01[整理番号]xx000801

02[作品名]俗世奇人

03[作者名]冯骥才

04[原載]『収穫』2000年第3

05[]4-12(9)

06[ジャンル]超短編小説

07[時間]清末民初

08[地点]天津

09[手法]筆記小説的リアリズム、独白

10[視角]三人称、全編語り

11[人物]賀道台(あだ名は死鳥、上司との付き合いと、鳥の世話が得意)、林さん、賀道台の妻、天津の府知事、直隷総督裕禄、賀道台の家の使用人、楊家の長女(おとなしい)、楊家の次女(活発で、流行に敏感)、警官他大直の人々、青雲楼主(才能が認められない文人)、陳八、初老のアメリカ人男性、朱さん、大回(常人離れした腕前を持つ、釣りの名手)、車夫、斐文錦(東の町の文人)、劉道元(裁判を利用して金を稼ぐヤクザ)、金三(劉道元の弟子。頭がよい)、馬四(劉道元の弟子。のろま)、賀店主(輸入品店の店主)、大男(たかりに来たチンピラ)、喬ニ龍(湯売り)、狗子(喬の子)、騰黒子(チンピラ)、一枝花(劉道元の最も親しいはずの友人)

12[題材]天津、清末から民国初期という時代背景、あだ名、奇人、天才、九官鳥、天府茶園、風俗(登閣、放生、葬儀)、噂話、弁髪、オールバック、中国芸術、釣り、ヤクザの親分、大衆の生活や言葉、西洋文化の流入、トイレ

13[主題]天津の個性的な人たちの悲喜劇。

14[言語]方言

15[描写]俗っぽい言葉が多く見られる(罵り言葉など)

16[構成]全五話のショートストーリー(89段落)

死鳥 (1)天津の人間のあだ名と、その由来となる話について。(2-6)賀道台。彼の得意とするところは、上司との付き合いと、鳥の世話。それらの方法。(6-14)林さんから預かった九官鳥に言葉を教えようとする賀道台。しかし九官鳥は教えた言葉よりも、勝手に覚えた変な言葉をよくしゃべった。それがかえって、客を喜ばせる。(15-27)9月9日。恒例の玉皇閣登りの時、賀道台は総督を家に招く。しゃべる九官鳥を見て、最初は機嫌が良かった裕禄であったが、九官鳥の「裕禄の馬鹿やろう」という言葉に激怒する。愕然とする賀道台。(28-30)上司が帰った後、怒った賀道台は、九官鳥を殺してやろうとする。しかし九官鳥は、賀道台が九官鳥を罵って言った言葉「死鳥」という言葉を連呼しながら逃げていった。(31)それから「死鳥」というのが賀道台のあだ名となった。

背頭楊 (1-3)男がみな辮髪を切り、オールバックにする髪型が流行した時代、流行に敏感な楊家の次女は、革命という言葉を聞くと直ぐに自分もその髪型にした。(4-6)ある日、楊が道端のトイレに行くと痴漢と間違えられ、ひどい目にあう。(7-9)その後、楊の名を語って悪さをする者が現れたので、女子トイレに入る人がいなくなってしまう。結局楊は、2ヶ月かかって普通の髪型に戻し、女子トイレ騒ぎも収まった。

青雲楼主 (1-5)才能が認められないことに苦悩する文人。彼は自分の店を青雲楼と名づけ、自分を青雲楼主と名乗っていた。(6-8)ある日、陳八が彼のもとに一人のアメリカ人を連れてくる。アメリカ人は青雲楼主の作品を気に入る。狂喜する青雲楼主。(7-8)青雲楼主のたくらみ。アメリカ人を利用して、自分の才能を世間に認めさせようとする。しかしそれは徒労に終わる。

大回 (1-8)釣りの名手である、大回と呼ばれる男。その神業。(9-12)天津の慣習である放生について。街の人に頼られた大回は、同じ鯉を三度捕らえることに成功する。(13-14)人々は彼を「魚絶後」と呼び、彼の釣りの才能を誉め称えた。(15-17)大回は酔って道で寝ているところを、馬車に轢かれて死んでしまう。その時彼が手にしていた魚篭に入っていた魚は無事で、しかも彼を轢いた馬車の積荷は魚であったため、人々は魚を捕りすぎた彼に対する、天の報いではないかと噂しあった。

劉道元活出殯 (1-5)天津の「文の与太者」劉道元について。彼の手口と義侠心、ひねくれた性格。(6-8)突然自分が死んだらどうなるかを知りたくなった劉は、弟子に命じて自分の葬式を出させる。(9-17)劉の死を聞いて、彼の家に続々と人が押し寄せるが、それらはろくでもない連中ばかりであった。劉は激怒すると同時に、親しい人間か来ないことに困惑する。(18-24)出棺の日。最も親しかったはずの友人の本性を見た劉。棺桶殻出ると、悟ったかのように霊柩車の上で大笑いする。

17[問題点]辛亥革命の三年後の意味。小説月報との違い。

18[作者略歴]1942年生れ。浙江省慈渓の人。天津に生れ、天津に育つ。主な作品に、長編小説『神灯』、短編小説『雕花烟头』、中編小説『』、『神鞭』などがある。これまでに3回の全国優秀小説賞を受賞している。現在は天津文聯主席、中国文聯の副主席である。

19[その他]p.6挿絵(梵高 油絵1888-1889)、小説月報よりも話が少ない(刷子李、藍眼、蔡ニ少爺、泥人張)

20[報告者]出縄一政