[01整理番号]xx850504

[02作品名]火

[03作者名]路

[04原載]『草原』1985年第2期

[05ページ] P32〜41(10)

[06ジャンル]短編小説

[07時代]1980年頃

[08地点]内蒙古自治区

[09手法]リアリズム

[10視角]主に三人称,一部語り手が表面に出る(ex p33右23行「似 是 遥 的往事了…」)

[11人物]・波利(蒙古族の青年・20才・祖父の捨てた銃を持ち、ヤマハ製のバイクに乗って草原に狩猟に出る・薩日 という娘にあこがれている)○吉格米徳( の祖父・文革時、禁止されている狩猟をしたことで批闘大会に引きずり出された。二度と狩猟をしないと誓って銃を捨て、農業に従事してきた)○阿 布吉(旗委員会副書記・以前、吉格米徳 を捕まえて批闘大会を開き批判した男・今はそのことを悔いている)○艾力布(蒙古族の青年・阿 布吉の息子・やさ男・薩日 の夫・トヨタの車に父を乗せて吉格米徳に謝罪に行く途中、 に出くわす)○薩日 (艾力布の妻・その美貌で周辺の青年たちの憧れの的であった)

[12題材]蒙古族の生活や信仰(ex 火…神への感謝、狩猟の獲物への慰霊、阿 布吉の罪を清める火などを象徴)改革開放政策以降の新しい波(狩猟の自由化、トヨタの車やヤマハのバイク)内蒙古の大自然(吹雪、山河、黄羊)

[13主題]文革中に犯した誤りに対する阿 布吉の悔恨の念を描く(文革の傷痕)

[14言語]普通話 一部名詞に蒙古語(塔 …タラ 草場)

[15描写]二人の青年の対立に、過去の父や祖父の対立、薩日 をめぐる葛藤が重なり合い、時間が現在と過去の交互に描かれる。不完全ながらフラッシュバック的手法や意識の流れ的手法が使われている。

[16構成]章立てあり 7章 131段落○冒頭に《祭火祝詞》より引用○第1章 主人公の青年はヤマハのバイクに乗って一人で狩りに出る。彼が夜営をしていると、トヨタの車に乗って狩猟に来た阿 布吉親子に出会う。○第2章 の祖父にまつわる出来事。文革時(60年代末〜70年頃)、妻の死ぬ間際の願いをかなえるため、祖父の吉格米徳 は禁止されている狩猟に出、旗革命委の指導グループの阿 布吉につかまる。獲物の羊は没収され、銃はこわされる。吉格米徳 は批闘大会で批判される。 はまだ子供であったが、その様子は記憶している。吉格米徳 が銃を河に投げ込んで狩猟をやめると誓ったとき、 はひそかにその銃を拾い上げて今日まで保管していた。○第3章 艾力布親子の乗ったトヨタはガス欠で立ち往生する。艾力布は に助力を請う。祖父の受けた仕打ちと、薩日 を取られたことを根に持つ は艾力布の求めを冷たく拒絶する。そして、 と艾力布はけんかになろうとするが…・ ○第4章 若く美しい薩日 という娘をめぐる回顧。 も薩日 に憧れる青年のひとりであった。しかし、薩日 は旗委員会副書記の息子の艾力布と結婚する。○第5章 第3章の続き。 と艾力布のけんかに、艾力布の父親の阿 布吉が割って入る。艾力布はガソリンを求めて10km先のスタンドへ行く。天候は急変して暴風雪となる。阿 布吉は艾力布の妻の薩日 が出産間近であると告げる。 はバイクに乗って艾力布の救出に向かう。○第6章 は暴風雪の中で艾力布を探し出す。艾力布は父のことを に打ち明ける。阿 布吉は癌のため余命はないこと。 の祖父の吉格米徳 を批判したことを、今は過ちであったと後悔していること。そして、ここへ来たのは連装式の猟銃を吉格米徳に送って、謝罪するためであること…などであった。○ 第7章 は艾力布を乗せて阿 布吉のいる場所へ帰る。しかし、阿 布吉は息をひきとる直前であった。息をひきとる前に、彼は吉格米徳への謝罪の言葉を口にし、自分のために 烏 山に行って「 火」をともし、けがれを払ってくれるように頼むのであった。

[17問題点] 阿 布吉の「謝罪」の背景の説明が不徹底。文革中に狩猟が禁止されたのはどういう理由からか。その政策に対して阿 布吉が今謝罪するのはどういう意味合いを持つのか。

[18作者略歴]路 、元の名は杜 、男、1957年に内蒙古烏蘭察布盟に生まれる。初級中学卒業。1970年から労働に従事。溶接工、自動車修理工、共青団委員などを経て、現在、錫林郭勅盟文芸工作団に所属。1984年から小説の発表をはじめる。「烏呼森山谷」という作品で『萌芽』の1984年創作栄誉賞を獲得。

[19その他]

[20報告者] 宮本 雄一郎