陸文夫「臨街的窗」


[01 整理番号]XX850501

[02 作品名]臨街的窗

[03 作者名]陸文夫

[04 原載]『小説家』1985年1期

[05 頁]2-11 (10)

[06 ジャンル]短篇小説

[07 時代]1982年以降

[08 地点]三山街(大都市ではない地方都市と推定される)

[09 手法]リアリズム

[10 視角]三人称

[11 人物]姚大荒(男・老人・伝統劇劇団作家・経歴に大きな問題がある) 范碧珍(女・28歳・劇団の主要メンバー・「唱花旦」(むすめ役)・文教局の副局長) 范妹妹(女・碧珍の母・妹妹は芸名・若き頃一世を風靡・娘に英才教育を施す) 汪局長(男・59歳・文教局長、30年来「文化工作」をそつ無くこなしてきた=常に政策の理解者実践者?)

[12 題材<]・改革:組織の若年化、伝統劇の改革(テレビとの競合を含む)、改革されるべき社会主義制度(分配における平均主義と能力主義)/・傷痕(文革の傷跡、人民共和国史における傷跡)/・プロレタリア思想の汚染(経済犯罪)/・李鉄梅(『紅灯記』ヒロイン)など現代革命京劇、地方演劇(昆劇か?)の人物、用語の多出。『売油郎独占花魁』『古文観止』『紅楼夢』『桃花扇』。

[13 主題]新時期における社会改革には確固たる未来志向の政治意識と実践が必要であり、むやみに被害者意識を主張する立場は排除されねばならない

[14 言語]標準語

[15 描写]読み取りやすい登場人物設定。時間の軸に従い事件を配置してゆく物語形式(フラッシュバック等の手法は見られず)。完全たる三人称全知(作家のリアリズム指向)。当時の社会風潮(改革、組織の若返り、知識人の重視=学歴重視、「傷痕」など)を巧みに織り込む。

[16 構成]章立てなし。110形式段落。(1)-(10)三山街を臨む清代からの古い建物に隣どうしで住まう姚大荒老人と范碧珍、妹妹母子はともに戯劇界の人間で、互いに往き来していた。 (11)-(32)文教局では指導者層の若返りをはかるため、汪局長の後継として范碧珍を副局長に選出した。范母子は釣り合わぬ人事だと辞退しようとするが、結局一連の改革の社会情況に期待している姚大荒の説得を聞き入れた。 (33)-(52)碧珍は地方劇流派大コンクールのための劇台本を書くよう姚大荒に持ちかけ、地方劇の改革を望む姚は西施を題材に悲劇を書くことを決意しその創作に昼夜を分かたず没頭する。 (53)-(91)会議の席上、姚大荒は台本案全般について激しい批判を受け、原案は断念させられ、経済犯を糾弾する現代劇を書くよう迫られる。 (92)-(98)汪局長は、散会後もあくまで姚大荒をかばう范碧珍を「政治的な立場から問題を考えるように」とたしなめた。 (99)-(101)志を折られた姚大荒は逆にほっとしていた。上から迫られて台本を書くのは手慣れた仕事である。 (102)-(110)コンクール参加作品は成功し、賞を受けたが、当事者の姚大荒も范碧珍も心から喜んではいないようだった。

[17 問題点]・作家は大衆から離れた人物である姚大荒を作り、故意に政治をつかさどる登場人物である汪局長とぶつけているのではないか?/・作家はリアリズムを想定させる描写に政治的なメタファーを含ませているのではないか?/明記はされないながら、作品全体にローカルな雰囲気が漂う。/・作家の新時期における社会改革への大きな期待が読み取れる。

[18 作者略歴]陸文夫,男,一九二八年生まれ。江蘇省泰興県の人。一九四九年に革命に参加し、『新蘇州報』の記者に就き、一九五七年江蘇省文聯に配置され創作に専門的に従事。一九五五年より作品を発表しはじめる。短編小説集『栄誉』、『二遇周泰』などを出版する。『献身』、『小販世家』、『囲墻』ではそれぞれ一九七八年、一九八〇年、一九八三年に全国優秀短篇小説奨を受賞し、『美食家』で第三回全国優秀中篇小説奨を受賞する。現在、中国作家協会副主席。

[19 その他]文革後、新時期以降、以前のものをすべて排除しようとする風潮に対する作家の揶揄があるのではないか?

[20 報告者]和田知久(19960513)