初めか
08地点ある音楽学院(大学学園生活)
09手法リアリズム フラッシュバックあり 無標点部分あり
10視角三人称
11人物
李鳴男、作曲系所属。宿舎長。才能、気質、音感に恵まれているが退学したいと思っている。作曲する気がなくなり、宿舎の布団に潜り込んでいる。
馬力男、作曲系所属。李鳴の同室者。本を購入し、図書館のように番号、印章、貸し出しカードを付けて管理することを趣味としている。授業中いつも居眠りをし、夜眠るのも早い。試験後帰省し、ヤオトン(ほら穴状の家)が崩れ死去。
石白男、作曲系。李鳴の元同室者。途中理論系の宿舎に移る。音楽理論書を崇拝し、授業中教師のあげ足を取る。協調性がない。和声学(ハーモニー)を7年、バイオリンを15年やっているがうまくない。 
小個子男、作曲系。李鳴の同室者。背が低い。馬力の死後、功能圏の額を磨き始め、更には宿舎中を掃除し続ける。出国のため学院を去る。
聶風男、指揮系所属。石白の後宿舎の同室者となる。乱れたカールヘア、真白いシャツ、胸を張っている。女子学生が取り巻いている。
戴斎男、李鳴の隣室。作曲系。愛称妹妹。ピアノの腕は抜群で作品にはショパンの趣がある。ほっそりした身体、青白い顔。女子学生と交わるのが好き。
森森男、李鳴の隣室。作曲系。音楽以外に関心がない。鳥の巣のような髪、身の回りをかまわない。賢い瞳をしているが、指が短い。作品に不協和音の力強さを求めている。「猫」のことが好き。 
孟野男、作曲系。才能にあふれている。びっしりと濃い黒髪、カールしたひげ、情のあふれる瞳。ハンサム。成績は良いが規則は守らない。ガールフレンドに絶えずつきまとわれ、時々失踪する。何よりも音楽が大切。作品は気狂いじみている。金教授のお気に入り。 
MENGDONG女、愛称「ぼんやり」。作曲系。ものわかりが早いが忘れるのも早い。3日間眠り続けることができる。
董客男、作曲系。態度は落ち着きすぎている。不衛生な外見。哲学的な話をしたがる。
女、愛称。作曲系。こどものように無邪気でかわいらしい。課題ができないと笑ってごまかすが、教師もつい許してしまう。
時間女、愛称。作曲系。機械のように時間通りに行動する。何事に対してもまじめ。模範生だったが、同時に2人の男子学生に好かれ両方そでにしたことで賈教授の怒りを買う。
莉莉女、バイオリニスト。運動選手のような体型。かつて神聖な雰囲気がすると石白を好きになるがふられる。
孟野の
ガールフレンド
孟野より2つ年上の文科系大学生。文学の才能、博識の持ち主。ヒステリックで思い込みが激しい。孟野を愛するあまり孟野から音楽を奪おうとする。
王教授男、李鳴の一番尊敬している教師。数カ国語、多分野の学問に通じ、多数の発明をし、複数部門の職務を兼務している。学院公認の精神病である。
賈教授男、作曲系の主任教授の一人。学生の風紀問題にうるさい。自らが作曲することはほとんどなく、古典音楽の研究と学生指導に没頭する以外は金教授批判に時間を割いている。衣類を新調しない。現代音楽を敵視し、昨今の学生気質を堕落ととらえている。
金教授男、作曲系の主任教授の一人。音楽の才能がある。陳腐なことは言わず、気怠そうにピアノを引き続け、学生はそのピアノから言わんとすることを聴きとらなければ永遠に授業が分からない。風紀にはかまわずフランスの香水をつけてくることもある。
女性講師、
年配のピアノ教授
体育教師、
管弦系楽隊隊長団支部書記 男
学生会主席、
管弦系学生、
声楽系学生、
馬力の父母、
学院門番の老人、
その他
12題材音楽、青春、学園生活、友の死、退学と中退、伝統保守と革新創造の対抗、愛の狂気、功能圏
13主題音楽学院の作曲系という厳しくかつ特殊な環境のもとで送る青春群像 日々のやるせなさと自分は
何者であるかという問いかけ。そして旅立ち。
14言語普通語、文語調、英語、音楽専門用語。
15描写登場人物の紹介の際、フラッシュバックの手法が使われている。登場人物が多い。外国の作曲家、曲名がよく出てくる。享徳米特「宇宙の調和」、シェーンベルグ「ワルシャワの幸運者」、バッハ、聶耳、ショパン、シューマン、ベルリオーズ、※プラトン、ベートーベン、ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第二番」、バルトーク、ドビュッシー、ハイドン、ムソルグスキー「二人のユダヤ人」、「白鳥の湖」、モーツアルト「ジュピターC長調交響曲」
16構成
23章669段落
1章(1-36)李鳴は退学したいと何度か思ったことがある。退学を決意してから宿舎に閉じこもるか、授業に出ても似顔絵を描いて過ごすようになる。尊敬する王教授に退学について相談に行くが、「作曲を続ける他に選択の余地はない」と一喝される。人物描写。(同室の馬力)
2章(37-46)現在唯一のことは練習題をやること。李鳴はやる気がしない。作曲系宿舎の描写、人物描写(石白、小個子、聶風、戴斎、森森)
3章(47-90)李鳴は宿舎の布団にもぐりこみ、練習室に行かなくなる。学院の朝の情景描写。人物描写(孟野、作曲系2人の主任教授)。作曲系主任教授の対立。(総括演奏会の度に騒動が起こる)
4章(91-129)人物描写(董客)。賈教授の提案で毎週1回創作方面の問題に関する会議が開催されるが、学生は会議に意義を見い出せない。
5章(130-139)人物描写(戴斎、作曲系3人の女子学生)。作曲系の三人の女子学生の存在が賈教授はじめ作曲系クラス全体をかき乱している。
6章(140-164)人物描写(石白、莉莉)。石白は賈教授を聖人だと思っている。石白と莉莉の出会いと別れの描写。
7章(165-194)試験シーズン到来。学生は各々試験の準備にとりかかる。だれかが教室の黒板にT-S-D功能圏を張り付ける。小個子が功能圏を銘記していれば偉大な作品ができるといったところ、だれもそれをはがせなくなった。
8章(195-212)試験当日。学院はリラックスさせるために科目ごとの試験の間隔を引き伸ばしたが、かえって学生の緊張状態をあおってしまう。ついに残すところは作曲試験となる。一日目は三部構造作品の作曲。
9章(213-241)二日目は時間無制限の歌曲の作曲試験。苦しむMENGDONGの様子。
10章(242-288)試験後、教室でディスコ音楽をバックに打ち上げが行われる。孟野はガールフレンドのことを思う。ガールフレンドと孟野の出会いと交流。孟野にとって音楽は一番大切なもの。それがガールフレンドにとって許し難い。
11章(289-313)李鳴は自分が宿舎にこもり練習室へ行かなくなった理由を探そうとする。最大の理由は健康すぎる、精神が健全すぎるため。すべてを忘れることができても馬力のことは忘れられない。馬力の死。馬力のベットはそのままで見る度に馬力を思い出す。功能圏は正式に額縁に飾られる。小個子は額縁を磨き、馬力の図書管理事業を引き継ぐ。李鳴は準則が変わることを恐れていた。
12章(314-350)ある日MENGDONGはピアノ教授に力の使い方を教えてやるとたたかれる。なぜ、ピアノの練習をしなければいけないのか。MENGDONGと時間の対話。MENGDONGと孟野とのやりとり。MENGDONGは孟野に気がある。孟野もまんざらでもない。
13章(351-378)人物描写(賈教授)。現代技法に傾斜する学生は堕落だとなげく。国際青年作曲家コンクールの通知が届き、賈教授は金教授にそん団したところ、学生に自由応募させ、優秀な作品をコンクールへ送ることになる。学生にコンクールの件が知らされる。
14章(379-440)事務室に馬力の両親が訪ねてくる。馬力の布団は整理され運び去られるのを待っている。李鳴は馬力がいなくなったことを意識する。董客はさまざまなタイプの曲を用意し入賞をねらっている。更に管弦系の学生を買収し独占的に自分の作品を演奏させ、他の作曲系学生の不評を買う。董客は李鳴に馬力のために「死と永遠」をテーマにした交響曲は要らないかというが、李鳴は拒否する。
15章(441ー464)人物描写(森森)。森森は既製の音楽ではない自分自身の音楽を追求している。ある日孟野が森森の練習室で口ずさんだ古い簡単なメロディに森森は原始の生命と神秘を感じる。孟野は大地との離れがたい悲哀を表現し、森森は力強さを重視し人間を表現したいと思う。森森は「猫」が好きだが、「猫」の長い指にコンプレックスを抱き愛せずにいる。小個子は森森に何かを見つけるために出国しようと思っているといい、森森は額を磨く小個子の行動に神聖なものを感じ小個子を尊重し始める。
16章(465-509)戴斎には莉莉がつきそっているが、戴斎は曲を書き続けられず、ピアノ系へ転学する。ショパンの再来だと人にほめられるが、莉莉は作曲系はもともと精神病の集まりで戴斎もその一人なのに現実から逃げているだけだと非難する。
17章(510-544)小個子は額だけでなく宿舎中を磨き続け、李鳴が止めてもきかない。小個子は置き手紙をして去っていく。李鳴は本気にしていなかったが床にどんどん足跡がついていくのを見て、小個子が去ったことを実感する。
18章(545-551)コンクール出品作の選考会が行われる。莉莉は戴斎を無理やり連れていき、李鳴も聴きに行く。董客の作品は注意は引いても完璧ではなかった。森森の五重奏は太古の素朴さと神秘をたたえ生命の無限の力強さを感じさせ、会場はシンと静まる。孟野のチェロ協奏曲は素朴で大地の深い悲哀を感じさせた。戴斎は選考会終了後、ショパンの楽譜を屋上から投げ捨てる。
19章(552-593)賈教授は孟野と森森の作品をファシスト的なものだと批判し、石白に学院広報紙上に批判文を発表するよう迫る。石白は選考会を機に和声学だけでは足りないと考えを変えるが、強要されて批判文を書いたところ、全校的な反感を買う。
20章(594-620)森森と董客の作品はコンクールへ出品され、孟野の作品は却下される。孟野は選考会当日に失踪し、孟野の妻から告発文が届く。孟野を愛するあまり妻は孟野にかけがえのない音楽を捨てろと迫り、孟野は逃げ出してしまう。妻は規定に背いて結婚した上、女子学生とスキャンダルを起こしたとして、孟野の除籍処分を求める。
21章(621-639)戴斎は立ち直り作曲を進める。美しく優雅なピアノ協奏曲を作り、莉莉は聴いて涙を流す。孟野は卒業まで半年を残し、自主退学となる。入学当時のことを思い出し寂しく学校を去っていく。
22章(640-666) 新年となり、作曲系はパーティを開く。サンタクロースの衣装のために馬力の布団の布をよこせという学生と李鳴はもめる。功能圏をあしらったケーキが登場し、MENGDONGはすべての事態は功能圏が起こしたのだと功能圏を取り外そうとするが、小個子のために置いておいてくれと森森に止められ、泣き崩れる。
23章(667-669)夏、作曲系の卒業式。森森の作品が国際作曲コンクールで入賞する。李鳴は布団から抜けだし、馬力の布団を片付ける。李鳴は馬力の宿舎での最後の情景を思い出し、ふざけて馬力の上に本をばらまいたことを後悔する。李鳴は功能圏を持っていこうとするが、小個子のために置いておく。森森は練習室で回想している。古いテープを引き出しの中に見つけ聴く。ふっきれた気分になり窓を開けるがふいに泣き出した。
17問題点登場人物が多く、フラッシュバックもあり、時間の流れが分かりにくい。作曲家の感性は一般人にとらえがたい。功能圏とは何か。
18作者略歴劉索拉 女。1955年生まれ。陜西省の人。幼い頃北京で過ごし、1969年保護者とともに江西省の「五七」幹部学校へ。1970年北京に戻り進学。1973年北京の某工場の中学で音楽教師をし、1977年中央音楽学院作曲系へ入学。1983年卒業。現在中央民族学院音楽舞踏系理論作曲教育研究室に勤務。1982年より作品を発表し始める。この作品は彼女の初の中編小説である。
19その他 作者の実体験に基づくのか。
20報告者北田 朗子(19960909)