01[整理番号]XX800104
02[作品名]上李村
03[作者名]王吉呈 張子良
04[原載]上海文学1980.7(4-11)
05[頁]35〜42 (8)
06[ジャンル]短編小説
07[時代]1978-9年頃
08[地点]上李村(黄河流域)
09[手法]リアリズム
10[視角]三人称
11[人物]三老漢(樹木管理班のリーダー。毎年労働模範に評される。何にもまして樹木を愛し、金や家庭は顧みない。数々の表彰状が彼の誇りであり、生きる糧でもある。貧農出身。党に忠誠。65才。)巧燕(息子の嫁、2人の子の母。去年、村の女性の中で1番の労働点数を獲得。新しい労働模範。仕事も家事もうまくこなす。中農出身のため、共青団を退団、入党も出来なかった過去を持つ。夫は県城に離れて住む。時折、母が子供たちの面倒をみる。)支書(大隊支部書記。王書記視察のおりには、案内役をつとめる。三老漢と巧燕の喧嘩の仲裁を試みる。村の誇りの樹木は政治・思想の指導の賜物だとするが、政策が変わり、以前の経験をどう総括するかで迷い、三老漢に前の労働点数制でよいかと聞く等矛盾の中にいる。守正という。)王書記(県委書記。新任の県書記。物腰が軟らかく、冷静沈着の人。ストーリーの中では、裁判官的役割を果たす。53才。)
12[題材]農村・経済政策
13[主題]三老漢と息子の嫁との対立、和解を描くことで、新しい政策による新しい時代の到来を表現。自己犠牲による栄誉という報酬の獲得よりも、合理的な、労働に応じた経済的報酬を得られる新時代を歓迎、擁護。
14[言語]標準語(若干“固い”印象有。)
15[描写]風景(35頁左上)、人物(容貌)描写細かい。伝統小説的。
16[構成]三段落(一、二、三と数字を冠す。)一、上李村は樹木で知られる村。その樹木を管理するのが、三老漢。定額管理制度施行後は頑固者と目される。ある日、新任の王書記が視察に訪れる。物腰軟らかで、三老漢も好感を持つ。そんな折、嫁の巧燕があわててやってきて子供を見ててと押しつけると同時に書記の訪問をむげに断り、また仕事場へといってしまう。二、王書記は巧燕の働く畑へ赴く。そこで、彼女のやり手ぶりを目の当りにする。また支書から巧燕についていろいろ聞く。三老漢がすごい剣幕でやってきた。彼が家に帰ると、嫁は食事の用意もしてないし、あろうことか彼の大事な表彰状を靴型にしてしまっている。支書が彼女の所へいくが、全然取り合ってもらえない。三、三老漢、支書、書記の3人は、巧燕の所へ行く。出されたご飯は、「憶苦飯」。三老漢は怒り、また書記に対しては恥ずかしく思う。書記は、冷静で、彼女の行動は我々に対する批判なのだ、その原因を考えよう、そして、党の方針がよい方向に変わったのだから、それを支持しようと2人を諭す。そこに、巧燕がおいしそうな料理を運んできた。そして、繕った表彰状をみせ、さっきの表彰状はいわれのないものだからと訳を話す。おいしい料理をまえに、書記はこれこそが新世代が教えてくれた真理なのだ、と笑って言った。
17[問題点]
1)過去に対する総括:“旧”を全否定した上での“新”の確立。(新政策の擁護を文学が果たしていること自体、“全否定”とはなりえていない。即ちそれ自体は変わってないのだから。)2)巧燕についての評価:作品中では肯定的に描かれている。“対話”の欠如は“上から下”の政治構造をまさしく具現しているようでもあり、一考の余地有。3)螺旋的発展?再度同じ円周上を歩き始めただけ?
18[作者略歴]王吉呈、男性、41才(1980年現在)、陝西省出身。張子良、男、39才(1980年現在)、陝西省出身。2人は共に西安映画制作所編集員、1966年西北大学卒業、2年来、アマチュアとして短編小説創作に従事。
19[その他]作中人物を相対化すると、新、旧、その他に分類出来る。(政治態度)しかし、現実が真理を教えてくれるという他には“新”に何の斟酌も加えていない。“その他”、作中では“支書”、が一番矛盾を抱えていると思われるが、そこに焦点をあててはどうだろう。“旧”に対しては、愚民政策が今後も続くということ以外は看取出来なかった。
20[報告者]大西紀

参照 王吉呈その他の作品(『小説月報』1981年「報刊小説選目」に拠る)
作品名     掲載雑誌
「黄頭郎」   『泉城』  1981・3
「女御史」   『奔流』  1981・4
「黄河岸上人」 『奔流』  1981・7
「弥留」    『延河』  1981・8
「巧姐」    『上海文学』1981・10
「六老婆」   『飛天』  1981・3
共作 『小説月報』1981年所収70作品中5作品
因に『芙容』1986年1期所収の「鷹鞋」は4人による共作