01整理番号 XY990710
02作品名物理班
03作者名劉嘉俊
04原載『萌芽』1999,5期
05 4(105−108)
06ジャンル短篇小説
07時間1998〜9年(同時期)
08場所ある中学校(日本の高校)
09手法リアリズム
10視角一人称
11人物僕(“我”;理系物理クラスを選択した高校三年生、受験をまじかにひかえている)、僕の母親、瑩(女子高生、僕のクラスメイトでいつも明るい)、学年長、先生たち、(群像としての)クラスメイトたち 
12題材 高校三年、理系物理クラス、受験、テスト、課題(宿題)、成績、恋愛 
13主題 受験前のプレッシャーと恋愛感情の織りなす青春のいぶきを表現。
14言語 標準語。理数系の用語(特に物理用語)や言い回しが多く出てくる(求心力、DHA、万有引力、質量、相対的に、エネルギー保存則、運動エネルギー、関数グラフ、右手の法則、左手の法則等。比率を分数にしたり少数第二位まで述べたり等) 
15描写 物理の用語をもりこむことによって滑稽な印象を与えている。その他にもユーモアにとんだ表現が見られる(ex;比巴金還大的大楼) 
16構成 全62段落。章立てなし。13のブロックに分かれている。 @ 1−10;(1−4)僕は物理クラスを選択した。それ以来、日常の事柄を物理の公式に関連づける習慣がついた。Ex.車がカーブを曲がるときに向心力の公式で頭の中がいっぱいになる、ボールの動きを見て放物線運動に関連づけるなど。始めのうちは成績はよくなかったが高三にもなると学習環境に適応するようになった。(5−10)瑩との出会い。僕は瑩にひかれていく。課題に追われる毎日だが、頑張るうちに成績がまあまあ良くなって、瑩によく質問されるようになった。 A 11−13;僕は単調に繰り返されるテストをするうちに人間味がなくなっていくのを感じた。ほとんどのクラスメイトも、テスト勉強に生気を吸い取られているようだった。そんな中、瑩だけはいつも元気だった。 B 14−17;授業が終わると、クラスメイトの多くは学校に残って課題を教えあっていたが、僕はすぐに帰宅し、家で課題をこなしていた。僕は、瑩も学校に残っていると知ってから、学校に残るようになり、瑩と二人で帰宅するようになった。 C 18−20;中間テストが終わり成績が発表された。成績があまり良くなかった瑩は気落ちし、僕は彼女をなぐさめた。 D 21−28;秋の遠足で、僕と瑩はみんなとはぐれ二人で行動した。僕のカメラで瑩との写真をとり、僕は瑩の写真を手に入れた。 E 29−32;僕は瑩にどうしていつも僕に比べて機嫌がいいのかを尋ねた。瑩は、リラックスするわざを知っているから僕よりも機嫌が良いのは当然だと答えた。僕は彼女に将来何をしたいかと尋ねた。瑩は吟遊詩人になって世界中を旅したいのだと答えた。僕は、ロバート・キャパのようなカメラマンになりたいと思っている。瑩は、僕がとった最後の写真を見たくないと言った。 F 33−35;僕らは物理用語を用いて話すのを楽しんだ。どのクラスもその専門分野特有の言い回しを楽しんでいる。物理クラスでそれが上手いのは瑩である。 G 36−38;幾何解析のテキストが切りの良いところまですすんだ翌日、先生が学校へ行けない児童の援助活動をする旨を伝えた。僕は、もしもあのかわいそうな児童たちが高三がどんなもんか知ったら学校に行かない方がいいと思うだろうと思った。瑩も同意見だった。 H 39−41;僕は、クラスメイトたちのように遊技場へいって遊ぶ勇気がなく、もっぱら家で勉強ばかりしていた。ある時、部屋中が答案用紙でいっぱいなのに気付き、高三では毎日答案の解説ばかりしているんだから、答案用紙のファイルさえ持っていけばいいんだと思い、カバンを持たずに学校へ行き、先生に怒られた。 I 42−45;クリスマスイブの日から、3+1試験(主要三科目+一科目)の準備期間に入り、先生は更に熱心に授業をするようになった。 J 46−49;このような環境の中、僕と瑩はいつも一緒に勉強をした。二人とも成績がのびていたので先生は何も言わなかった。瑩は受験生っぽさがにじみ出るようになっていった。僕はいつも、瑩が問題を解くときに関数グラフを空で書いたり、左手の法則や右手の法則を試したりする美しい身振りを思い出していた。3+1試験が終わった。 K 50−61;冬休み、僕と瑩はスケジュールの合間に一日だけデートをした。僕らはお互いに自分の持ち物をプレゼントしあった。ピザハットで食事をとりながら、来学期からは本格的に受験勉強に励まなくてはならないと話し合った。午後、僕らは『ラブレター』(日本映画)を見た。この日は、僕らにとって物理とは関係ない最後の日になった。 L 62;僕は、僕らが今高校三年生で、物理クラスにいるって事を自覚している。そういう事だ。 
17問題点 然後でつなげる個所が多い。ベテラン作家のように文体がひきしまっているというわけではなく、句点の位置(or有無)が誤読を招く要因になっている。とはいえ、作品全体には影響していない。 注→沙文主義;ナポレオンの兵士ニコラス・ショービン(Nicolas Chauvin)にちなんで極端な愛国、国粋主義をショービニズム(Chauvinizme 仏)という。沙文主義はその訳語。ショービニズムはパトリオティズムよりも更に熱烈な愛国、国粋主義。作中では“初めの頃の班級沙文主義を後悔した”とある。1、2年生の頃に自分のクラスにこだわり過ぎていたという事だろう。ロバート・キャパ;(1913〜54)戦場カメラマンとして有名で報道写真家の神様と呼ばれている。インドシナ戦線で死亡。
18作者略歴 男、上海市市東中学校の高校三年生。
19その他  『萌芽』(上海市作家協会)及び七つの大学が共同主催した作文コンクールでの入賞作品。原刊責任編集者;李其綱。
20報告者 上原かおり