張賢亮「霊與肉」


01[整理番号]XX800201

02[作品名]霊与肉

03[作者名]張賢亮

04[原載]『朔方』1980年第1期

05[頁]3ー17(15頁)

06[ジャンル]短編小説

07[時代]1979年秋、1948ー49年、1957ー58年、1966年、1972年、1978年

08[地点]北京、中国西北部の農場

09[手法]意識の流れ、フラッシュ・バック

10[視角]三人称描写

11[人物]許霊均(男、41、2歳。父はアメリカから来た華僑の留学生、母は地主の娘両親の不和により、父に捨てられ、母の死後は孤児となり、辛酸をなめる。学校卒業後、教師になるが、右派として批判されて西北部の農場に下放され、放牧員となった。後、名誉回復し、現在は農場の(小)学校の教師。)秀芝(女、26、7歳。許霊均の妻。1972年、飢饉に苦しむ四川省からやって来て、霊均と結婚した。)清清(女、7歳。霊均の一人娘。)父(許霊均の父。30年前、妻子を捨てて、アメリカに渡り、事業で成功を収めている。事業の後継者として迎えるため、霊均に会いにやってきた。)ミス宋(女。霊均の父の秘書。)董副主任(男。農場政治部の副主任。許霊均の名誉回復を伝える役目を果たす。)農場の放牧員の仲間たち(霊均をあたたかく見守り、励ます。)“郭ロ扁子”(愛称)(男。第7隊の放牧員。霊均と秀芝の結婚のお膳立てをした。

12[題材]父と子の情愛、祖国に寄せる思い、反右派闘争、右派として批判された人物の名誉回復、農村(四川省)の飢饉と農民の流出(文革によりつくりだされた惨状)、農民たちの純朴な感情、教育に対する農民たちの期待、都市(北京・アメリカ)の生活と農村の生活の対比

13[主題]父と子の30年ぶりの再会を、30年間の中国の歴史的変動とその苦難を乗り越えてきた息子の精神的成長を軸に描く。また、精神的な豊かさに価値を見いだして農場での生活を選択する主人公の姿を最後に示している。

14[言語]普通話、農民の言葉

15[描写]・主人公(許霊均)の内的独白の形式が用いられている。・自然描写(農場の雄大な自然、馬の様子等)が随所に見られる。

16[構成]141段落、五章から成る。(*は回想のシーンを表す)(一)(1)-(4)北京のホテルで父と再会する許霊均。(5)-(16)*30年前、霊均が、別居中の父を呼び戻しに行くが、追い返された日の回想。(17)-(34)霊均は、北京に来る前に妻と交わした会話を思い出しながら、父の生活と自分の生活との違いを感じる。(二)(35)-(53)父やミス宋との夕食。ダンスホールでの会話(54)ー(58)*20年前の回想(反右派闘争後の農村での暮らし)(三)(59)-(64)父と話す中で、霊均は、労働者としての自覚を新たにする。(65)-(80)*放牧員として自然の中で生活するうちに、霊均は、傷ついた心が癒されていく。(81)-(88)*昨年春の名誉回復、教師としての再スタート。(四)(89)-(96)父、ミス宋との会話。(97)ー(130)*霊均の結婚(1972年春)の経緯。結婚後の生き生きとした暮らし。(131)妻子の待つ農場に帰る決心をする霊均。(五)(132)-(136)県城に帰りついた霊均。(137)-(139)*父との別れ。(140)-(141)家族の待つ農場。

17[問題点]三人称描写ではあるが、視点はあくまで許霊均の側に置かれているので、父親の心理描写がなく、一面的になっているのではないか。

18[作者略歴]張賢亮、男、江蘇省[目于][目台]の人。1936年南京に生まれる。55年、中国共産党甘粛省委員会幹部学校教員となる。50年代初期より詩歌の発表を始めるが、57年、誤って右派とされる。61年農場で農業労働者となる。78年末、名誉回復。79年、小説を発表し始める。『4通の手紙』、『刑老人と犬の物語』など。80年6月、中国作家協会に入り、現在、『朔方』雑誌社に勤務。

19[その他]なし

20[報告者]岡田幸子