大阪大学・堀江新二研究室のホームページです。演劇や翻訳、ゼミなどの紹介をしています。

 

ロシア文学講義(3・4年生・院生)

 

 

 

翻訳やってみませんか?

この授業は、ロシア語テキストの単なる「講読」=「訳」ではありません。

「翻訳」とは、そのテキストや言葉の本来の意味とその文化的背景を

その文体を変えずに

誰にでもわかる正常な日本語に「置き換える」作業です。

 

以下、二葉亭四迷の「余が飜譯の標準」より

 

       「飜譯しようとするからには、必ずやその文調をも移さねばならぬと、これが自分が飜譯するについて、先ず形の上の標準とした一つであった」

 

     「ツルゲーネフはツルゲーネフ、ゴルキーはゴルキーと、各別にその詩想を會得して、厳しく云へば、行住座臥、心身を原作者お儘にして、忠實の其の詩想を移す位でなければならぬ。是れ實に飜譯における根本的必要條件である」

 

今はエルドマンの「自殺者」を翻訳論として読んでいます。

 

受講者による佐賀弁、広島弁、関西弁などの訳を、教師が楽しんでおります。

時々、電車の中で、採点のため、学生諸君の翻訳読んでいて

吹き出しそうになって、困ることがあります。いや、傑作ぞろいです。 

 

訳の例    Вот отдайте револьвер , тогда уйду.

 

(山形弁) そのピストル、こっちさわだせ。したら出ていっから。

(岩手弁風)んでば、そのピストルっこをよごさいん。そすたら出でぐっが。

(津軽弁) その鉄砲ば、わだしてくれへー。んだば、出てくはんでや。

(愛知・三河弁)鉄砲渡しんや、ほしたら出てくで。

(京都弁)ほんなら、そのピストル渡しぃや。したら、出てくし。

(関西・尼崎版) さあ、ピストル渡しなはれ。ほいだら、出て行きますがな。

(広島弁) リボルバーを渡しんさい、そしたら出て行くけん。

(佐賀弁) ほら、ピストル渡しんしゃい。そしたら、おいはどこか行くけんさ。
(長崎弁) ほら、そんピストルばこっちやらんね、そしたら出て行っけんさ。
(関東・江戸版) ほら、その鉄砲を渡せってんだよ。そしたら、出て行ってやらあな。

 

必読文献
  • 拙訳 ゴーゴリ「結婚」 同じくチェーホフ『かもめ』(群像社)
  • 柳瀬 尚紀著「翻訳はいかにすべきか」(岩波新書)

 

 

 

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