01〔整理番号〕XY980802

02〔作品名〕樹下

03〔作者名〕鉄凝

04〔原載〕『作品』1998年第6期

05〔頁〕5(21―25)

06〔ジャンル〕短編小説

07〔時代〕90年代。今とその2、3年前

08〔地点〕ある地方都市(省政府所在地ではない)

09〔手法〕リアリズム

10〔視角〕三人称限定

11〔人物〕老于(50歳間近の中学国語教師)、小狼(老于の中学時代の同窓。商売で成功)、項珠珠(老于の同窓。老于の住む市の副市長に転任してくる)、老于の妻(農村出身)、老于の娘(高校生)、老于の息子(北京の人民大学の学生)、項珠珠の娘(7、8歳)

12〔題材〕同窓会、ライバル意識、出世頭、教師の生活窮乏、幹部の豊かな生活、コネ、頼み事、住宅事情、自尊心、下放先での結婚、アメリカ小説「熱氷」、映画「アマデウス」、大学受験、二十世紀の重大発明

13〔主題〕出世したかつてのクラスメートに頼み事をするはめになった中学教師の自尊心と卑屈さが交錯する複雑な心情。

14〔言語〕標準語。外来語あり(媽mi、die地、宝馬)

15〔描写〕風刺的でコミカルな筆致。会話部分の行替えなし、一箇所を除きカギカッコなし。

16〔構成〕全15段。章立て無し。1―3:老于は同窓会嫌いだが、2、3年前に一度だけ初級中学時代の同窓会に出席したことがある。幹事の小狼から項珠珠も出席すると聞かされたためだった。4:初級中学の頃、クラス一の秀才だった老于にとって項珠珠だけが一目置く存在だった。国語の授業で項珠珠に刺激され二篇の作文を書いたこと、ドストエフスキーの名前を彼女に教えたことが今でも老于の自慢だった。5―6:同窓会当日。仕事で遅れる項珠珠を出席者一同は辛抱強く待つ。老于は自分の暮らしが他の同窓生より劣っていることに引け目を感じる一方、子供の話題になると学業優秀な二人の子供を自慢できると思う。項珠珠が到着して座が盛り上がる。彼女は皆に名刺入れを配るなど、鷹揚なところを見せる。7―10:その後、老于は二度と同窓会に出席しなかった。しばらくして項珠珠が老于の暮らす市の副市長として転任してくる。暖房のない家に住む老于は、しもやけになった娘に懇願され、暖房付きの家に移れるよう項珠珠に頼みに行くことになる。11:項珠珠の家を訪ねた老于は瀟洒で快適な客間に通され、場違いな自分を感じる。高尚なところを見せようと文学や映画の話を始めたため、肝心の本題を切り出すことができないまま時間が過ぎていく。12―15:項珠珠の家を出た老于は、一本のエンジュの木に向かって口に出せなかった頼み事を訴える。そして自宅に帰り着いたときに、「きっと暮らしは良くなるさ」と自分に言い聞かせるのだった。

17〔問題点〕主人公の描き方はやや戯画化されているが、突き放した視点ではない。エンジュの木に思いのたけを語る場面や、希望を託した終わり方によって主人公に救いを与えており、そこに作者の特徴が感じられる。同窓会をめぐる人情の機微をうまくとらえている。

18〔作者略歴〕鉄凝、女、1957年生まれ。河北省趙県の人。高校卒業後、農村の生産隊に入隊。1975年から作品を発表する。主なものに、短編小説集『夜路』、中短編小説集『没有鈕扣的紅襯衫』、『哦,香雪』、『鉄凝小説集』、長編小説『mei瑰門』、『無雨之城』、散文集『草戒指』等がある。「哦,香雪」は1982年全国優秀短編小説賞、「没有鈕扣的紅襯衫」は1984年全国優秀中編小説賞、「孕婦和牛」は本刊第六回百花賞短編小説賞、「mei瑰門」は河北省第三回文芸振興賞を受賞。現在、中国作家協会副主席、河北省作家協会主席。

19〔その他〕

20〔報告者〕吾妻智子