01[整理番号]XY980801

02[作品名]金色的阿爾泰

03[作者名]紅柯

04[原載]『小説家』1998年第4

05[]16(4〜19)

06[ジャンル]中編小説

07[時代]1950〜60年代

08[地点](アルタイ山脈のふもと)

09[手法]魔術的あるいは超現実主義的リアリズムの模倣

10[視角]基本的に三人称、但し語り手としての私が出てくる。

11[人物] 営長(建設兵団の士官、新の開拓者)、女子学生、張仲翰(兵団の政治委員)、運転手、王震、参謀、将軍、匪賊、営長の妻、役所の職員、マルクナン(アメリカの外交官)、モンゴル族の老婆、チンギス・ハン、父(伝説上の人物)、ロシア人、イェルマーク(匪賊)、ストログノフ家、カザフ兵、文化教員、隊員とその妻や子供たち

12[題材]アルタイ山脈、草原、砂漠、荒原、開拓、オアシス、雪、厳冬、樹林、金、鉄、瞳、宝石、神物、馬、紅魚、嫁探し、チンギスハン、たき火(炎)、伝説、英雄、戦争、辺境の治安、母、妊娠、詩、星、麦、一体化(融合)。

13[主題] の大自然を舞台に一人の開拓者の一生をチンギスハンの伝説にからめて謳いあげる。

14[言語]標準語。

15[構成]全341段、14章。1章:営長は、故郷へもどり嫁探しをした。ある女子学生をアルタイに連れ戻った(1〜2)。2章:営長は何人かの専門家と共に1958年の秋、土壌調査をするためにアルタイのふもとを訪れた。彼はこれまで多くの戦争を体験し、あちらこちらで大きな山を見てきたが大草原の中に静かに横たわる壮大で厳かなアルタイ山脈には魅入られてしまった(3〜14)。営長は山や草原を好み、匪賊がいると注意されても平気で山で一日をつぶした。数日後、他の仲間はウルムチへ帰ったが営長だけはアルタイに残った(15〜26)。役所の職員は営長に馬をプレゼントした。彼は馬に乗って遠出し匪賊に出くわしてしまった。彼は匪賊を一人撃ち殺したが、匪賊の仲間に銃で撃たれ出血がひどく、命からがらモンゴル族の老婆の住まいへ逃げ込んだ。老婆は白樺の木の皮で営長の傷口を塞いだ(27〜47)。3章:(チンギスハンの伝説)チンギスハンがまだ若かった頃、泰亦赤兀タ人(訳語不明)との戦いに敗れ九死に一生を得た事があった。チンギスハンはこの時、馬と紅魚を神物として尊んだ。この日より、草原の民は英雄の時代を迎えた(48〜74)。4章:営長は、老婆の乳によって元気を回復し、白樺の木の皮は傷口を完全に塞いだ。半分が樹の命となった彼はこの時、荒漠とした大草原のオアシスになろうと決心した(75〜84)。上級から嫁探しの命令が下された。営長はウルムチへ戻り嫁を探したが気に入る女性はなく、出身地の西へ戻って心にかなった女性をみつけた(85〜99)。5章:冬、大雪の日に、兵団の男たちは、嫁や家族を連れ立って雪深い砂漠(アルタイ山脈のふもと)に到着した。男たちは冗談を言い合ったが、女たちは憂鬱になった。しかし、空の彼方から太陽が現れると、女たちは夫の力強い姿に感動し、涙は瞳の中で宝石のように輝いた(100〜112)。6章:(チンギスハンの伝説)1204年秋、アルタイの草原を訪れたチンギスハンはアルタイ山脈の美しさに感動して山に登ることを禁止し、また、騎馬隊を視察する内に、騎手や馬が心から自分を仰いでいる事を感じ取って感動し、涙がこぼれおちそうになった。彼は自分の部下(軍人)が涙を流すことを禁止していたので、自分の涙を瞳の中におしとどめた。その涙はアルタイ山脈の頂上でキャッツアイという美しい宝石になった。チンギスハンの視線はワシをも制し、ワシは彼の肩にとまった。偉大なチンギスハンの瞳が美しかった事をモンゴル人なら誰もが知っている(113〜122)。7章:夜、営長たちは雪原でたき火を取り囲んだ。炎の中から紅魚(イトヲ)が現れた。野獣が彼らに近づいてきたが、彼らは獣を撃たず、獣の目からは狂暴な光が消えた。皆はよりそって、一つの塊となり、火と融合して、一人一人の目だけが星のように輝いた(123〜143)。8章:モンゴル人の伝説では、彼らの祖先は始め、2組の男女であったと言われている。すべての仲間を敵に殺された4人は、高く険しい山に逃げ込んだ。彼らの子孫は70頭の牛馬を殺してその皮で70のふいごを造り、火をもやし、その火が山を溶かして山は鉄の山になり、岩石が溶けて紅色の河になった。モンゴルで一番初めの王であるハイドゥは、その河から紅魚をつかみとった。彼は魚(鉄)を分けて武器やあぶみをつくり、女には火の龍を旗に縫い取らせた。このようにしてモンゴル人は馬を駆り、龍旗を翻し、鉄の武器をもって山を出た(144〜147)。9章:夜が明けると皆は営長にしたがって穴を掘り始めた。7日目に穴を掘り終わり、住まいを完成させた。女たちは営長の妻を中心にして話に花がさいた(148〜174)。この日一週間ぶりに熱いご飯を食べた。紅魚がかまどの中にはいり込んだ(175〜190)。八日目は暴風雪の日だった(191〜204)。10章:チンギスハンの一生(205〜245)。11章:営長は、麦の苗が自分の脳を貫くという夢を見た(246〜254)。春、営長らは麦畑をつくった。営長は河で泳ぎ、全身の渇きを潤した(255〜303)。12章:イェルマークの溺死(304〜319)。13章:未開の血をオアシスにしてゆくことに生きがいを感じていた営長だったが、紛争に巻き込まれ、営長も彼の妻もコサック兵に殺される(320〜333)。14章:営長の訴えが白樺の木の葉がすれあう音となって囁かれる(334〜341)。

17[問題点]全体的に結局どういう話なのか分かりにくい。

18[作者略歴]紅柯。本名、楊宏科。西山の人、1962年生まれ。西鶏宝師範大学中国文学コースを卒業。1986年、新に下放しクイトンに十年駐屯。中・短編小説および詩歌論文などを若干発表している。著書に小説集『美麗奴羊』がある。本刊ではこれまでに短編小説「奔馬」、「美麗奴羊」等が掲載された。現在は宝鶏文理学院で教えており、西省作家協会会員である。

19[その他]タイトルの前頁に馬2頭、女性1人、男性2人の挿し絵あり。

20[報告者]上原かおり